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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
序章 崩壊した世界に生きる子供達
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レムの村

 「お帰りなさい、ザックス、ティック。今日は、遅くまで大変だったわね。」

 村に帰還した二人を、入り口で女性が迎える。年齢は、二十歳前後ほどで、長い髪を束ねていた。

 「ただいま、ミーア姉さん。今日は、大物を仕留めたよ。」

 「ただいま、ミーアさん。僕も、いっぱい獲れたよ。」

 二人は、ミーアと呼んだ女性に挨拶と成果の報告をする。

 「すごいわね、さすがはザックスね。それに、ティックも頑張ったわね。」

 二人の成果を、ミーアは笑顔で褒める。

 「姉さん、ハーンさん達の方はどうだった?」

 「あっちも大漁だったわ。ザックス達の分とあれだけあれば、当分は狩をしなくても大丈夫そうよ。」

 「やった!じゃあ、当分は僕達の出番はないんだね。」

 「ええ。しばらくは、あなた達に頼むこともないと思うわ。」

 「やった!これで、遊びに行けるよ!」

 ティックは、嬉しそうにザックスに言う。

 「ティック。食料庫にいるフードさんに、獲物を渡して報告をするまでが仕事よ。」

 「は~い、分かってま~す。」

 「報告が終わったら、今日はウチに来なさい。夕ご飯を用意しているから。」

 「やった~!ザックス!早くフードさんの所に行こう!さっさと行って、ご飯にしよう!」

 「急かすなよ。じゃあ、姉さん。また後で。」

 二人は、フードと呼ばれた人物へ報告するため、ミーアと別れ、村の中へと入って行く。

 村は、石造りの家屋が十軒足らずしかない小規模な集落だった。村の周囲は、低いながらも柵の様なもので囲われ、一応は外敵の侵入を防ぐ備えがされてあった。そして、村の中には、中心に池があり、畑のようなものも見られた。


 「お帰り、ザックス、ティック。」

 食料庫に向かう二人に、一人の男性が声をかける。男性は、何か機械の様なものを弄っていた。

 「ただいま、おじさん。」

 「おじさん、またその機械弄ってるの?」

 「ああ。こいつがちゃんと動けば、楽に土地を耕せるはずなんだよ。」

 「でも・・・本当に動くの?森の中に落ちてた機械の残骸の寄せ集めなのに?」

 「・・・いや、うまくいくはずだ。・・・必ずいかせてみせる!」

 「・・・頑張ってください。それじゃあ、俺達は、フードさんの所に行きます。」

 「おう、今日は、ありがとうな。」

 二人は、男性と別れ、さらに進んで行く。

 「・・・ねえ、ザックス。あんなこと言ったけど、本当は、ザックスだって分かってるんでしょ?あんなガラクタ、動くわけないって。」

 男性に会話が聞こえない所まで移動したことを振り返って確認したティックは、ザックスに先ほどの機械に関することを言った。

 「・・・まあね。機械って、専門の知識がないと動かせないらしいからね。こんな小さな集落じゃ、動かせるようにはできないだろうな。」

 ザックスも、ティックの発言に同意した。彼には、機械に関する知識が全くないのである。

 「・・・でも、あんなに一生懸命なおじさんに、無駄だなんて言えないよ・・・。」

 「ザックスは、優しいね。」

 「・・・それに、機械が動くようになって、土地を耕せれば、皆助かるのは本当だしね。」

 「そうだね。僕、畑の手伝いは苦手だよ・・・。あんまり力ないし・・・。」

 「俺だって、そうだよ。・・・大人はすごいな・・・あんな固い土地を耕して、立派な畑にしたんだから。」

 「・・・そうだね。おかげで、野菜とか食べられるんだもん。すごいよね。」

 二人は、歩いている道を横目にして、口々に呟いた。その視線の先には、緑に溢れた畑があった。そこでは、作業をしている複数人の大人達がいた。


 機械弄りをしていた男性と別れた二人は、しばらくして、村の奥にある小屋に到着した。小屋の前には、山積みの木箱を見ている青年がいた。

 「フードさん、今戻りました。」

 「ああ、お帰り二人共。今日の成果はどうだった?」

 「今日は、大物でした。ティックの方もです。」

 「おお!さすがだ!二人にも頼んで正解だった!」

 フードと呼ばれた青年は、嬉しそうに獲物を見た。

 「これで、今月分、いや、来月分までは確保できたな。ありがとう、助かったよ。今月は、作物の収穫が低くてね。」

 「いいえ、俺達も、役に立ててよかったです。」

 「ご飯が食べられないなんて、困るもんね。」

 「いつもありがとな。これ、今回頑張ったご褒美だよ。」

 フードは、二人にトマトを手渡した。

 「いいんですか?貴重な食料を?」

 「いつも頑張ってくれてるからね。特別だよ。その代わり、誰にも言わないでくれよ。」

 「・・・それじゃあ・・・いただきま~す!」

 ティックは、トマトにかぶり付く。

 「美味しい~!」

 「おいおい、ティック。晩ご飯食べられなくなっても知らないぞ。」

 「そう言うザックスだって、食べてるじゃん。」

 「・・・。」

 「ははは!子供は、元気に走り回って、いっぱい食べる。それが、一番さ。」

 フードは、トマトを美味しそうに食べる二人の姿を見て、笑みを浮かべていた。

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