忍び寄る敵4
ケヴィンから次々と不穏な報告がされているなか、兄のリアンだけは食事を進めていた。
いや……兄だけではなく。
私も話を聞きながらケーキを頬張っていた。
斜め向かいのジャックがたまに信じられない者でも見る様な目で私達兄弟を見ているけど。
腹が減っては戦は出来ぬって言うでしょう。
『食えるときに食べる』が我が家の家訓と言っても差し支えない位には我が家の人間は食べる事に意地汚い。
って、言うか。
今喋っていない者で食事を全然していないのはジャックだけだからね。
多少の差はあるけれどケイティだって食べているから。
メインディッシュ食べ終わってないのってジャックだけだからね。
マジにそう思いながら更に手を伸ばす。
ケヴィンの説明が終わるとリアンが優雅に紅茶を飲みながら補足を始める。
「工作員の方は既にこの城に浸入しています。多分第一波は今夜浸入して来るでしょう」
「それは不味いな」
アイザックは顎に手をやり思案する。
「来賓客室の方の警備はいつもの2倍にしてあります」
ケヴィンが更に報告する。
「場内も警備を増やす事にはしているのだが、何分駒が少ない。判断しかねるグレーゾーンの騎士もいるものでね。下手に少人数で出会って戦力を削がれてもかなわないから今夜の浸入はある程度目を瞑る」
リアンはそう言うと私の方を見た。
「魔術師団長の叔父の結界はこの国全体を覆うのに使用している為に、城の結界は副団長が張ってはいるが……叔父の話ではどうもきな臭い様なのだ」
リアンの意図する所など容易く判ってしまう。
つまり、叔父の代わりにお前が張れと言う事らしい。
趣旨が判れば更に追い討ちをかけるようにデザートへ手を出す。
集中力には糖分が大事だからね。
ひたすら食べだす私にリアンは微笑む。
『察しの良い妹で』
リアンは一人ほくそ笑む。
アイザックもその様子を見て何か納得したのか
「ミッシェル。食後に約束の場所へ案内しよう。あそこからなら城の敷地が一望出来る」
そう提案して来た。
ほら。
やっぱりアイザックはアホじゃないでしょう。
そう思い兄達の方を見るとニコリと微笑まれた。
「では、ミッシェルの事は今夜は宜しくお願いしますね。アイザック殿下」
何か含みのある様なリアンの言い方だが、アイザックも
「ええ。今夜は私がミッシェルの保護者ですから」
と意味のわからないやり取りをしている。
保護者って父兄の事だよね。
何言っているんだろかアイザックは。
まぁ。
城の敷地が一望出来るなら結界もやりやすいけどね。
そんな私達のやり取りをケイティは楽しそうに見ていた。
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