少年達対プラントキメラ
一年以上も続きが投稿できず申し訳ありません。こちらは、今後も更新が遅いと思いますのでご容赦ください。
今回は二章のボス戦です。前回の敵より防御力は低いですが、それ以外は高めです。
親キメラは、ザックスに飛び掛かる。親キメラの鋭い爪が、ザックスに迫る。ザックスは、それを剣で受け流す。
(・・・直接受けたら駄目だ・・・!勢いを逆に利用して、攻撃を流す・・・!)
ザックスが攻撃を防いだ隙を突いて、リクが槍で親キメラを攻撃する。リクの槍が、親キメラの身体に突き刺さる。
「ぎゃああああああああ!」
親キメラは、身体を激しく震わせると、槍は抜けてしまう。思ったほど深くは突き刺せていなかったのだ。
「思った以上に頑丈だな・・・!ただ身体を突いても効果が薄い・・・!」
「じゃあ、生き物の弱点の定番!」
「目だね!」
ティックは、親キメラの目に向けて矢を放つ。しかし、親キメラは軽々とその矢を腕で弾いてしまう。
「・・・あんなにデカいのに、どうしてこんなに素早く動けるんだろう・・・?」
「先代文明の生き物なんだ。俺達の常識が通じる相手じゃない・・・。」
「!来るぞ!」
親キメラは、今度はリクへと襲い掛かる。リクは、槍でガードするのではなく、回避を選択する。攻撃がかわされ、無防備になった親キメラの身体を、今度はザックスが剣で切り付ける。狙いは、リクが先ほど突いた場所である。
「ぎゃああああああああ!?」
さすがに一度攻撃を受けた場所だったこともあり、親キメラは先ほどとは打って変わって苦しそうに叫ぶ。
「よし!効いている!」
「追い撃ちだよ!」
ザックスの付けた傷口に、ティックは矢を射る。今度は見事に命中し、深々と矢が突き刺さる。
「ぎゃああああああああ!?」
親キメラは、予想以上にダメージを受けた様子でたじろぐ。
「よし!追撃・・・!」
「きしゃああああ!」
だが、親キメラは尻尾をザックス達の方に向けると、卵を撃ち出す。卵はまるで、銃弾のようにザックス達に向けて飛んでいく。しかも、一個だけではなかった。
「!卵を飛ばしてくるなんて・・・!」
「しかもあれ、十個以上はあるぞ!?一度に一個じゃないのか!?」
「ザックス!あんな速さのものが当たれば死ぬぞ!かわすなり切り捨てるなりしろ!」
リクは、卵の弾丸を避けながら、ザックスに指示する。
「くっ!」
ザックスは、いくつかの卵は切り捨て、いくつかはかわして攻撃を避けていく。だが、親キメラは、途切れることなく卵を発射する。ザックス達は、親キメラに攻撃することができなくなっていた。
「どれだけ卵があるんだ!」
「いくら常識では測れないって言っても、限度があるぞ!」
あまりの数に、ザックスとリクは思わず悪態を吐く。だが、事態は悪い方に傾きつつあった。
「!ザックス!リクさん!卵が!」
なんと、切り捨てていなかった卵が孵化し、中から子キメラが出てきたのだ。
「まずい!」
「ザックス!ティックと子キメラを潰せ!」
「リクさんは!?」
「あのキメラの相手をする!奴の卵が全部なくなるのが先か、俺の体力がなくなるのが先か、根競べだ!」
「一人は危険です!俺も・・・!」
「ティック一人で子キメラの相手は無理だ!それに、剣より槍の方が飛んでくる卵を潰しやすい!」
「・・・分かりました。・・・気を付けて!」
ザックスは、リクの指示に従い、ティックと共に生まれたばかりの子キメラの相手をする。リクは、親キメラの飛ばす卵を槍で叩き落とし、持久戦の構えを取るのだった。
「どうしたんですか、メイスンさん!?」
慌てて動力室に戻ってきたメイスンと調査員を見て、残って調査していた調査員達は困惑する。
「た・・・大変です!・・・この遺跡の地下に・・・生きたキメラがいました・・・!」
「何ですって!?」
「そんな馬鹿な!この遺跡は千年前のものなんですよ!?生きているわけ・・・!」
メイスンの言葉を信じられない調査員達。だが、逃げてきた調査員は、自分達の話は真実だと告げる。
「現に生きていたんだ!しかも、襲い掛かってきた!かなり凶暴だぞ!」
「しかも、幼体を生むこともできるみたいだ!放置すればとんでもないことになるぞ!」
「・・・そんな状況で、よく逃げられましたね。」
「・・・ザックス君達のおかげです。彼らが戦ってくれなければ、私達も・・・。」
「!ザックスが!?」
「!!!」
ザックスがキメラと戦っていると聞いたリリーとセシリアは、ザックスの許に行こうとする。それを、メイスンは制する。
「いけません!あのキメラは、私達の想像を遥かに超えています!行ってもやられるだけです!」
「でも・・・!」
「あのキメラは、今までずっと休眠状態でした!突然活動を再開したのには理由があるはずです!それが分かれば・・・!」
「・・・キメラを・・・倒せる・・・?」
「はい!ですから、もう少し時間をください!必ず奴の弱点を見つけます!」
「・・・分かりました・・・。」
「・・・。」
メイスンに説得され、二人は渋々行くのを断念する。それを見たメイスンは、安堵の表情を浮かべると、調査員達の方を向く。
「さて、では早急に、あのキメラの弱点を見つけ出さなければならないわけですが・・・何か意見はありますか?」
「メイスンさん。そもそも、俺達はそのキメラを知りませんよ。それじゃあ意見の出しようが・・・。」
「あ!・・・すみません・・・気が動転していましたね。」
メイスンは、恥ずかしそうに頭をかくと、自身が見たキメラの特徴を彼らに話した。
話を聞いた調査員達は、半信半疑の様子だったが、同行した二人も同じようなことを言ったことで、メイスンの言葉が真実だと確信する。
「自身の子を生み出して戦わせられるなんて・・・長期戦になれば危険じゃないですか!」
「しかも、スピードもパワーも凄まじいのなら、子供達には厳しすぎます!いくらリクさんがいても・・・!」
「だから、すぐに奴の弱点を割り出さないといけません。何か、いい意見はありますか?」
「・・・そもそも、どうして奴は目覚めたんですか?まさか、千年経ったらピンポイントで冬眠から覚める生態だったとかですか?」
「いくらなんでもそれはないだろう。メイスンさん達の足音や臭いで目覚めたと考えるのが自然だろ。」
「・・・ですが・・・あれは臭いや足音で目覚めたとは少し違っていた気がします。」
「じゃあ、どうして・・・?」
全く理由が分からない一向。その時、セシリアがブツブツと呟く。
「・・・暗いから・・・寝てた・・・?」
「?セシリア、どういうこと?」
「・・・寝る時・・・暗くする・・・明るいと・・・眩しくて・・・寝られない・・・。」
「そんなの当たり前でしょう。何言ってるのよ?」
「!まさか・・・!」
セシリアの話を聞いたメイスンは、この施設の状況を思い返す。この施設は、電源が完全に止まっていた。経年劣化や破損ではなく、動力炉が止まったことで。その動力炉も、壊れてはいなかった。つまり、誰かが止めたということだ。何故、止める必要があったのか。メイスンは、一つの仮説に辿り着く。
「・・・この遺跡の電源が落ちていた理由は・・・。そうか!なら、説明が付きます!」
「どういうことです、メイスンさん?」
「・・・一旦、遺跡の電力を止めます。」
「そんなことをしたら、彼らは何も見えなくなってやられてしまいます!」
「私の予想が正しければ、彼らを助けることができます!すみませんが、ライトの準備を!」
「・・・分かりました。」
調査員は、ライトを点灯する。
「・・・頼みましたよ。」
メイスンは、祈るように動力炉を止める。室内が、一瞬にして暗闇に包まれ、ライトの辺りだけが光源となった。
「!?何だ!?」
突然、部屋が暗くなり、ザックス達は手が止まる。
「どうして・・・突然灯りが・・・!?」
「これじゃあ見えないよ!」
「持っていたライトを点けろ!」
ザックス達は、念のためにもらっていたライトを点ける。
「・・・何とかこれで周囲が見渡せるね。」
「・・・でも、どうしてキメラは攻撃してこないんだ?絶好のチャンスだったはずだ。」
「確かにな。・・・!おい、二人共!あれを見ろ!」
「え?」
リクが灯りを照らした先の光景に、二人は驚愕する。なんと、親キメラは、その場に蹲っていたのだ。卵から生まれた子キメラも同様に、大人しくなっていた。
「・・・どうなってるんだ・・・?どうして急に・・・?」
「ザックス!今だ!こいつらを片付ける!」
「!は・・・はい!」
リクに言われ、ザックスは残りの子キメラを切り倒す。そして、リクの方も、親キメラに止めを刺すべく、眉間に槍を突き刺す。
「ぎゃああああああああ!?」
リクの槍は、親キメラの頭部を貫通した。親キメラは、断末魔の叫びを上げ、その場に崩れ落ちた。
「・・・やった・・・。」
「・・・はあ・・・一時はどうなることかと・・・。」
「・・・リクさん。でも、どうして急に、こいつら大人しくなったんでしょう・・・?」
「・・・分からない。そもそも、どうして急に、灯りが消えたのか・・・。」
「・・・まさか、動力室で何かあったんじゃ・・・!」
「じゃあ、早く戻ろう!リリーやセシリアもいるんだし!」
「ああ!」
ザックス達は、動力室に戻るべく、部屋を後にするのだった。




