死んだ遺跡
「長いですね。」
地下へと続く長い階段を下りながら、メイスンは呟く。
開かれた入口の先は、一寸先も見えないほどの暗闇と、地下へと続く階段があった。メイスン達調査隊は、地上に十数名程待機させ、ライトを持った隊員を先頭に、地下へと続く階段を下りることにした。
だが、十分ほど経っても、階段が終わることはなく、未だに彼らは下り続けていた。
「ええ。・・・階段だけでこの長さ。想像以上にこの施設、大きいのではないですか?」
「でも、どうして、ここまで長い階段を作る必要があったんだ?」
他の隊員達も、この階段の長さに疑問を呈していた。
「・・・ねえ、リクさん。・・・なんだが僕、怖いよ・・・。」
ティックの方は、いつまでの続く長い階段に、恐怖を感じていた。
「な・・・何よ、ティック。・・・もうリタイア?・・・情けないわね・・・。」
と言いつつも、リリーも震えていた。
「・・・メイスンさん。子供達にこれ以上は無理だと思います。・・・もう十分・・・いや、五分しても階段が続くようなら、俺達は一旦、地上に戻ります。」
子供達の様子を見て、リクはメイスンにそう告げる。
「・・・分かりました。ここまで広いとは、私も想定していませんでした。あと五分ほど進んで、まだ終わりが見えなければ、帰還しましょう。」
全員、無言ながらも、メイスンの意見に了解していた。ここまで長い階段を下って行くことなど、誰も想定していなかったからだ。
だが、それから五分もしないうちに、先頭の隊員達は立ち止まる。
「?どうかしましたか?」
「・・・行き止まりです。ここから先に、壁・・・いえ、扉の様なものがあります。」
「扉?」
「ええ。・・・開けてみますか?」
「・・・お願いします。ただし、慎重にお願いします。」
「了解。・・・まあ、簡単に開くとは・・・。」
隊員は、目の前の扉を開けるべく、軽く扉を引く。すると、扉は何の抵抗もなく、扉は開いた。
「!?あ・・・開きました・・・。」
「・・・あっさり開いたな。外の扉が開かなかったから、てっきりここもとばかり・・・。」
あまりにあっけなく開いた扉に、隊員達は拍子抜けした様子であった。
「・・・。」
一方のメイスンは、険しい表情を崩してはいなかった。
(・・・扉がこんなあっさりと?自動ドア・・・でなないですね。あれは、扉の前に人間が立てば、開くとのことです。手動で開ける必要はないはず。・・・おそらく、この遺跡、既に動力が・・・。)
「・・・メイスンさん。この先も真っ暗です。」
隊員は、ライトを持つ手を扉の向こうに向ける。そこは、ライトの光が射さない場所以外、階段と同様に真っ暗であった。
「・・・なるほど。どうやら、この遺跡は、動力が止まっているようですね。」
「となると、参りましたね。動力が活きているなら、探索も楽だったんですけど・・・。」
「それは、稀なケースです。過去の遺跡なのですから、動力が活きているはずありません。そのために、ライトを大量に持ってきたのです。残りのライトも全部出して、探索を続行しましょう。」
「・・・了解。全員ライトを。」
隊員達は、各自持っていた鞄から、ライトを取り出し、灯りを点ける。
「・・・ザックス。お前も一応、持っておけ。」
リクは、ザックスにライトを一つ渡す。
「え?リクさんは?」
「俺は、もう一つあるからそれを使う。念のため、お前も持っておけ。」
「・・・はい。」
ライトを受け取ったザックスは、電源を点ける。ザックスの周囲が、ライトで明るく照らされる。
「皆、これなら少しは怖くないと思うぞ。」
「・・・ふう。灯りを見ると、何だか安心するね。」
「・・・まあ、私はそんなに怖くなかったけど・・・。」
「・・・明るい・・・。」
ザックスの点けた灯りを中心に集まり、安堵するティック、強がるリリー、表情には見せないものの、嬉しそうなセシリア。三人共、それぞれの反応を見せた。
「では、探索を続けましょう。ただし、何か見つけても触らないでくださいね。」
メイスンは、全員にそう告げると、ライトを手に暗闇の施設の探索を再開するのだった。