森の遺跡3
「・・・それにしても、この遺跡、思った以上に綺麗だな。」
ザックスは、周囲を見渡しながら呟いた。ザックスの言葉通り、この遺跡は、千年以上も放置されていたとは思えないほど綺麗だったのだ。壁や天井、床に至るまで、汚れはおろか、傷一つなかったからだ。
「千年も放置されていたのなら、埃とかで汚れているはず・・・。それに、補修とかしないと壁とか壊れてしまうのに・・・。」
「誰かが手入れしているのかな?」
「そんなわけないでしょう。千年も人間が生きているはずないわよ。」
「・・・人間じゃなければ・・・生きている・・・かも・・・。」
「人間じゃなければ・・・か。」
ザックスは、この遺跡が綺麗な理由がおおよそ分かっていた。人間が千年もの年月を生きることは不可能だ。そんなこと、子供の自分でも分かる。なら・・・。
「・・・!皆!止まれ!」
この遺跡について色々意見を出し合っているザックス達の視界に、何かが入った。その何かは、こちらに向かって来ているようであった。
「・・・こっちに来る・・・!」
「て・・・敵!?」
「分からない!とにかく、武器を構えろ!」
少しして、近付いて来る存在がようやく分かった。それは、全身が赤い金属のボディをし、下半身に箒のようなものが付いた、人型の何かであった。
「な・・・何これ・・・!?」
「・・・ロボットだ・・・!」
「ロボット?・・・!ええ!?これが、たまに遺跡で見つかるっていう機械!?」
「間違いない。おじいちゃんの本で見たことがある。金属の身体をして、いろんな作業をする機械の人形だ。まさか、実物を見ることができるなんて・・・!本と人伝の話でしか聞いたことがなかったものがこんな近くに・・・!」
ザックスは、目を輝かせて、そのロボットを見ていた。まるで、子供が興味のあるものを見ているかのようである。
「俺の思った通りだ!この遺跡が綺麗なのは、このロボットが掃除していたからだ。ほら、このロボット、箒が付いてる!こいつは、掃除用ロボットなんだ!」
「へー・・・村にあれば、掃除とか楽になりそうね。」
リリーもロボットの便利さに興味を持ったようで、まじまじと見つめる。
「・・・リリー、掃除はちゃんと自分の力でやるべきだよ。・・・でも、確かにあれば便利かも。他にも何かあるのかな?」
ティックも先ほどまでの不安がっていた態度から一転、未知のロボットに興味深々で、他にもロボットがいないかワクワクしていた。
「・・・あ・・・向こうにもいる・・・色は青だけど・・・。」
セシリアは、奥の方にもう一体ロボットがいるのを確認すると、ザックス達に伝える。青いロボットは、壁を雑巾のようなもので拭いていた。
「まだいたんだ。・・・まあ、当然か。こんなに広い遺跡なんだから、一体だけじゃやりきれないな。」
「ねえねえ、一体持ち帰りましょうよ!あれば役に立つわよ!」
「駄目だ。俺達は、今回はこっそり来ているんだ。持って帰りたいのは山々だけど、大人にバレてしまう。」
「・・・残念。」
リリーは持ち帰りたそうであったが、ザックスに警告され、渋々断念した。
「ザックス、まだ先があるよ。早く行こう。」
既に、ティックはセシリアと一緒に先に進み、ザックスに来るよう促した。
「あ!待ちなさいよ!抜け駆け禁止!」
リリーは慌てて、それを追いかける。
「おいおい、そんなに急がなくても、遺跡は逃げないぞ。」
最後にザックスが後に続く。
そんなザックス達の様子を、見ているものがいた。もっとも、それは人ではなかった。天井に付いていた球体上の物体で、地上からは見えなかったが、レンズのようなものが付いていた。
『・・・侵入者ノ反応ヲ検知シマシタ。・・・警戒モードヲレベル1カラレベル2ニ移行。』