間休 アイザック3
たまにそれが夢だと分かる時がある。
夢と言うものは正直で、自分の見たいものを見たい様にと見せてくれる。
たとえそれがどんなに現実離れしていても、夢の中ではまかり通ってしまう。
そう。
たとえ本来は男でも、女の姿で自然と振る舞う。
あの夜会の夜に見たままのミッシェルが私の隣を歩いていた。
「アイザック?」
そう尋ねて来るミッシェルはいつもの凛とした佇まいではなく何処と無く儚げで私の庇護欲を一層掻き立てて来る。
そんなミッシェルがふと目を伏せる。
長い睫毛が瞳に影を落とし寂しそうに私を見た。
「……私とケイティどちらが好きなの?」
潤んだ瞳でそう問い掛けて来る。
グッと来た。
自分の夢なのにあり得ない位の破壊力。
だから、夢だから正直に言っても差し障りない。
そう思いミッシェルの頬を撫でた。
「ケイティ嬢とは政略結婚だ。そこに愛などお互いにない」
そして触れるだけのキスをする。
不思議とその唇の感覚はやけにリアルに感じられた。
「ケイティ嬢にはどうやら好きな男性がいる様なのだ。以前からジャックが差し向けている間者から報告が上がっている」
そう言い更に唇を堪能する。
君が女だったら良かったのに……。
夢は自分の欲望に忠実な対応を示す。
「私がもし女だったらお側に置いて下さいますか?」
欲しかった言葉そのままに紡がれるミッシェルの声に思わず歓喜してしまう。
頭脳優秀、魔術も剣技も一流、世界の情勢にも通じていて良き領主になるだろう……って、あれ?
普通そこは『良き妻』ではなかろうか?
そう思い頭が混乱してしまう。
確かにミッシェルは非の打ち所もない程に優秀で、将来有望。
きっと出世する事間違いなしだ。
こんな男がいたら、爵位が無くても世の令嬢の引く手数多だろう。
今なら黄色い悲鳴を上げる令嬢方の気持ちが分かる。
それでも離したくない。
そう思いぎゅっと抱き締めた。
確かな温もりを感じて心が安らぐ。
「……ック……………アイ……ザック……」
遠くから声が聞こえて眠い目をそっと開けた。
お読み頂きありがとうございます。
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