遺跡の真実4
突然強い光が射し、思わず二人は目を瞑る。
「う!・・・メイスンさん・・・これは・・・。」
「・・・どうやら成功の様です・・・まだ、動力炉は活きていたようですね・・・。」
二人は、しばらくは目が眩み、周囲の確認ができなかったが、次第に慣れてきたことで、部屋の確認を行うことにした。
部屋は、動力炉とその周囲に装置が置かれているだけで、それ以外には何もない部屋だった。
「・・・すごい・・・こんな昔のものが、今でも動くなんて・・・。」
「動力炉自体は壊れていませんでしたから。・・・燃料が残っているかが一番の不安でしたが、この様子だと、大丈夫そうですね。」
「・・・燃料って、薪ですか?それとも、石炭や石油?」
「・・・分かりませんが、現在使われているどの燃料とも違うようです。・・・液体燃料でも、固形燃料でもないようですし・・・。・・・まさか・・・インフィニティ動力?それなら、未だに稼働できることにも説明が・・・。」
ザックスの知らない単語ばかり呟いて考え込むメイスン。だが、ザックスは、施設が明るくなったのなら、残っている他の調査隊員を連れて来た方がいいと思い、メイスンに提案することにした。
「メイスンさん。明るくなったのなら、皆を連れて来た方がいいと思います。まだ、警戒は必要だと思いますけど、暗かった時よりやりやすいと思いますし、大勢いた方が、調査も進むんじゃ・・・。」
「・・・そうですね。では、他の人達をこの部屋に。私はここで、この動力炉の調査を行っていますから。」
メイスンはそれだけ言うと、炉の調査に集中しているのか、それ以上何も言うことはなかった。
「・・・メイスンさん、興味深いものを見つけたのはいいですけど、少しは我々に言ってください。心配していたんですから・・・。」
ザックスの報告により、動力室に来た調査隊員は、メイスンに苦言を呈する。
「・・・すみません・・・つい夢中になってしまい・・・。」
「確かに、動力炉が活きている遺跡は珍しいですが、人命が最優先だと、いつも言ってるでしょう。メイスンさん自身が。」
「・・・すみません。」
調査隊員達に囲まれ、次々と注意され、メイスンはすっかり小さくなっていた。
「大丈夫だったか、ザックス?」
一方、ザックスの方も、リク達に何もなかったかと心配されていた。
「大丈夫です、リクさん。この通り。」
「無事で安心したぞ。俺達は、生きた心地がしなかった・・・。」
「そうだよ・・・いくらザックスが強くても、こんなよく分からない所じゃどうなるか・・・。」
「・・・ぐす・・・。」
「・・・。」
安堵するリクとティック、泣いているリリーとセシリア。それぞれがザックスを本気で心配しているのが伝わっていた。
「だから、大丈夫だって。それに悪いことだけじゃない。面白いものも色々見つかったんだ。付いて行ってよかったかも。」
「呑気だな・・・僕達、本気で心配してたんだから。」
「分かってるさ。」
不満気なティックに対し、ザックスは笑顔で返すのだった。
「・・・メイスンさん。明るくなったことで見つかったのですが・・・。」
一方、メイスンの方では、隊員の一人が、メイスンに長方形の物体を手渡す。
「!これは・・・記録端末!」
「中身はまだ見ていません。・・・メイスンさんの持つ『バッテリー』がなければ見れませんので・・・。」
「・・・分かりました。見てみましょう。」
メイスンは、隊員から渡された端末に、バッテリーを接続した。
「・・・これは・・・この施設の地図ですね。ありがたい。これで、調査が進みます・・・。」
「『オメガ線防御シールド第五試験場及び試作型地下シェルターNo6』と書かれていますね。」
「先に見つけた端末から、ここがオメガ線から身を守るためのシードルを研究する施設であると同時に、シェルターでもあることが分かりましたが・・・第五にNo6とは・・・。まだありそうですね。」
「これは、大発見ですよ。首都キャピタルにある『先代文明研究所』に報告すれば、メイスンさんの名が残りますよ!」
「そんなものに興味はありません。私は、研究と調査ができれば、それ以上は必要ありません。・・・?どうやらこの施設には、さらに地下があるようです。」
「・・・居住エリアとキメラの飼育エリア・・・だそうですね。別に、今すぐ調査しなくてもいいと思いますが・・・どうします?」
「・・・ここまで来たら、最後まで行ってみましょう。二人ほど、同行してくれませんか?」
「いいですよ。」
「明るいなら、調査もはかどりますね。」
二人の隊員が、メイスンの同行に名乗りを挙げる。
「リクさん、ザックス君。二人にも護衛を頼みたいのですが、よろしいですか?」
「え?・・・俺はいいですけど、ザックスは大丈夫か?」
「俺は大丈夫です。まだ体力に余裕があります。」
「ザックスばっかりズルいよ。僕も見に行きたいな・・・。」
「でしたら、皆さんもどうですか?若いうちに色々知ることは、重要ですよ。」
ティックの不満に対し、メイスンは子供達全員で行くことを勧める。
「本当!?やったー!」
「あー・・・私はいいかな・・・遺跡にはいい思い出ないし・・・。」
「・・・私も・・・いい・・・です・・・。」
行く気満々のティックに対し、女子二人は露骨に嫌そうな顔をして辞退した。
「ティック、遊びに行くんじゃないんだぞ。」
「分かってるよ、リクさん。」
「では、いざ未知の領域へ!」
嬉しそうなティック、それをたしなめるリク、子供の様にはしゃぐメイスン、そして、そのやり取りを微笑んで見ているザックス達は、調査隊員達を伴い、更に地下へと調査へ向かうのだった。