隣町へのお手伝い
「・・・リクさん。まだ着かないの?」
馬が引く荷台に乗るティックは、退屈そうに御者を務めるリクに言う。
「もう少しだ。あと一時間くらいで、レイクの町に着く。」
「ティック。そんな言い方は駄目だろ。俺達は、遊びに行くんじゃないんだから。」
同乗するザックスは、ティックの退屈そうな物言いに苦言を呈する。
「分かってるよ。・・・本をただせば、僕が行こうって言ったのがいけないんだし・・・。」
「分かっているなら、これ以上は何も言わないさ。だから、町の手伝い程度の罰で済んだんだ。」
「はあ~・・・レイクの町のお手伝いか・・・。大人でも大変だっていうのを子供にやらせるかしら?」
リリーがげんなりした様子で溜息を吐く。
「じゃあ、遺跡の跡地の後始末か、最近噂になっている謎の盗賊と凶暴な動物の調査でよかったかい?」
「冗談!そんなのするくらいなら、レイクの町の手伝いの方がマシ!」
「ははは。そうだろう。」
「・・・。」
動揺するリリーを尻目に、セシリアは静かに外の景色を眺めていた。
ザックスが目を覚ましてから三日後。他の三人も無事に目を覚ました。三人とも、突然村にいることに困惑したものの、意外と早く冷静さを取り戻した。そして、大人達に謝罪と、何が起こったかを話した。話の内容は、ザックスの内容と大差なく、ミーアとアムンゼンは、ザックスの話がより確かなものであると確信した。
それからさらに三日後、ザックス、ティック、リリー、セシリアの四人は、村長の家に呼ばれた。今回の件は、大人の言いつけを守らず危険な目に遭ったのだから、当然、怒られるものだと四人は覚悟していた。だが、予想に反して、そこまで怒られることはなかった。無論、キツく注意はされたが。
そんな四人への罰として、アムンゼンは隣町レイクへの手伝いを命じた。
「レイクの手伝いって・・・メイスンさんの?」
「うむ。近々、大規模な砂漠の調査を行うとのことだ。これに関しては、この村からもよく人手を出しているのは知っておるだろう。」
「それを俺達に?」
「そうだ。・・・本来なら、もう行く人間は決めていたのだが・・・遺跡がああなってしまったからな。何か危険はないか調査とその後始末をせねばならん。」
「・・・。」
アムンゼンの言葉に、四人は俯く。自分達のせいで、大人達に余計な負担をかけてしまったのだ。この世界、生きていくのも困難な世界で、余計な負担は命取りになりかねない。そうさせてしまったことに、四人は罪悪感を感じていた。
「その割いた人員の代わりとして、お前達を入れることとする。迷惑をかけた分、しっかり働いてくるのだぞ。」
「・・・はい。」
「・・・そんなに心配な顔をせんでもいい。リクを目付け役として同行させる。それなら、お前達も少しは安心だろう。」
「リクさんが?」
「そうだ。本来なら、リクも後始末にいくはずだったが、お前達がどうしても心配だと言ってな。自分から進んで目付け役になったのだ。」
「・・・。」
「だが、手は抜かんぞ。リクは、優しいが、厳しいところもある男だ。甘えても手は貸さんからな。それは覚えておくのだ。」
「はい。」
「・・・見えてきたぞ。レイクの町だ。」
リクの声に、ザックスは荷台から顔を出す。
ザックスが見た先には、大きな川が流れ、その側に少し大きめの集落が見えた。
「レイクだ・・・。」