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夜会へ行こう2

お楽しみ頂けたら幸いです。

ペレッタ公爵家に到着すると先に馬車から降りた兄が手を差し出してくる。

その手にそっと自分の手を乗せると兄は優雅に私をエスコートした。

もう私の心の中はカーニバルと化していて周りが見えていなかった。

今日ほどアイザックに感謝した事はないと言う位に浮かれていた。


ペレッタ公爵家のホールに着くと兄が私の腰に手を添えて来た。

「お前は昔から危なっかしいからな」

優しく微笑まれる。

ミッシェルは顔を赤らめながらケヴィンに寄り添う。

そんな様子をアイザック達に見られているとは露知らず、私は兄を満喫していた。

アイザックから贈られたドレスは私の瞳の色と同じ紺碧色を基調としていた。

広がるドレスの裾に向けて金色にグラデーションのあるとても神秘的な色合いだ。

身に付けている装飾品もサファイアを使用したものでケヴィンの本日の色とお揃いであり、遠巻きに見ていると本当の恋人同士にしか見えない。

「何?あれ?」

ジャクが顔を引きつらせながらアイザックに問う。

「ミッシェルがケヴィン・ラハンと幼馴染らしくペレッタ公爵家へ今回ラハン公爵家の馬車で送ると申し出があったんだ。うん。あれはそうだな。尊敬する幼馴染に対する照れだな」

凄く無理な言い訳だな…。とジャクは思った。

「取り敢えず一曲踊ったら此方に来るから」

アイザックは苦笑しながらそう言った。

丁度その時、新たな曲が流れペレッタ公爵に挨拶を終えたミッシェル達がダンスを始めたのだ。

ケヴィンは優雅にミッシェルをリードする。

「お兄様と踊るのはいつ振りでしょうか」

頬を朱に染めながらミッシェルは上目遣いに兄に問う。

「確かミッシェルが10歳位の時が最後だったと思うけど」

ケヴィンはミッシェルを見つめたまま思い出す様に言う。

「そんなに昔になりますか」

ミッシェルは随分と兄と踊っていなかった事に今更気付く。

勿体無い事をしたものだ。と内心舌打ちしてしまう。

淑女の嗜みの為に練習したいとか何とか言ってダンスをするんだった。と物凄い後悔をする。

「ミッシェルはどんな格好をしていても私の大切な妹だよ」

ケヴィンは慈しむ様な眼差しを向けミッシェルに囁いた。

途端にミッシェルは耳まで赤くしてケヴィンを見つめる。

お兄様鼻血が出そうです。

その笑みと囁き…。

破壊力抜群です。

異様なフェロモンを放つ兄に乙女モード全快のミッシェル。

そんな二人の様子を冷ややかに見つめている存在にミッシェルは未だに気付かなかった。



ケヴィンのリードで踊るミッシェルは完璧な淑女宛らだった。

ダンスも完璧な上に何処からどう見ても女性そのものである。

楽しそうに微笑み合う二人は『恋人?』と思う程に息が合っていた。

既に婚約者のケイティと一曲踊り終わっていたアイザックはその流れのままジャクも交えて三人で談笑していたのだ。

ダンスを踊り始めた二人を三人が各々の思いで見ていると、ミッシェルが顔を赤くしながら何か話をしていた。

一旦無言になると二人は見つめ合う。

そしてケヴィンがミッシェルの耳元で何かを囁いた途端にミッシェルは耳まで赤くしたのだ。

「何だ?あれって見方によると恋人じゃないのか?」

ジャクはアイザックの方を見ると本当に唯の幼馴染?と問う。

「幼い頃から兄妹の様に育ったと言う話だ」

アイザックはしらっとそう述べた。

間違ってはいないぞ。

本当の兄妹なんだから。

ミッシェルとの約束がある為に本当の事は言えないけどね。

嘘臭いな。とジャクがアイザックへ訝しげに言う。

そんな二人の会話を聞いていたケイティがぎゅっとドレスの袖を握っていた事に誰も気付かなかった。

曲が終わるとミッシェルとケヴィンはアイザック達の方へとやって来た。

相変わらずケヴィンはミッシェルの腰に手を添えている。

「今日はお招き頂きありがとうございます。私、不肖ケヴィン・ラハンはラハン家を代表しましてアイザック殿下にご挨拶させて頂きます」

深々と礼をしながらケヴィンは口上する。

それに合わせる様にミッシェルも礼をとる。

「そんなに畏まらなくて良い。此方の茶番に付き合わせたのだから。礼なら此方がせねばなるまい」

アイザックは相変わらずの王子様スマイルで受け答える。

「それでは私の役目も終わりましたのでミッシェルは殿下にお願いし、私は夜会を楽しませて頂きます」

そう言うやケヴィンは深々と礼をするとそのまま食事をするスペースへと消えて行った。



一人置かれたミッシェルにケイティが挨拶をする。

とても複雑そうな笑みをしながら。

ミッシェルも形式ばった挨拶を交わすのみでそれ以上の会話はなかった。

もしかしてアイザックとの仲を疑われているのでわ?とミッシェルは勘ぐる。

そんなミッシェルにお構い無しと、ケイティはどこか哀愁を漂わせつつアイザックの方へと視線を移した。

「それではアイザック殿下。お友達がいらした様ですので私はそろそろ戻りますわね」

ケイティは深々と礼をするとそのままホールの方へと消えて行った。

「宜しかったのたのですか?婚約者を戻して?」

ミッシェルはケイティに何か勘違いされたのでは?と思いアイザックへ問うてみる。

「ん?構わないよ。いつもの事だからね」

意図も容易く言う殿下。

やはり完璧な政略結婚なんだな…。

と、思っていると

「所でそろそろ次の曲が流れる様だけど、約束は覚えているかな?」

アイザックの満面の笑みに

『例の罰ゲームですか?』

と思ったのは言うまでもない。

今大好きな兄と一曲踊って機嫌が良いのに一気に気分が低下してしまう。

そんなミッシェルを見ていたアイザックは

「本当に君は大概失礼だよね。こんないい男を捕まえておいて不服そうな顔をするなんて」


は?


それ、また自分で言う?


呆れた顔をしているとアイザックに手を取られ強引にホールの方へと連れて行かれた。

何処からともなくご婦人方の悲鳴が聞こえるのは…。


気のせいではないよね。


楽しそうに微笑みながら踊るアイザックとは対象的に周りのご婦人方の嫉妬に晒されたミッシェルは心底


『勘弁して下さい殿下』


と言う気持ちだった。



アイザックは踊りながらふと思った。

密着する事の多いワルツ。

腰に手を当てると男とは思えない位に細い。

そして、軽い?

手も柔らかいし『こいつ本当に男か?』と思ってしまう。

何処からどう見ても女性だ。

夜会巻きに髪を上げた為にうなじが露になり細く白い首筋が見てとれた。

アイザックは男と思っている相手にドキリとした。

男にしては小柄なそれは…。

まぁ15歳なのだから、まだまだ成長期と言われればそれまでだが…。


「綺麗だな…」


何気にぼそりと声が出ていた。

「え?」

何の前触れもなく発せられた言葉にミッシェルは耳が追い付けず聞き返していた。

アイザックは自分の失態に気付き少し顔を赤らめると

「何でもない」

と、アイザックには珍しくそっけない態度で応えた。

ミッシェルは思わず瞬きをする。


何?


何て言ったかは分からないけど、何か拗ねているアイザックって可愛い。

ミッシェルは思わず笑んでいた。

そんなミッシェルに一瞬アイザックは見惚れる。


何?

自分?

ギャプ萌え?


アイザックはそんな自分の変化に気づかない振りをした。

曲が終わるとアイザックはミッシェルを伴いジャクの所へと戻って行った。

アイザックの次にジャクと踊る事になっていたミッシェルだったが、何かこのままジャクと踊らせるのが嫌になったアイザックによって、そのまま3人で食事をしながら談笑をした。


ええとても高尚な談笑でした。


近付く貴婦人達が声を掛ける事も出来ない位に。

そう今アイザックが抱えている貿易について話し合っている3人の会話はとても夜会と言った雰囲気に似合わないものでした。

あまりにも熱弁してしまい。

自分が今ドレス姿だという事も忘れていました。

はたと気付くと夜会も終盤と言う所でした。

「そろそろ終わりだね。今日はとても楽しい夜会だったよミッシェル。また宜しくね」

アイザックはいつもの王子様スマイルを炸裂しながら恐ろしい事を宣う。

しかし、弱味を握られている私に逆らう事も出来ず。

「はい。是非」

既に棒読み状態である。


嘘でしょう。

4時間も談笑って…。

そう言えばお兄様は?


兄の事に気付き辺りをキョロキョロしていると、とても清々しい顔の兄が此方に向かって歩いて来る。

「ミッシェル。そろそろ私達もおいとましようか」

ケヴィンはアイザックへ礼をするとミッシェルへ手を差し出す。

私も兄にならいアイザックとジャクへ礼をし退出の挨拶をする。

「ではまた来週を楽しみにしているね」

何処までも王子様スマイルのアイザック。

ふと不敵な笑みを浮かべる。

まさか、また嫌な事思い付かないわよね。

ミッシェルはそろりとジャクの方を見ると、お手上げと言う風に肩を上げる。




お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂いたら幸いです。

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