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兄にドレスの事バレました

またもやお約束な展開です。

楽しんで頂けたら幸いです。

「私、夜会に参加した事ないのですが」


デビュー前なのだから当たり前なのだが、王族となると近しい者の誕生会等にはデビュー前からでも参加しているらしい。

アイザックもジャクも「慣れれば大した事ないよ」と言ってくる。

そんな私の言葉を意図も容易くアイザックはいなしてしまう。

「うん。大丈夫。ジャクがエスコートするから、彼のリードに任せておけば良いよ」

まさかの全てジャクへの丸投げである。


当のジャクは不服そうにアイザックへ意見する。

「アイザック。別にエスコートする令嬢がいなくても大丈夫ですよ」

あくまでも穏便に。


しかし、ジャクの言い分をアイザックはスルーしてしまう。

見かねて私はジャクへ助け船を出す事にした。

「あの。ジャクには婚約者がいらっしゃいましたよね。彼女じゃダメなんですか?」

正論で攻めたつもりが、ジャクはため息混じりで説明して来る。

「実は語学留学と証して今は国外に居るんだ。私が卒業するまでには戻って来る事にはなっているんだけどね」

卒業までって大分長いよね。

遠距離恋愛にならない?

寂しくない?

それって大丈夫なの?

真面目に二人の事を心配してしまう。

「それは寂しいですね」

取り敢えず同情めいた事を言っておいてジャクの好感度を上げておこう。

切な気に言ってみたものの

「いや。どうせ夜会の時にしか顔を合わせていないから」

そこはもっと会ってあげましょうよ!と突っ込みを入れたくなってしまう。

とても淡白な回答ありがとうございます。

正に面倒のない綺麗な政略結婚なのですね。

正直相手のご令嬢へ同情してしまいます。

故の放置プレーですか…。


では次の手だ。

私はキリッとアイザックの方へ視線を向けた。

「しかし私には夜会に着ていく女性用のドレスがありません」

悲しい顔をしつつナイスアイデアと自分を誉めてしまう。

どうよ。

これなら無理だろう。

「まぁ男なんだからドレスがある方が可笑しいだろう。それは私からプレゼントさせて貰うよ」

アイザックはさらりとにこやかに宣言する。

だって面白そうだからね。

と、心の声が聞こえてきそうです。殿下。

「今週の休みにでも君の屋敷に採寸に向かわせるよ」

いらない世話だ。

と思うものの「ありがとうございます」とだけ述べる。

何せ私には拒否権がないのだ。

これも秘密を握られてしまった私の弱み。

お父様の馬鹿‼と言ってやりたい。

そんな気持ちを押さえつつ、またもや正論で攻める。

「でもアイザック。貴方には婚約者がいるのに私が夜会に着て行くドレスを頂いても良いものでしょうか?」

よし正論だぞ。

と心の中でガッツポーズをとる。

しかしアイザックは何も気に止める事なく

「余興と娯楽には金が掛かるものだろう?男友達に洒落でドレスを贈ったからと、私の婚約者が怒るとは到底思えない」

と宣った。

は~左様で。

ジャクは頭を抱えつつミッシェルに同情の眼差しを向けたのは言うまでもない。




*******



週末の休日にアイザックの宣言通り王家御用達の服の仕立て屋が屋敷に採寸を図りにやって来た。


「とうとう貢がせる男が出来たか?」


次兄のケヴィンがからかう様に言ってくる。

兄をキリッと見据える。

今日はたまたま非番だった次兄がたまたま家に戻っていた。


何と間の悪い…。


私は兄にざっくりと事のなり行きを説明すると「面白い事になっているね」と興味深く聞いていた。


いや。


全然面白くないんだけど…。


採寸が始まると仕立て屋の方々が訝しく眉を潜める。

「どうかしましたか?」

何か不備があったのだろうか?と問い掛けると。

「申し訳ございません。男性とお伺いしておりましたので…」

申し訳無さそうに採寸をしていた女性が理由を話す。

そう言う事か。

確かにドレスの採寸に来て、その対象が男性だった場合驚くから事前に話が合って当たり前か。

納得である。

因みに本日の私の服装は兄達のお古をお借りしていた為に一種の男装の麗人バリに女性達を魅了していた。

「ごめんなさい。殿下は私の事を男性と思われておりますの。面白そうなので本人が気付くまで内緒にしていてくださいましね」

努めて一番綺麗に見える様に笑いかける。

兄達程ではないが私なりに変なフェロモンを出してみた。

採寸をしていた女性達は一瞬で魅了された。

腐っても公爵家令嬢、侮るなよ。

しかし、下着姿で魅了出来るとは、私も強ち捨てたものでもないな!と自画自賛してしまう。


採寸は小一時間位で終わったが、ケヴィンにより「呉々も内密に」と本日いらした女性達に口止めを忘れない。

お兄様…何か凄いフェロモンが出ているのですが…。

兄に魅了された女性達はポーっとしながら公爵邸を後にして行った。


「どんなドレスが出来るか楽しみだね」

兄は何か悪戯めいて楽しそうに言う。

こう言う子供っぽい所は相変わらずなのだ。

「2週間位で出来るそうですので、出来映えを見て頂けますか?」

「ん~当日見せてもらおうかな」

「当日ですか?」

「そう当日」

「行く時は私にエスコートさせてくれない?」

「えっと…」

お兄様…またしても変なフェロモンが出ております。

「ファーストダンスは私と踊ってくれるよね」

うっ…。

想像しただけで鼻血が出そうですお兄様。

私は観念して「殿下に許可を頂きます」とだけ言った。

因みに今年18になるケヴィンにはまだ婚約者がいない。

縁談は色々来ている様なのだが、如何せん長男と異なり次男ではそれ程選り取り見取りとはいかないらしい。

どうも兄には密かに好きな女性がいるようだ。

縁談に上らないと言う事は兄の片想いなのだろうけどね。

本当に兄妹じゃなきゃ私が嫁に行っているのに。

ハァーとため息をつき。

今度の夜会、女装するご褒美に兄と一曲踊れると思うともう涎ものです。

絶対殿下から許可をとるぞ!と心に誓ったミッシェルであった。



お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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