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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
第二章 先代文明の遺産
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遺跡の真実6

 「メイスンさん、ここに端末が!」

 「ここにもあります!」

 「メイスンさん、俺も見つけました!」

 「うう・・・見つけたけど・・・怖い・・・。」

 居住エリアから、次々に端末が見つかり、メイスンはそれに目を通していく。端末内のデータの内容は、日記だったり、装置の操作説明だったりと色々だったが、メイスンの望んでいたものは、中々見つからなかった。

 そうやってデータを見続けること十二機目、メイスンは遂に、望んでいたデータを見つけることができた。

 「・・・!見つけました。助手カーツの日記を!」

 「本当ですか?何が書いてあるんです?」

 「・・・最初の部分は、上司の日記と似たようなことが載っていますね。・・・ですが、少々彼の日記は、愚痴が多いようですね。」

 【○月○△日 見回りをしていると、仕事をサボっている連中を見つけた。その中には、装置のメンテをしている奴もいた。仕事がないからここにいたって・・・ないわけないだろう!寧ろ、仕事は山積みだ!所長だって、膨大なデータとにらめっこしているというのに・・・!】

 【○月○□日 試験は順調で、所長は大分喜んでいるようだが、私は憂鬱だ!あのサボり魔共、何度言っても聞き入れない!しかも、色々ふざけている!危険なものを扱っているのに危機感が足りなさすぎる!私が所長なら、真っ先にクビにしてやるのに!】

 所長と思われる人物の日記とは対照的に、カーツの日記は、勤務態度の悪い職員に対する愚痴が載っていた。次第にその愚痴は、職員だけでなく、研究にしか目が行かない所長にまで向けられるようになっていた。

 【○月○☆日 所長は研究の進捗ばかり気にして、職員の勤務態度になんら関心を示さない!私はお前の奴隷ではないんだぞ!いい加減ウンザリだ!統括主任に報告して、あんな所長、クビにしてやる。】

 「・・・どうやら、助手は職員の管理を所長に丸投げされて、ストレスが溜まっていたようですね。」

 「そんな悪そうな人間には見えなかったんですけどね、所長。」

 「・・・被曝者が出た日当たりからはどうなってくるのでしょう?」

 「そこまで飛ばしますね。・・・ああ、これです。」

 【×月○×日 体調不良を訴える職員が出た。あいつらとは違い、いつも真面目に働いている彼らだ。そんな彼らに何かあれば大変だ。この試験場が、怠け者だらけになってしまう。大至急、精密検査を行うことにする。こと所長は、こういう時だけ所長ヅラする。現金な奴だ。】

 【×月○△日 彼らが被曝していた・・・最悪だ!ひょっとしたら、私達も!?急いで私達も検査を受けないと・・・!】

 【×月○□日 どうやら、私達は被曝していないようだ。安堵と同時に、怒りが込み上げてくる。シールドの発生装置のメンテナンスだが、担当している職員に、奴らの一部がいる。あいつら、まさか、メンテナンスをサボっていたのか!?】

 【×月○▽日 あいつらを問い詰めたが、知らぬ存ぜぬでしらばっくれた。くそ!証拠があれば、あんな奴らすぐにクビにしてやれるってのに!】

 【×月○☆日 所長がしばらく試験場を離れるそうだ。その間の責任者を私に一任するとのことだ。この際、あいつらのことを所長に言ってやったが、所長は戻って来るまでに改善が見られなければクビにするとしか言わなかった。役立たずめ!まあいい。責任者になったのなら、いくらでも理由を付けてクビにできる。楽しみだ。だが、ただ追い出すのも芸がないな。今まで私を舐めた分、きっちり仕返ししてやる。】

 「・・・これは・・・。」

 想像以上にまずいことになってきたと、メイスンは感じていた。さっきまでメイスンは、この施設が崩壊した原因は、怠惰な職員が、誤ってキメラを暴走させてしまったのではと考えていたが、ここきて、また別の容疑者が浮上したのだ。助手が、今まで募らせてきた不満を爆発させて、仕返しのためにキメラを解き放った可能性が出てきたのだ。もしそうだとしたら、ある意味、事故以上に最悪な事態である。

 (・・・いいえ、まだそうと決まったわけではありませんね。)

 「・・・まだ続きが載っていますね。続けましょう。」

 【☆月○○日 私の元に、他の試験場の人間を名乗る男がやって来た。彼は、私の話をよく聞いてくれた。そして、あの忌々しい連中と所長に仕返しができるいい方法があると言ってきた。なんでも、彼の試験場で作られたシールド発生装置には、未だ未完成の部分が多いのだとか。それを、ここの研究成果を使って完成させたいのだとか。そして、その成果を私と自分の合同成果にすれば、所長から手柄を奪い取れると言っていた。これは願ってもない話だ。あの無能所長が悔しがる顔が、目に浮かぶようだ。さて、それをどうやってあのサボり魔共の仕返しに使うのか・・・。ふふふ、何だか楽しくなってきた。】

 「・・・また新しい人間が出てきましたね。しかし、これは・・・。」

 「明らかに、この試験場の研究成果を盗みに来たスパイですよ。素人でも分かります。」

 「こんな簡単な嘘にも気付けないなんて・・・。この助手、すっかりおかしくなっていますね。・・・よっぽどストレスが溜まっていたんでしょうね。」

 「・・・!次が最後です。」

 【日付無し 畜生・・・騙しやがって・・・!最初からデータだけが目的だったのか・・・!あのサボり魔共も・・・最初から・・・!くそ!くそ!くそ!】

 助手の日記は、ここで終わっていた。日記の内容に、重苦しい空気が一同を包む。

 「・・・どうやら、サボっていた職員は、スパイとグルだったようですね。」

 「・・・そうなると、キメラを解き放ったのはスパイ達だったのでしょうか?」

 「・・・まだ断定はできません。騙されたと知って、正気を失った助手の暴走とも取れますし・・・。」

 「・・・真相は、飼育エリアですかね?」

 「・・・おそらくは。もう、ここで見つけられるものはないでしょう。飼育エリアに向かいましょう。」

 メイスンは、重くなった空気を払拭するかのように告げると、飼育エリアへ向かって行く。それに付き従うような形で、他の隊員達、そして、ザックス達も付いて行くのだった。

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