遺跡の真実2
「・・・メイスンさん。さっき言っていたオメガ線兵器って、何ですか?」
ライトを持ち、先行するザックスは、メイスンが先ほど口にしていたオメガ線兵器について尋ねた。
「オメガ線兵器とは、オメガ線という放射線を放つ兵器の総称です。」
「放射線?」
「分かりやすく言えば、目に見えない猛毒のようなものですね。それを、大量に放射し、生き物を死に至らしめる兵器です。先代文明末期に開発されたもので、文明崩壊の最有力候補と考えられています。」
「そんな危険な兵器を、どうして昔の人は作ったんですか?」
「分かりません。どうしてそんなものを作ったのか・・・先代文明の謎の一つです。」
メイスンも、まったく分からないといった様子で答える。
「・・・このデータには、オメガ線の詳しいことが色々記載されています。ですが・・・正直、ゾッとしますね。想像以上に危険なものです。詳しいことは、専門的な部分が多いので省きますが、こんな危険な兵器、文明どころか、世界を破壊しかねません。・・・いえ、現に、破壊してしまったようなものですね。このような施設がなければ、人類も今頃・・・。」
「・・・。」
「?どうかしましたか?」
「・・・メイスンさん・・・この遺跡にそんな兵器の情報があるってことは・・・その兵器がまだ残って・・・。」
「それは大丈夫だと思います。ここは、あくまで避難用シェルター・・・つまり、オメガ線から身を守るための施設です。オメガ線兵器自体は置かれていないと思います。」
「・・・なら・・・いいんですけど・・・。」
「・・・。」
メイスンは、ザックスが恐怖を感じていることを察した。いくら腕が立つとはいえ、やはりまだ子供である。文明を崩壊させた原因の兵器に関係がある場所と聞いて、恐怖を覚えるのも当然である。
「・・・ザックス君。恐ろしいですか?」
「え?・・・あ・・・いえ・・・その・・・。」
突然の質問に、ザックスはしどろもどろになってしまう。メイスンは、そんなザックスに穏やかな微笑みで答える。
「・・・構いませんよ。未知のものに対する恐怖。それは、人間なら誰しも持つものですから。・・・ですが、それを遠ざけて、見ないようにしたり、安易な原因で妥協して、それ以上知ろうとしないのはいけないことですよ。」
「・・・どうしてです?」
「同じような過ちを繰り返すからです。」
「?同じような過ち?」
「まあ、ザックス君にはまだ早いですかね。今は、なんで怖いのか、を考えているだけで十分です。いつか、それが自然に分かるようになったら、詳しく話しましょう。」
「・・・。」
ザックスは、この時点ではメイスンの言葉の意味が分からないかった。この言葉の意味を理解するのは、かなり後の話である。