模範試合4
さて、あの衝撃のお泊まり発言の翌日。
午後からやっと最終グループの模範試合となった。
はっきり言って昨日試合をしていたら、動揺の余りとんでもない事件を起こしていた自信がある。
一晩頭を冷やした私は本日は至って平常心を保っていた。
「負けるなよミッシェル」
ジャックがアイザックの隣でやじる様に応援している。
一瞬アイザックと目が合う。
物言いたげなその目に、昨日の言葉が反芻する。
審判の合図と共に礼をすると剣を構える。
私は剣に魔法を幾重にも重ね掛けする。
『重量軽減』
『加速』
『重圧倍増』
『雷』
更に自身へ『身体強化』
5つの魔法を同時展開させる。
何せ私が今から相手にするのはクラスでも出来る子ちゃん3名なのだから。
それに男と女では腕力も体力も違う。
体力温存の為に無駄に多い魔力を最大限に使う。
故に試合は1分せずに勝敗を別つ。
「圧勝だな」
アイザックの隣でジャックが汗を流しながらそう呟く。
『まぁ。当たり前か』
アイザックはそう思いながらミッシェルを眺めた。
剣技は既に舞の様でさえあり、全ての試合をただ見惚れていた。
自分の力業の様な所のある剣とは全く異質なるそれを『綺麗だ』の言葉だけで見入る。
「これはちょっとヤバイかもしれないな」
隣でぼやくジャックに『ちょっと?』と思ったが、言うまでもない。
クラスでも有能な3人を負かした時点で勝者は決まった様なものだ。
多分他の2名でも勝てないし、今の自分でも難しいだろう。
アイザックはそう思いギリリと拳を握る。
後半年やそこらで追い付けるのか……と。
一月に及ぶ卒業試験は半年後から始まるのだ。
一年の最後の一月は言わば同期生の社交の場と就活の月。
今の自分で追い付けるか……そう思うといてもたってもいられない。
ライアンとの訓練ではミッシェルに根本的に勝てない様な気さえして来る。
主席卒業の為には剣術の成績は重要だ。
いっそうの事、ミッシェルと毎日稽古をした方が良いのでは?とさえ思ってしまう。
「それも魅力的だな」
ボソリと呟くアイザックにジャックは思わず小首を傾げた。
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