森の遺跡2
「・・・足元に気を付けるんだ。」
ランタンを片手に、ザックス達は階段を下っていく。周囲は視認できないほどの暗闇で、ランタンの光が照らす範囲以外は何も見えなかった。
「・・・やっぱり暗いな・・・。ランタンがあってもほとんど見えない・・・。」
「・・・不気味だね。僕達だけで進んでよかったのかな・・・?」
ティックは心配そうに呟く。
「な・・・何よ!これくらい!・・・全然平気よ!」
リリーは、強がりながらも、その声は震えていた。
「・・・。」
一方、セシリアは何も言わず、一番後ろを歩いていた。
どれくらい経ったであろうか。ザックス達は階段を下り切った。
「・・・ここが、最下層だな。」
ザックスは、ランタンで周囲を窺うが、ここも階段と同様に、ランタンが照らす僅かな範囲しか見えなかった。
(・・・ここまで暗いとは思わなかった。ランタンだけじゃ心許無いな。やっぱり、今回は切り上げて、今度・・・。)
その時、不意にザックス達の目に、強烈な光が入り、思わず彼らは目を瞑った。
「う!な・・・何だ!?」
「ま・・・眩しい・・・!」
「ちょ・・・何よこれ・・・!?」
「・・・うう・・・!」
しばらくして、ようやくザックス達は目を開けることができた。周囲は、先ほどまでの暗闇とは打って変わり、部屋の様子が全て分かるほど明るくなっていた。
「・・・これは・・・どういうことだ?」
「さっきまで暗かったのに・・・何で明るくなったんだろう・・・?」
「!あれ!あの壁にあるものから光が出てるわ!」
リリーの指し示した所には、長方形の光を放つ物体があった。その長方形の物体は、等間隔で壁に付いていた。
「・・・あれ・・・先代文明の道具・・・。・・・確か・・・電灯・・・。」
「馬鹿な!電灯が動くには、エネルギーを供給する動力が必要なはず!こんな廃墟じゃ、動力が活きているはずがない!」
「・・・でも、電灯が点くってことは、この遺跡は動力が活きているってことだよね。」
「・・・ああ。・・・信じられないことだけど。稀に、動力が活きている遺跡も見つかることがあるらしいけど、もっと大きな、保存状態のいいものだ。こんな小さな遺跡が、どうして・・・?」
「・・・ザックス。・・・奥・・・。」
セシリアは、向かい側の壁を指す。そこには、壁と明らかに違う色の部分が見えた。
「!あれは・・・扉か?」
「行って見てみようよ。」
「・・・よし、見に行こう。」
ザックス達は、セシリアの指した場所に向かう。それは、確かに金属製の扉の様なものであった。
「・・・確かに、扉みたいだ。・・・でも、ドアノブがない・・・。」
扉に手を触れようとしたその時、扉は突然、壁に収納されるような形で消えてしまった。。
「!?何これ!?突然壁が消えたよ!?」
「・・・自動ドアだ。なんでも人が近付くと、それを感知して開くらしい。・・・おじいちゃんの本に書いてあった。」
「・・・何でもありね、先代文明・・・。」
「・・・まだ奥があるみたいだ。思っていたよりこの遺跡は、広いのかもしれない。」
「・・・どうする?一旦帰る?」
「・・・いや、このまま進んでみよう。」
「え?ザックス・・・?」
ザックスの言葉に、ティックは驚いた。いつも狩の時、無理はせずに無難に行動するザックスが、そんな風に言うとは思いもよらなかったのだ。
「だんだん探検っぽくなってきたんだ。ここで帰るなんて勿体ない。」
「そ・・・そうだけど・・・。」
ザックスがこんな風に夢中になる姿を見たことがなかったティックは、困惑していた。これではリリーと大して変わらなかった。
「皆、先に進もう。ただし、隊列は乱さないように。」
「何があるのかしら・・・ちょっと楽しみ。」
「・・・私も・・・楽しみ・・・。」
一方、リリーとセシリアは、この先に何があるのか、不安と同時に心を躍らせていた。見たこともない遺跡に、これまた見たこともないものがあるのだ。過酷な世界で生きているとはいえ、まだ子供である。好奇心が抑えられなくなっても無理はなかった。
「・・・分かったよ。僕も付いて行くよ。でも、危なくなったら、すぐに帰ろうね。」
「ああ。・・・行くぞ。」
ザックス達は、この奥にあるものに興味を馳せ、進んで行く。それが、自分達の運命を大きく変えてしまうことなど、この時の彼らは知る由もなかった。