忍び寄る敵6
アイザック視点での話になっております。
宜しくお願いします。
ミッシェルを抱き上げて螺旋階段を降りる。
自身の胸に埋もれるミッシェル。
本来なら有り得ない光景なのだが、混沌とするミッシェルが物凄く可愛く見えてしまう。
そして、不謹慎かもしれないが腕の中に留める事のなんて安心感。
「ここまで来ると重症だよな」
多分これは好意に近いのだろう。
婚約者のケイティ嬢には特に何の感情も湧かないが、ミッシェルには色々な感情が呼び起こされてしまう。
王子教育の中で感情コントロールや表情のコントロール等もやっていたが、ミッシェルには不思議とどれも上手く行かない時がある。
これが友情と言うものなのか、はたまた人目には出せぬ感情なのか。
未だに恋を知らないアイザックには判らない感情だった。
ただ分かる事と言うと、ミッシェルが他人と親しくしているのを見ると苛ついたり、自身に寄り添ってくれると嬉しいという事。
先程など手を無理矢理離された時は、もの凄い焦燥感に支配された位だ。
多分これは身分に関係なく親しくしてくれている友人に対する独占欲なのだろう。
ジャックは従兄弟だからそういう対象ではないが、血筋抜きにしたら初めて出来た友だから。
だから殊更にミッシェルに対して独占的になってしまうのかも知れない。
そう思い抱き上げる手に力を込める。
しかし、何て軽いんだろうか。
思わずアイザックは眉をしかめた。
先日、ジャックの妹12歳にお姫様抱っこを要求されてやってみたけれど、これより断然に重かった。
(本人体重+ドレス(宝石・ビーズ付き)+頭の装飾(リボン・宝石・羽飾り・着け毛)+アクセサリー+ヒール(ビーズゴテゴテで多分50㎏は優に越えていると思う)
それに比べてミッシェルの軽さ(シャツとズボンとベストに革靴細身の女子です)本当に食事を摂っているのか疑問である。
昼食等は何時もデザートに重点を置いている様だし……。
思わず将来のミッシェルの家族模様に頭を抱えてしまった。
あんなデザートばかり食べる父親とか……有り得ないな。
家族団らんを創造して見ると、何故か奥さんの顔が想像出来ない。
って言うか、想像しようとすると何故かムカつく。
もうこの話題はなしだ。
そう頭を振って更に階段を降りて行く。
もう直ぐ下に降り切ると言う時に塔の入り口の方から人影がチラリと見えた。
思わず立ち止まり相手の気配を探る。
分かるのは三人程の人間だ。
多分私を見張っていた工作員達だろう。
今の自分はミッシェルを抱き抱えていて両手が塞がっている。
狙うなら絶好の機会だが、明日の事もある。
下手に今日動いて明日の警備が厳しくなるのはあちらとて避けたい所だろう。
そう思い更に階下へと足を進めた。
するとその時ミッシェルが身動ぎする。
「なんだ。起きたのか?」
うっすらと目を開けたミッシェルは何処と無く不機嫌な様子。
「アイザック。私はおんぶと言ったのに」
機嫌悪くそう言うミッシェルに『あぁ、そうだったな』と思い出す。
「この方が楽なんだ」
取り敢えず誤魔化しておく。
「目が覚めたんだね」
倒れたのは魔力切れではなかったのか。
魔力切れなら当分起きないと思っていたのに……残念。
そう思いミッシェルに問うと
「結構綿密に練らなければならなかったので、頭の方がキャパオーバーしそうでした。少し休めたので大丈夫です。……所でアイザック」
ミッシェルはそう言うと物言いた気に見つめて来る。
決して衆道ではないが、相手がミッシェルならそれもかまわないかと思ってしまった。
じっと見つめるその唇が、ゆっくりと開くのを何となく見つめていた。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。




