レイクの町
「ここがレイクか・・・話には聞いてたけど、僕は初めて来たよ。」
「俺もだ。同じ隣町でも、キーの町になら、何度か行ったことがあるけど・・・。」
荷台に揺られて三日。ザックス達は無事にレイクの町に到着した。
レイクの町。巨大な川の側にある、比較的大きな集落である。
この地も、元は他の場所と同様に、砂と石ばかりの土地であった。だが、オーテク文明が誕生する以前、ここには大きな河川があった。
だがそれも、オーテク文明の発展に伴って汚染され、文明崩壊と共に消失、河川の跡だけが残る有様であった。
長年放置されていた地だったが、ある時、この付近でオーテク文明の機械の残骸が多数発掘されたことをきっかけに、政府の調査団が訪れた。調査団は、発掘した機械を解析、復元した。そして、復元した機械の試験運用をこの地で行った。その際、彼らは水脈を発見したのだ。その水脈は、大量の水を溜めていることが判明し、これを河川の跡に引き、川を甦らせようと考えた。
これを聞きつけた人々は、挙って協力を申し出た。こんな荒れ果てた地において、水の確保は重要である。それを大量に手に入れられるというのなら、協力しない道理はなかった。調査団は、彼らに協力と引き換えに、この地に住む許可を約束し、計画はスタートした。調査団にとっても、労働力の確保は重要だった。
『河川復活プロジェクト』と銘打たれたその計画は、十年以上に亘る当時の人々の努力により成功した。
川の跡は、かつてのように水を湛える巨大河川となり、人々は、この河川をレイクと名付けた。そして、その調査団の拠点としていた場所に人々は集落を築いた。これがレイクの町の起源となった。
そして現在、既に調査団は帰還したが、残った人々は周囲の調査を続け、機械の発掘、復元を行っていた。それにより、この町は、首都キャピタルから離れているにも関わらず発展し、ある程度文明的な生活が送れるまでになっていた。もっとも、キャピタルと比べれば、雲泥の差ではあるが。
「あ。あれ見て!ロボットよ!」
リリーが指した所に、大きな機械の残骸を運ぶロボットの姿があった。ロボットは、灰色の人型で、所々塗装が剥がれ、ぎこちない動きながらも、残骸を運んでいた。
「もうこの町では、ロボットを利用して作業ができているんだ・・・。」
「あれだけじゃないぞ。農業用とか、削岩用のロボットもあるらしい。」
「すごい!村のガラクタとは大違いだね!」
「ティック・・・それは言っちゃ駄目だろ・・・。」
ザックスは、ティックの発言に苦笑する。
「いえいえ。あのロボットを動かすだけでも、実に十年以上もかかったのです。もちろん、大勢の人達の力があって、です。最初は、どれもガラクタでしたよ。」
そんなザックス達に、一人の男性が声をかける。男性は、灰色の短髪で、眼鏡をかけた温和な表情の青年である。
「メイスンさん!お久しぶりです。」
声をかけてきた青年に、リクは返事をする。メイスンと呼ばれた青年は、笑顔で会釈する。
「リクさんも久しぶりです。一年前のお手伝いの時以来ですね。」
「ええ。あの時は、でかい残骸を見つけたのに、大サソリのせいで結局回収し損ねました・・・。不甲斐ない姿を見せて申し訳ありません。」
「いえいえ。研究も大事ですけど、人命が最優先。気にしてはいません。」
「あはは・・・。・・・今回の調査は、どこまで行う予定です?」
「それに関しては、私の研究所で話しますね。・・・ところで・・・今回の応援はあなただけですか?」
「いえ、今回は、こいつらを応援として連れて来ました。」
リクは、ザックス達をメイスンに紹介する。
「子供達が?他の方は?」
「あー・・・ちょっと野暮用がありまして・・・。・・・例の遺跡が突然爆発してしまい・・・その後始末に・・・。」
「!?爆発!?まだ未調査の遺跡が!?」
リクが言い終わる前に、今まで穏やかな表情だったメイスンは、一転して驚愕と絶望の表情に変わり、その場に崩れ落ちた。
「ああ・・・貴重な遺跡が・・・人類の叡智が・・・!」