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忍び寄る敵1

「殿下。それは私の大事なミッシェルなので此方に頂いて宜しいでしょうか?」

リアンが慇懃に手を差し出しながらそう言うと

「このままベッドまで運ぶ」

とアイザックは不貞腐れた様に言う。

そっとベッドへ下ろされた私にリアンが

「何時もの薬を作って来る。午後はここで休んでいなさい」

そう言って席を外した。

リアンの言葉にアイザックが怪訝な顔付きになる。

「お前持病があるのか?」

とアイザックは心配そうに聞いて来た。


持病?かな?

女性特有の。


「薬湯を飲んでおとなしくしていれば時期に良くなります。ご心配おかけしました」

そう言って礼をする。

これで下手な言い訳で試合を逃げずにすむ。

「治らない病なのか?」

心配そうにアイザックに更に訪ねられる。

確か前に母に聞いたら母も昔は生理痛が酷かったが、お産をしたら軽くなったと話していた。

乳母や古参(こさん)の侍女等に聞いてもその回答は多かった。

多分私もそうなのだろう。

かと言ってアイザックに「子供を産めば治るから」なんて言えない。

未婚の男女がする会話にも思えず。

「大人になったら治る人がいるらしいので」

そう曖昧に答えておいた。


「あの。アイザック。午後の授業に行って下さい。私のせいで不参加なんて……」

困った様にそう言うと、何故か抱き締められてしまう。

「私の試合相手はミッシェルだよね。君を置いて私だけ行ってどうするの?」

「どうするって……。それでアイザックの不戦勝で模範試合は優勝ですよね」

そう言うとアイザックは()も嫌そうな顔にはなる。

「私の嫌いな言葉だな。しかし……」

そう言うとアイザックの息が首筋にかかる。

「二人で一緒に不戦敗なら素敵だと思わないかい?」

どことなく楽しそうなアイザックの声に

「思いません」

即決していた。

「何だ。つまらないな」

そう言いアイザックは私から離れる。

「今日のは色々と貸しだから」

そう言って立ち上がる。

「授業をサボるのも嫌いだから。先生には私から話をしておく。ミッシェルはゆっくりと休む様に」

アイザックは私の頭をそっと撫でながらそう言ってイタズラっぽく笑う。

そして医務室を後にした。


「………………」

ぼーっとしていた私は兄が戻って来た事ではっとする。

「ミッシェル。何時もの薬湯だよ」

そう言って差し出して来る。

「ありがとうございますお兄様」

そう言って早速薬湯を飲み込む。

「ところで、お兄様が何故こちらに?」

リアンは表向きは普通の文官だが、裏で色々とやっている事も知っている。

「ん~父から言われてちょっとここの内部調査を」

「はぁ……」

内部調査ね。

胡散臭い事この上ないな。

「ミッシェルも丁度良くアイザック殿下と仲が良い様なので、殿下の身辺警護を頼むよ」

「それって……」

まさか……そう思い兄を見れば

「ちょっと王権反発勢力に動きがある様でね。ここの中にも構成員がいる様なので調査をしている。生徒だからと油断するなよ」

リアンは穏やかにそう言う。

「判りました」

私はそう言いながら薬湯を再度すすった。

お読み頂きありがとうございます。

何故かアイザックが不憫に思えてしまう今日この頃。

私だけの気のせいかと考えてしまいますが、たまにはアイザックにもご褒美があっても良いかな……なんて目論んでいます。

また読んで頂けたら幸いです。

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