忍び寄る敵12
朝食は昨日と同じ部屋で同じメンバーで摂っていた。
「昨夜チャーリーには強力な自白魔法を叔父に掛けて貰った。どうやら任務の失敗の報復を恐れてあの様な強行に出たらしい」
リアンはそう言いながら厚切りのベーコンを頬張る。
「チャーリーが知っている計画は、昨夜の内に味方が十数人侵入し今夜の夜会でトウワの姫君を襲う。その時に偶然居合わせた帝国の大使が見事救出」
「帝国の大使?そう言う話は聞いていないが」
アイザックは眉間にシワを寄せながらリアンの話を遮る。
「既に国内に入っております。叔父の張った結界を昨日の午前中に通過したと昨夜叔父本人より話がありました」
リアンはそう言うとケヴィンの方を見る。
ケヴィンは頷き話の続きを始めた。
「昨夜王宮に忍び込もうとしていた18名を城外で捕捉。そのまま尋問をしております」
「どうやって捉えた?外の仲間に気付かれているのでは?」
ジャックが怪訝な顔でケヴィンを見る。
「それに付きましてはミッシェルが二重の条件付き結界を張っていたので大丈夫でしょう」
ケヴィンはそう言いながらスープを口に含む。
「二重?」
アイザックの声にそれまで食事に徹していた私が説明する。
「外側の結界には敵意を持つ者が侵入した場合、その者が頭に浮かべた通りの光景が外に見える様に隠匿と幻影の魔法を練り込ませています。又、一旦侵入した者が悪意ある者の場合は結界と結界の間から出れない様にしました。その場合相手の位置や人数が解る様にケヴィンお兄様へ使い魔が連絡に行く様に内側の結界に魔術を練り込んでいます」
其処まで言うと一旦言葉を区切る。
「但し、その効力は昨夜限りです。流石に持続させるには魔力が足りませんから」
苦笑いするミッシェルに、其処まで高等な結界を張るだけの知識が何処から来るのか疑問が生じてしまう。
そして、ミッシェルの魔力値を今更ながらに思い出す。
複雑な面持ちでミッシェルを見るアイザックは、何かを諦めたかの様に一つ息を付いた。
「まず、これからの我々の動きがですが、昨日に引き続き殿下には今日一日ミッシェルを付けます。ジャック殿には我々と共に捕らえた者達から聞いた情報を整理して今夜に備える策を高じてもらう。それで宜しいでしょうか?殿下」
リアンはそう言うと既に決定事項なのにアイザックに問い掛ける。
「それで構わない」
何処か疲れた様にアイザックは相槌を打つ。
「ケイティ様は予定通りに王妃様と夜会の準備をお願い致します。護衛にはケヴィンが付きますが、王妃付きの護衛もいますので安心して下さい」
リアンの言葉にケイティはニコリと頷いた。
基本的に国王、王妃、王大使には専属の護衛ご付く。
それで言うと第二王子のアイザックにはそう言う存在がいない。
故に自分の身は自身で守らなければならないのだ。
「殿下。呉々も言っておきますが」
「リアンもしつこいな……分かっている」
そう言ってアイザックはため息を吐いた。
「ミッシェルはお前のものなのだろう」
苦笑しながら言うアイザックにリアンかを「ご名答です」と笑いかけた。
この前からこの二人は何を言っているのか……。
本当にそれにつきた。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




