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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
第一章 少年達の探検
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目覚めた少女

 「・・・やった・・・!」

 ロボットが完全に機能停止したことを確認し、ザックスはその場に崩れ落ちた。

 「ザックス!」

 ティックは慌てて、ザックスに駆け寄る。ザックスは、息も荒く、顔から汗を大量に流していた。

 「大丈夫!?・・・どこか、撃たれた!?」

 「・・・いや・・・ちょっと・・・気が抜けて・・・。」

 「よかった・・・。いきなり倒れたから、撃たれたと思ったよ・・・。」

 ザックスが無傷であることを知ったティックは、安堵する。

 「ははは・・・こんな奴と戦ったんだ。無傷でも疲れるさ・・・。」

 (・・・さすがに、あれだけ走りっぱなしじゃこうなるな・・・。)

 「・・・でも、遺跡にいるロボットがこんなに強かっただなんて・・・思いもしなかったね。」

 「ああ。正直、いけると思ってたんだけどな・・・。リリーとセシリアが来てくれなかったら、確実に死んでたな。」

 安堵の様子を見せていたティックだが、不意に、表情が曇る。

 「・・・ごめん、ザックス。こんなことになるなら、探検に行こうなんて言わなければよかった・・・。」

 「行くのを決めたのは、俺なんだ。俺にも責任はある。」

 そんなティックに、ザックスは気遣う様に言う。それを聞いて、ティックはすまなさそうな表情は崩さなかったものの、さっきよりも暗さはなかった。

 「・・・?あれ?リリーはどうしたのかな?いつもなら、すぐ来るのに?」

 

 一方、リリーの方は、装置の陰で寄り掛かるようにしていた。彼女の顔色は、少し青くなっていた。

 「はあ・・・はあ・・・。」

 (・・・収束術を使い過ぎた疲労感がもうきてる・・・。・・・おかしいわね・・・あと・・・一回分残っているのに・・・。)

 「・・・リリー・・・大丈夫・・・?」

 そんなリリーに、セシリアは声をかけた。

 「!・・・何よ・・・セシリア・・・。」

 「・・・収束術使用後の・・・疲労・・・。・・・でも、それだけじゃない・・・あんな状況で使えば・・・緊張して疲れる・・・。」

 「な・・・!」

 「・・・これ・・・。」

 セシリアは、リリーに小さなものを手渡す。それは、キャンディーのようなものだった。

 「・・・ありがと・・・。」

 「・・・。」

 セシリアにキャンディーを手渡され、リリーは複雑そうな様子で礼を言うと、それを頬張る。セシリアは、心なしか安心した様子でそれを見ていた。

 「二人共、もう大丈夫だ。出て来てもいいぞ。」

 「・・・ありがとう、ザックス。さすがね。」

 「いや、リリーの収束術がなければ、こいつは倒せなかった。ありがとう、リリー。」

 「・・・うん。」

 「?」

 (あれ?いつもより反応薄い。ザックスにそう言われたら、滅茶苦茶喜ぶはずなのに・・・。)

 「セシリアもありがとう。セシリアが助けてくれなければ、俺は今頃・・・。」

 「・・・全然・・・大したこと・・・していない・・・。」

 「そんなことないよ!セシリア、すっごく強かったよ!」

 「ああ。あんなに動けるのなら、セシリアにも狩を手伝ってほしいくらいだ。」

 「・・・そう・・・。」

 セシリアはそう言うと、顔を伏せてしまう。

 「?セシリア?」

 セシリアの様子が、少し変だと思ったザックスだが、それ以上聞くことはできなかった。突然、あの時ロボットが現れた時と同様に、警告音が鳴り響いたのだ。

 「な・・・何よ!今度は!?」

 『ガードマシーン001ノ破壊ヲ検知!全戦力ヲ投入シ、侵入者ヲ排除セヨ!繰リ返ス!侵入者ヲ排除セヨ!』

 警告音と共に、機械音声の警告が室内に響き渡る。それと共に、天井が開き、先ほど同様、ロボットが天井から降りてきた。だが、今度は一体だけではなかった。天井全てが開き、そこから大量のロボット達が降下してきたのだ。

 「な・・・!これは・・・!」

 その数に、ザックスは絶句した。十体、ニ十体などという数ではない。少なくとも、百体はゆうに超えるロボットが、部屋を埋め尽くしていたのだ。

 「そ・・・そんな・・・!あいつを倒すのにこんなに苦労したのに・・・まだこんなに・・・!」

 「リリー!収束術は!?あと一回分残っていたはず!」

 「・・・駄目・・・今の私じゃ・・・こんな大勢の敵を倒せる術は使えない・・・!」

 「くっ!」

 ロボット達は、ザックス達に銃を向ける。

 『一斉掃射!』


 ロボット達は、一斉に銃を発砲する。ザックス達に、無数の銃弾が絶え間なく発射される。こんな攻撃を受ければ、人間の身体は蜂の巣になるどころか、人の形すらなさなくなるだろう。

 その銃撃は、一分以上続いていた。通常なら、そこまで銃撃を続けることはない。だが、ロボット達は、攻撃を続けていた。理由は簡単である。ザックス達の生体反応が消えていないからである。

 「・・・!何だこれは!?」

 もはやこれまでと覚悟していたザックス達は、目の前の状況に困惑していた。銃弾は、自分達の目の前で全て止まっていたからだ。

 いや、止まっているというのは正確ではない。見えない壁の様なものに阻まれてしまい、先に進めなくなっていたのだ。

 「・・・どういうこと・・・!?何で銃弾が・・・!?」

 「・・・分からない・・・。」

 「・・・リリー・・・収束術使ったの・・・?」

 「つ・・・使ってない・・・。・・・それに私・・・防御系の術は適性がないから使えないって言われてて・・・。」

 「・・・じゃあ、これは・・・?」

 ・・・ピキ


 不意に、ロボット達の背後の水槽に亀裂が生じる。それは、遠くからでは分からないほどの小さいものであったが、それは次第に大きくなっていく。そしてついに、水槽は大きな音を立てて割れてしまった。水槽が割れたことで、中にあった大量の水が噴出し、周囲を水浸しにしていく。

 その水は、ロボット達にも降りかかる。途端にロボット達は、ザックス達への攻撃を中止し、後ろを向いた。

 「い・・・いきなり何が・・・!?」

 「・・・!あれ!」

 ロボット達の急な攻撃中断により、ザックス達は、奥の水槽が割れていことに気付いた。銃声があまりに多く聞こえていたせいで、割れた音に気付かなかったのだ。、

 そして、空になった水槽の中には、先ほどまで漂っていた少女が佇んでいた。少女は、ぼんやりとした様子でロボット達を見据えていた。

 「・・・生きている・・・の・・・?」

 「・・・そんな・・・あり得ない・・・!」

 「・・・。」

 少女は、無言で水槽の外に出ようとする。周囲には、水槽の破片が散乱し、素足で歩くのは危険な状態だったが、彼女は意に介することなく進んで行く。

 『鍵ノ覚醒ヲ感知!早急ニ取リ押サエヨ!』

 ロボット達は、先ほどまで攻撃していたザックス達には目もくれず、水槽にいた少女に殺到する。

 「!危ない!」

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