少年達対ガードマシーン
ようやく、戦闘らしい戦闘回です。ゲームで言うのなら、ボスのような敵です。
警備用ロボットは、銃撃を続けながら徐々にザックス達に近付いてきていた。このままでは、近くに隠れているリリーとセシリアが、真っ先に攻撃を受けるであろう。
「・・・このままじゃまずい!リリーとセシリアが危ない!」
「でも・・・どうやって助けるの!?あんなに乱射されてたら・・・!」
「・・・。」
今、ザックス達の所持する武器は、ザックスの剣、ティックの弓、そして、リリーの収束術がある。だが、あれだけ絶え間なく攻撃している敵に攻撃を仕掛けるのは、容易なことではない。剣は、近付かなければ意味がなく、弓も収束術も、相手を視認しなければならない。隠れながら攻撃はできない。
「・・・俺が囮になって、ロボットの注意を惹き付ける。その間に、リリーの術とお前の弓で攻撃するんだ。」
「そんな!危険だよ!あの銃、ただの銃じゃなくて、連射が利くタイプだよ!逃げ回るのはキツイよ!」
「それしかない!リリー!俺が囮になる!その間に、あのロボットに効きそうな術で攻撃してくれ!ティックは銃身に矢を撃ち込んでくれ!ボディより銃の方が強度は低いはずだ!うまくいけば、壊せるかもしれない!」
「え!そんな・・・急に言われても・・・!」
「それに、それじゃあザックスが・・・!」
「任せるぞ!二人共!」
戸惑う二人を尻目に、ザックスは装置の裏から飛び出す。
「こっちだ!撃ってこい!」
ザックスは、わざと自身が目立つように声を上げ、リリー達やティックの隠れている場所から離れるように走る。ロボットは、遮蔽物から出たザックスに狙いを定め、銃撃する。
「ザックス!」
「・・・やるしかないわね。ティック!ザックスの作戦通りにやるわよ!」
「・・・分かったよ。何とかしてみる。・・・当てるだけなら・・・!」
ティックは弓を構え、ロボットの銃器部分に狙いを定める。ロボットはティックにはまったく反応せず、ザックスを狙って攻撃を続けている。
「・・・そこ!」
ティックの矢は、寸分違わず銃器に命中する。しかし、銃器は壊れるどころか矢が刺さることもなく、矢は無情にも床に落ちた。落ちた矢の鏃は無残に砕け、原形を留めていなかった。一方、銃器には傷一つなかった。
「意外と固い!」
ティックは続けて矢を放つが、結果は変わらず、鏃が砕けた矢が落ちるだけであった。
「・・・ティックの矢じゃ無理ね。・・・私がやるしかないのね・・・!」
リリーは、意を決した様子で、簡易型収束機を操作する。
「・・・でも、ロボットって何の術に弱いのかしら?」
先代文明に関することに興味があまりないリリーは、ロボットがどんな攻撃に弱いのかは知らなかった。
「・・・セシリア・・・知ってる・・・?」
リリーは、少々嫌そうな顔をしながらも、セシリアに尋ねる。
「・・・一般的に雷・・・って聞いた・・・。」
「雷ね。・・・じゃあ、サンダーショックがいいわね。」
「・・・!ザックス危ない!」
一方、逃げ回っていたザックスだが、ロボットの攻撃の照準は次第に合ってきていた。ザックスは剣で銃弾を弾いて凌いでいるものの、このままではザックスに命中するのも時間の問題であった。
「は・・・早く・・・サンダーショックを・・・!」
「・・・。」
ザックスのピンチにリリーは動揺し、操作に集中できなくなっていた。このままでは、発動はできそうにない。
「・・・リリー・・・発動だけに集中して・・・!・・・ザックスは・・・私が助ける・・・から・・・!」
「?セシリア?」
「・・・私も・・・囮になる・・・!」
「な・・・何言ってるの!?あんた、戦う術なんて・・・!」
「・・・リリー・・・無駄口叩いてないで・・・早く・・・する・・・!」
そう言うとセシリアは、装置の裏から飛び出す。
「ちょ!セシリア!」
「・・・!」
セシリアは、銃撃を続けるロボットに向かって行く。
「!セシリア!駄目だ!」
「!」
セシリアはロボットを背後から蹴る。ロボットは急な衝撃に若干たじろぐものの、すぐに復旧し、セシリアの方を向く。
一方のセシリアは、蹴った反動を利用して、装置の上に飛び乗っていた。そして、懐から何かを取り出すと、ロボットに向けて投げつける。
カキンと金属音を響かせて、それは床に落ちる。それはナイフで、刀身はロボットのボディに当たったことで、砕けていた。
「な・・・ナイフ!?セシリア・・・そんなものいつから・・・!?」
「・・・こっち・・・!」
セシリアは、装置の上を伝い、走り回る。ロボットはセシリアを狙って攻撃するものの、銃弾がセシリアに命中することはなかった。セシリアは、足場が悪いにも関わらず、信じられないほどの速さで走り回り、一発も当たらなかったのだ。
走りながらもセシリアは、ナイフを投げ続けた。ロボットは傷付くことはなかったが、完全に攻撃対象をセシリアだけにしていた。
「・・・何だかよく分からないけど、あんたのおかげで収束が完了したわ!受けなさい!この鉄人形!」
リリーは、ロボットに簡易型収束機を装着した左腕を向ける。腕には、黄色の輪が回っており、時折小さな電流が生じていた。既に、術発動の準備は完了していた。
「サンダーショック!」
腕の黄色の輪から、電撃が放たれる。電撃はまっすぐにロボットに直撃し、ロボットの全身に流れていく。ロボットの身体の所々から、煙が噴き出し、小さな爆発が起き、高度が下がり出す。
『損壊率85%オーバー!マシンガン使用不能!飛行能力喪失!』
ロボットは、機械的な音声を発しながら、床に落ちた。ロボットの身体は、外側の装甲が損傷したことで、中の機械部分が露出し、そこから煙が噴き出し、小さな電流も生じていた。
「・・・やったの・・・!?」
「・・・いや・・・まだだ・・・!」
『・・・排除・・・排除・・・!』
全身が損傷し、飛行もできなくなったにも関わらず、ロボットは尚も戦闘を継続しようとしていた。腕を使い、匍匐前進するかのようにザックスに近付こうとする。だが、明らかに機能停止寸前であることは目に見えていた。
「・・・これで終わりだ!」
ザックスは、剣の柄を両手で強く握ると、大きく振りかぶり、ロボット目掛けて振り下ろす。サンダーショックを浴びて傷んでいたロボットのボディは、ザックスの攻撃に耐えきることができず、装甲は易々と砕け、中の機械は剣で切り裂かれた。
それと同時に、ロボットはボンと音を立てて、小さな爆発を起こし、完全に機能を停止した。