ザックスとティック
これは、昔自分が作っていて、諸事情により断念した自作ゲームのシナリオを基にした小説です。どことなく、ゲームっぽいところが出たりするかもしれませんが、それの名残ですので、ご容赦ください。
一頭の鹿が、森を歩いていた。森といっても、枯れて朽ち果てた木々が密集しているだけの、死の森であったが。
そんな鹿の側を、並行して移動する一つの人影があった。人影は、鹿に気付かれない様、慎重に移動し、距離を保っていた。
しばらくして、鹿は歩を止め、周囲を見渡し出した。そして、そこから駆け出そうとした次の瞬間、距離を保っていた人影が、飛び出した。
「はっ!」
人影は、一瞬で鹿に近付くと、何かを振り下ろす。すると、鹿の首元から、夥しい血が噴き出し、その場に倒れ込んだ。鹿は、首元を鋭利な刃物で切られ、死んだのだ。
「・・・ふう。うまくいった。」
鹿を仕留めた人影の正体は、青髪の少年であった。少年は、年齢は十代半ほどに見える外見で、手には、先ほどの鹿を仕留めた得物が握られていた。それは、ショートソードのようなもので、刀身には血が付いていた。
「こんな大物が仕留められるなんて・・・ツイてるな。姉さんやおじいちゃんも、喜ぶぞ。」
少年は、足元で倒れている鹿を見て、満足そうに呟いた。
「ザックス~、そっちはどうだった~?」
そこに、弓を背負った赤髪の少年が、両手に兎を持って駆け寄って来た。少年は、青髪の少年と同い年くらいに見え、背は、少し小さかった。
「ティック。俺は、こいつを仕留めた。大物だ。」
ザックスと呼ばれた青髪の少年は、剣を背中の鞘に収めると、倒れた鹿を指した。
「すごい!さすがはザックスだね!」
ティックと呼ばれた赤髪の少年は、ザックスの成果に感心し、褒めた。
「そういうティックも、兎をそんなに仕留めたじゃないか。俺じゃあ、そんな小さな獲物は無理だ。」
ザックスも、ティックの成果を褒める。
「そんな・・・僕なんて、まだまだ・・・兎で精一杯だよ。」
そんなザックスの言葉に、ティックは恥ずかしそうに答える。
「・・・目的は果たしたし、そろそろ村に戻ろう。最近は、盗賊とかがよく出るって、姉さんが言ってたからな。こんな所で出くわしたら、俺達も危ない。」
「分かった。皆、喜ぶぞ~。今日は、大漁だもんね。」
二人は、仕留めた獲物を手に、意気揚々とその場を立ち去って行った。
まだ全然、SFらしさの欠片もありませんが、話が進むにつれて、それが出てきます。