森の遺跡1
四人が森に入り、どれだけの時間が経っただろう。彼らはようやく、目的の場所に到着した。
「・・・ここが、その遺跡の見つかった場所か・・・。」
目的の場所は、日光を遮る木々がなく、明るい場所だった。
「森の中は薄暗かったのに、ここは日が当たっていて明るいね。」
「つまり、ここには元々木が生えてなかったってことだ。」
「建物があったから、この場所だけこんなに開けてるってことかしら?」
「そうなる。・・・ほら、あれ。」
ザックスが指差した場所には、建物の跡と思しき残骸が転がっていた。それは、長き年月が経過したことで風化していたが、岩ではなく、人工的に作られた物体であった。
「あれって、建物の壁?」
「たぶんね。それに、あそこの部分だけ、地面とは違う色だ。たぶん、床だ。かなり土に埋もれてしまってるけど、間違いない。」
「でも・・・見た感じ、ただの建物の跡ってだけで、何もなさそうだけど・・・。」
「大人達がまだ調査していないんだ。ひょっとしたら、何かあるかもしれない。」
「何もなくても、ここまで来ることってないからね。探検に来たって気分には十分だよ。」
「じゃあ、早速何かないか探してみよう。何か見つけたら、皆に言ってくれ。」
「・・・分かった。・・・頑張る・・・。」
ザックス達は、建物の跡を調べ始めた。だが、一時間ほど探索してみても、何も目ぼしいものを見つけることはできなかった。
「・・・何もないな。」
「あるのは瓦礫か石ころだけよ。は~・・・疲れちゃった・・・。」
「そもそも、ただ森に建っていただけの家だったのかもね。」
「えー・・・。」
「・・・。」
ザックス達が何も見つけられず、諦めの空気が漂う中、セシリアは一人、黙々と探索を続けていた。
「・・・セシリア。これ以上探しても何も・・・。」
「・・・!やっぱり・・・!」
セシリアは、何を思ったのか、瓦礫をどかし出す。突然のことに、ザックス達は戸惑う。
「せ・・・セシリア!?何を!?」
「・・・この瓦礫の下・・・何か・・・ある・・・!」
「!本当か!?」
「・・・うん・・・!」
「・・・分かった、手伝う。」
ザックスもセシリアが瓦礫をどかすのを手伝う。その光景を、ティックとリリーは唖然として見ていた。
しばらくして、二人は瓦礫をどかし終えた。瓦礫があった場所には、下へと続く階段があった。
「これは・・・地下に行く階段だ!」
「すごいよ、セシリア!よく分かったね!僕、全然気が付かなかったよ!」
「俺もだ。さすがセシリア。昔からもの探しとかうまかったからな。よく見つけたな。」
「・・・空気の流れるような・・・感じがしたから・・・。・・・それに・・・たまたま・・・運がよかっただけ・・・。」
とんでもない成果を出したセシリアに、ザックスとティックはそれを褒める。褒められたセシリアは、包帯越しでも分かるほど照れていた。
「・・・ふん。まあ、少しは役に立ったわね。」
「もう、少しは素直にすごいって言えばいいのに・・・。」
「・・・ふん!」
(・・・もう。これくらい褒めてあげなよ・・・。)
セシリアの活躍に対し不機嫌そうなリリーに、ティックは苦言を呈する。
「・・・下は暗いな。一応、灯りになるものは用意しているけど・・・これじゃあそんなに長い時間は探索はできそうにないな。」
階段から下を窺いながら、ザックスは現在の自分達の装備では探索は難しいと感じていた。今回、薬や食料の類は持ってきていたが、灯りといった探索に使用する類のものはほとんど持ち合わせていなかったからだ。
「どうする?今回はこれで繰り上げるか?」
「ええ!?ここまで来てそれはないでしょう?どうせなら、行ける所まで行きましょうよ。」
「危険だよ。誰も調べていない遺跡の探索なら、尚更慎重に行かないと。」
「・・・大丈夫。」
セシリアはそう言うと、自身の鞄からランタンを取り出した。
「・・・探索用に・・・いつも持ち歩いているから・・・。・・・これ・・・使える・・・?」
「・・・使える!ありがとう、セシリア!これなら長時間探索できる!」
「すごいよ、セシリア!頼りになるね!」
「・・・そんなこと・・・ない・・・。」
「・・・ふん!」
「よし、じゃあ、探検続行だ!」