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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
第二章 先代文明の遺産
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目覚めた悲劇の元凶

 「・・・居住エリア以上にボロボロですね。」

 飼育エリアに到着したメイスン達は、居住エリア以上の惨状に絶句した。

 キメラを飼育していたであろう個室は、単にボロボロになっていただけではなかった。ひしゃげたり壊れたりした鉄格子が床に倒れ、キメラのものであろう血が、床や壁どころか、天井にまで付着し、凄惨なことがあったであろうことを如実に表していた。そして、床にはキメラのものであろう白骨が散乱していた。

 「・・・ここが、この遺跡の悲劇が起きた原因の場所なのでしょうか?」

 「おそらくは・・・。」

 「こんな丈夫そうな鉄格子がこんなに・・・どんな力で壊されたんだ?」

 「・・・何か、キメラの死骸以外にないでしょうか・・・?」

 「でも、こんな状況では、人間の死体があっても判別は難しいですね。」

 「・・・?メイスンさん。この先にまだ部屋があるようですよ。」

 「飼育エリアの奥・・・ああ、キメラの研究用区画ですね。飼育エリアと併設されていた場所です。」

 「・・・そこが、この遺跡の最奥ですね。ここに行けば、何か分かるかもですね。」

 「・・・行きましょう。」


 「これは・・・!」

 キメラの研究区画に足を踏み入れたメイスン達の前に、巨大な生物が姿を現した。その生物は、一応は人型のようではあるが、腕と足はあまりに細長く、体長より長く見えた。それとは対照的に、鋭く大きな爪が手足から生え、あまりにアンバランスに見えた。背中には、蝙蝠のような羽が生え、まるで悪魔か何かと思うような怪物然とした姿をしていた。

 「・・・何だこれは・・・!?」

 「・・・キメラですね。しかも、生きているようです。」

 「ええ!?生きているの!?」

 ティックは驚愕する。この遺跡は、千年前の遺跡で、しかもあるのは骨とロボットの残骸だけなのだ。生物が生きているなど、常識的に考えてあり得ないのだ。

 「・・・ええ、信じがたいことですが、どうやら冬眠状態になっているようです。そうやって、長い年月を生き抜いてきたのかと・・・。」

 「・・・ですが、メイスンさん。いくら冬眠したとしても、千年は無理のはずです。他に何か、原因があるのではないですか?」

 「ええ。私もそう思います。何か、外的な要因があって、このキメラは生き続けているようですね。」

 メイスンは、興味津々にキメラを観察する。一方、他の面々は、いつキメラが目を覚ますか気が気でなく、内心恐怖していた。

 「・・・メイスンさん。このキメラ、どうします?サンプルにするにしては、あまりに巨大ですし、危険です。」

 「・・・そうですね。ですが、このまま放置、というわけにはいかないでしょう。これが目覚めて外に出れば、どれほどの脅威となるか・・・。」

 「・・・やはり、ここで処分した方がいいでしょう。こいつがこの惨劇の原因なら、早急に始末しなければ・・・!」

 「・・・。」

 メイスンが判断を下そうとしたその時、一瞬、キメラの身体が動いたように見えた。

 「!ザックス!今、あのキメラ、動かなかった?」

 「え?」

 ティックに言われ、ザックスはキメラを見る。ザックスには、特に変わった様子は見受けられなかった。

 「・・・気のせいじゃないのか?」

 「そんなこと・・・!」

 その時、今度はキメラの身体が明らかに動いているのが分かるほど動いた。

 「!やっぱり動いた!」

 「まさか・・・本当に!?」

 「・・・どうして急に・・・!?」

 キメラは、今まで瞑っていた瞼をゆっくりと開ける。その瞳は、血のように真っ赤で、まるで血そのものが瞳となったようである。

 「ぎゃああああああああ!」

 キメラは起き上がると、耳をつんざくほどの咆哮を上げた。

 「お・・・起きた・・・!起きてしまった・・・!」

 「た・・・退避を!」

 「ぎゃああああああああ!」

 キメラは、逃げようとするメイスン達に向かって突っ込んでくる。巨体とは思えぬほどの速さに、後ろにいたメイスンは反応できなかった。

 「!?」

 キメラはメイスンに、鋭い爪の生えた腕を振り下ろす。

 「メイスンさん!」

 咄嗟にリクが、自身の持つ槍で攻撃を受け止める。キメラの攻撃は、メイスンに当たることなく弾かれた。

 (くっ!なんて威力だ・・・!手が痺れる・・・!)

 「ぎゃああああああああ!」

 キメラは、自分の攻撃を止めたリクに怒ったのか、攻撃を繰り出す。リクは槍で捌くが、キメラの凄まじいパワーに、劣勢を強いられる。

 「早く逃げろ!俺が時間を稼いでいる間に!」

 「でも、リクさんが!」

 「いいから早く!・・・!?」

 その時、リクの目にとんでもない光景が入ってきた。なんと、キメラには尻尾のようなものが生えており、その先端から卵のようなものが出てきたのだ。

 「・・・何だあれは・・・!?」

 すると、卵のようなものはひび割れ、中からキメラを小型化したような生き物が出てきたのだ。

 「!」

 「キメラの子供!?」

 「まさか・・・このキメラ、メスか!?」

 生まれたばかりの子キメラは、親キメラが戦っているリクに向かって襲い掛かろうとする。

 (!まずい!)

 しかし、その子キメラは、突然横から射られた矢で頭を射抜かれ、その場に崩れ落ちた。

 「!?」

 「リクさん!僕も手伝うよ!」

 「馬鹿!逃げろって・・・!」

 ティックに気を取られたリクに、親キメラの容赦ない攻撃が迫る。

 「!」

 「リクさん!」

 その攻撃を、寸でのところでザックスが剣で弾く。

 「いってー・・・。こいつ、凄い力だ!」

 「・・・悪い。油断した。」

 「リクさん。俺達が逃げても、こんなキメラを生む奴を残して置いたら、結局はみんなやられてしまいます!だったら、こいつを倒す方が安全です!」

 「・・・だが・・・。」

 「メイスンさん!メイスンさん達は一旦戻って、こいつを倒す方法を考えてください!昔の人は、こいつを無力化できたんですよね!だったら・・・!」

 「・・・その方法が分かれば、奴を倒せる!分かりました!なるべく早く見つけます!その間、耐えてください!」

 メイスンと調査員二人は、研究区画を出ていく。

 「・・・悪いな、二人共・・・俺が不甲斐ないばかりに・・・。」

 「そんなことないよ。リクさん、村では強い人だもん。それで駄目なら、どうしようもないよ。」

 「・・・さあ、いくぞ!」

 三人は、巨大な親キメラと対峙する。対する親キメラは、完全に三人を敵として捉え、殺意の籠った咆哮を上げた。

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