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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
第二章 先代文明の遺産
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悍ましい痕跡

 暗闇の中をライトで照らしながら、メイスン達調査隊は進んで行く。最後尾に、ザックス達と、保護者代わりのリクが続く。

 しばらくは、何も目新しいものは見つからなかったが、突然、周囲の状況が一転する。

 「・・・メイスンさん。この壁・・・何だか傷だらけですね。」

 「床もボロボロです。・・・注意しないと転んでしまいます。」

 遺跡の壁は、無数の小さい穴が開いたり、何かが引っ掻いたような跡が所々に付いていた。それは、獣の爪痕のように見えたが、あまりに大きかった。

 床の方も、床のタイルが剥がれていたり、瓦礫の様なものが散乱していたり、さらには穴が開いている場所もあった。

 「・・・何かあったのかな?こんな風になるなんて・・・。」

 ティックは、壁の傷や、床の壊れされた跡を見て、この遺跡で何か恐ろしいことがあったのではないかと怯えていた。

 (・・・かつてここで、戦闘があったと見ていいでしょう。・・・ですが、一体何と・・・?・・・この爪の大きさから見て、何らかの生物の可能性がありますが・・・こんな爪の大きさの生物、私は知りません。)

 「・・・?壁に何か付いてるな。」

 隊員の一人が、壁に傷以外のものが付いていることに気付く。それは、真っ黒いシミのようなもので、飛沫の様な跡や、大きく広がった跡など、統一感がなく、壁に広がっていた。

 「・・・これは・・・塗装・・・ではないな。・・・!まさか・・・血!?」

 「ええ!?」

 隊員の言葉に、ティックは思わず声を上げた。他の隊員達も、言葉には出さなかったものの、動揺の色が見て取れた。

 「・・・!メイスンさん!床にも黒いシミが!・・・おそらくこれも・・・!」

 「・・・!おい!リク!ここから先は、子供達は立ち入り禁止だ!」

 「え?」

 「・・・見ない方がいい・・・。」

 隊員の一人は、心底辛そうな表情で呟く。その手のライトが照らす先には、たくさんの白骨が散乱していた。


 「・・・これは、この施設の職員でしょうか?」

 「・・・ボロボロですが、服装からして、職員ではなさそうですね。一般人だと思います。・・・だとすると、この施設が一体、何の施設なのか気になりますが・・・。」

 メイスンは、散乱している白骨を手に取り、マジマジと見ていた。

 他の隊員達も、恐る恐るといった感じで、付近を探索する。

 ザックス達子供組は、離れた場所で待機していた。

 「・・・頭蓋骨の損傷具合から見て、何か強い力で潰されたようですね。・・・これは、人間同士の戦闘ではないようですね。」

 「・・・まあ、人間があんな爪痕を壁に残せるわけないですよね。」

 「この施設の動力が死んだのは、単なる経年劣化だけではないのかもしれません。もっと、調べる必要があります。」

 「・・・メイスンさん。この人間を殺した犯人・・・まさか・・・まだ生きて・・・。」

 「ありえません。千年生きられる生物など、そうはいません。それに、この施設の状態で生きていられるとは・・・。」

 「・・・ですよね。」

 不安がっていた隊員は、ホッと胸を撫で下ろす。

 「・・・ですが、念のためです。リクさん、私に同行してください。」

 「え?俺ですか?」

 メイスンの突然の言葉に、リクは驚く。

 「これから私は、先行して調査を行います。万が一に備えて、腕の立つ人間が護衛に就いてほしいのです。この中で、腕が一番立つのはあなたです。お願いします。」

 「・・・それはいいですけど・・・何もそんなに急がなくても・・・。」

 「・・・これは、私の勘なんですが・・・この先にあるものは、早急に見つけ出さなければいけない気がするんです。・・・勘ですけど。」

 「・・・メイスンさんの勘、か。それなら、リクさん、付いて行ってあげてくれ。」

 「ああ。メイスンさんの勘、当たるんだよ。」

 「・・・でも、こいつらを置いては・・・。」

 リクは、ザックス達が気掛かりで、行くことを躊躇う。自分は確かに、メイスンの手伝いをするために来たが、同時に子供達の保護者代わりでもある。いくらメイスンの頼みでも、簡単に首を縦には振れなかった。

 「・・・ザックス君、君は、腕が立ちますか?」

 「・・・え?」

 「!メイスンさん!?まさか・・・!」

 「ザックス君、君は、腕が立ちますか?」

 「・・・一応は・・・。村でも狩をしてますし・・・盗賊を倒したこともあります。」

 「実力的には申し分ないですね。」

 「待ってください!メイスンさん!ザックスは、まだ子供なんですよ!危険に晒すわけには・・・!」

 「・・・ええ。ですから、ザックス君だけ・・連れて行きます。他の子供達は連れて行きません。これでどうですか?」

 「・・・ですが・・・。」

 「最悪、どちらかしか助からない場合、私のことは見捨てても構いませんよ。」

 「め・・・メイスンさん!あなたが死ねば、皆困ります!そんなこと言わないでください!」

 「ははは・・・冗談ですよ。」

 「・・・。」

 メイスンは冗談と一笑したが、リクは、本気だと感じていた。

 「・・・分かりました。ザックス、メイスンさんの護衛をしてくれ。」

 「いいの?」

 「メイスンさん直々のご使命だ。・・・それに、狭い場所なら俺より強いだろうしな。」

 「・・・分かりました、リクさん。」

 「・・・ザックス・・・大丈夫?」

 「大丈夫さ。・・・それに、こんな狭い場所なら、何かあったとしても、俺の方が対処できる。」

 「・・・ザックスなら大丈夫だって信じてるけど・・・気を付けてね。」

 「ああ、じゃあ行って・・・。」

 「・・・ザックス・・・待って・・・。」

 行こうとするザックスをセシリアは制すると、彼の服の裾に糸を結わえる。

 「・・・これで・・・たぶん・・・道に迷わない・・・。」

 「・・・ありがとう、セシリア。じゃあ、行って来るよ。」

 ザックスは、セシリアに微笑むと―隣でリリーが不機嫌な顔をしていたが―、メイスンと共に奥へと進んで行くのだった。

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