遺跡の真実1
「・・・メイスンさん。この辺りも酷いみたいです。」
メイスンとザックスは、遺跡の奥へと進んで行く。ザックスがライトを持って先行し、メイスンがそれに続く形である。
「・・・奥へ進むほど、施設の損傷が激しく、死体の数も増えてますね。」
「・・・?メイスンさん。あの死体、何か持っています。」
「?」
ザックスの照らす方を見ると、そこには、白骨化した手に、大きな長方形の物体が握られていた。
「・・・何でしょうかね?」
メイスンは、興味津々にそれを手に取る。
「・・・これは・・・まさか・・・!」
「?メイスンさん?」
「・・・私の予想が正しければ、これはおそらく・・・!」
メイスンは、なんと長方形の物体を二つに折ってしまう。
「!?メイスンさん!?何を!?」
突然のことに困惑するザックス。しかし、よく見てみると、物体は折れたわけではなく、本のように開かれた状態となっていた。一方は、何もない様に見え、もう一方は、四角いボタンの様なものがたくさん付いていた。
「・・・それは?」
「・・・先代文明の遺産、携帯端末と言われるものです。・・・バッテリーが切れているようですが、この電源を使えば・・・。」
メイスンは、鞄の中から黒い塊を取り出す。塊には、コードの様なものが付いていて、メイスンは携帯端末にコードを付けた。
「・・・接続完了。これで、端末が動くはず・・・。」
メイスンは、端末に付いていたボタンを押す。すると、今まで何もないと思われた方から、光が点いたのだ。
「!?」
「ああ、大丈夫ですよ。これは、様々な記録を残しておくためのものです。本や日記のようなものと考えてくれれば分かりやすいかと。」
「機械の本・・・。こんなものもあったんだ・・・。」
「・・・これを読めば、この施設のことが分かるかもしれません。・・・ええと・・・。」
メイスンは、端末を操作する。難しい顔をしていたが、どこか楽しそうにも見えた。
「・・・!これです!『本施設の概要』!これで、この施設のことが分かります!」
【本施設の概要:本施設は、試験的にオメガ線防御シールドを設置しているシェルターであり、オメガ線兵器が使用された際の避難シェルター建設のためのモデルシェルターである。収容人数は、五万人までは問題なく収容可能だが、六万人までなら想定ではあるが、収容者の生活に支障はない。ただし、先に述べたとおり、本施設のオメガ線防御シールドは、試験型であるため、シールド出力の安定性に課題が残っている。シールド完成のため、定期的なシールドのテストを本施設にて行う。】
「???オメガ線?シェルター?何のこと・・・?」
映し出されている内容が理解できないザックス。だが、一方のメイスンは、興奮した様子で画面に見入っていた。
「・・・まさか・・・オメガ線兵器の使用を想定したシェルター!?・・・いえ、それなら人類が滅ばなかった理由も説明できます!オメガ線兵器の威力が私の知るとおりなら、この星の生命体が存続できるはずが・・・!」
「め・・・メイスンさん!?早口で何を言ってるんですか?」
「!・・・ああ・・・すみません・・・つい、興奮して・・・。」
メイスンは、恥ずかしそうに言うと、画面から目を離した。
「・・・そんなにすごいことが書いてあるんですか?」
「ええ。極めて重要なことが載っています。人類が滅亡しなかった理由の一端です。」
「・・・人類が滅亡しなかった理由?」
「・・・ザックス君、あなたは、先代文明滅亡に関して、どこまで知っていますか?」
「え?・・・終末戦争で滅んだとしか・・・。」
「ええ、それは間違いありません。ですが、その詳細に関しては、未だ分かっていないことが多いのです。」
「・・・この機械には、そのことが書かれているんですか?」
「はい。全部ではありませんし、まだデータを全て見たわけではありませんが・・・終末戦争の詳細を知る手掛かりになりそうです。」
「・・・この遺跡に、そんな秘密が・・・。」
「奥に行けば、さらに何かが見つかるかもしれません。行きましょう。」
「え?全部読まないんですか?」
「歩きながら読みますよ。」
「・・・大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。さ、行きましょう。」
「・・・。」
ザックスは、一抹の不安を感じつつ、更に奥へと歩を進めるのだった。