模範試合9
本日最後の試合が開始される所だ。
つまり私とレイモンドの試合だ。
先生の合図の前から臨戦状態に入っている私達。
「ミッシェル。君に私の方が強い事を教えてあげるよ」
自信あり気にそう宣言するレイモンド。
「井の中の蛙というものを教えてさしあげましょう」
私はそう言って不適に笑う。
そんな私達の会話を聞きながら先生は大きな溜め息を吐いた。
「それでは試合を開始する。はじめ」
先生の号令と共に、同時に一歩を踏み出す。
瞬間的に複数の魔法を展開させる。
勿論レイモンドも複数の魔法を展開して来る。
「遅い」
私はそう言うとレイモンドへ一振り浴びせる。
白刃に乗せた魔法は先日のそれよりも威力を上げている。
ズシリと剣を叩き凪ぎ払う様にする。
レイモンドは私の雷属性に相性の良い土属性の魔法を剣に帯させているが、如何せん此方の方が魔力は上なのだ。
容易く魔術ごと叩き落とす。
ガキーンと音を立てて体制を崩したレイモンドへ、追い討ちをかける様に風魔法で叩きのめす。
一瞬にしてレイモンドの体が宙に舞い、バランスを建て直す事なく地面に落ちた。
「勝者ミッシェル!!」
先生の声が高らかに宣言する。
「あれだけ言っていた割には他愛ないですねレイモンド殿」
冷めた目付きでレイモンドを見据える。
屈辱的に顔を歪ませたレイモンドは私を見るなりキリリと親の敵の様に睨み付けて来るが、それは一瞬の事で直ぐ様いつもの顔に戻っていた。
「いや~。参りましたね。流石総代を努めただけの事はある」
そう言いながらレイモンドは立ち上がると服に付いた土を払い落とす。
先程の顔が本当に嘘の様な変わり様に私は無言だった。
多分私が兄に負けてもあんな顔はしない。
だから尚更レイモンドが形だけのプロポーズをしたのだと思った。
ーーと言うか、あれが果たしてそうだったのか疑問である。
勝敗が決した事で明日の決勝の組み合わせが発表された。
明日の試合は今日の決勝の組み合わせ以外と当たる。
つまり、明日の相手はアイザックとジャックと言う事になる。
一応アイザック達の所まで戻るとジャックが苦笑しながら私に宣戦布告して来る。
「今日の友は明日の敵?と言うが、正にそれだな。明日は容赦しないからなミッシェル」
ジャックのその言葉にアイザックは胡乱気に見る。
「お二人の胸をお借り致します」
そう言い深々とお辞儀をする。
それに対してジャックがふんぞり返り「何、構わないよ」と言う。
対してアイザックは「お手柔らかに」と微笑む。
たまに思うんだけど、アイザックってドキリとする笑み方をする事がある。
これがそこらのご令嬢なら勘違いすると思うんだよね。
いつかそれとなく注意しておかなければ。
私はそう思い変な闘志を抱いたのだった。
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