結局改善していませんよね3
どうしようか……と固まっている私を他所に兄が皆に食事を勧める。
はっ。
いかん。
今日は私達兄妹がホストなのに。
気持ちを切り替えて兄に習い皿に軽食を取り分ける。
既にアイザックとジャックには兄が取り分けた皿を手渡していた為に、お茶の時の様に再び私がケイティに食事を差し出す。
決して学習能力が無い訳ではないが、再びアイザックに睨まれてしまう。
そんな私とは対照的にケイティが兄に食事を取り分けて渡している時には無反応。
おかしいよね。
普通そっちの方に反応しない?
何でさっきから私がケイティに世話をやくと睨まれるんだ?
納得いかない。
私は無言で食事をする。
「このサンドイッチはマスタードが効いていて美味しいな」
アイザックが兄の方を見て食事を誉める。
「ありがとうございます。シェフも殿下が喜ばれていたと知ればこの上ない喜びでしょう」
兄が仰々(ぎょうぎょう)しくそう言うとアイザックは「ふむ」と頷く。
社交辞令も大変なものだ。
お互いに。
そう思い溜め息を吐くとケイティがそっと果物の中から苺を取りミルクをかけてそっと差し出して来た。
「さっきのお返しです。美味しいですよ」
ケイティはそう言うと自身も苺を頬張る。
苺はあまり大きくないので一口で入る大きさだ。
私も苺を口に入れると甘酸っぱい苺の味覚が口の中に広がる。
「本当に美味しいね」
そう言い私はケイティに向かい笑顔で応えた。
それからは男達の事はそっちのけに二人でデザートを堪能する。
お互いのお皿に「これも美味しい」「あれも美味しい」とお互いに取り分けながら楽しく過ごす。
なんだか従来の友の様な感じさえして来る。
故に、殿下達は兄が一人で接待してくれていた。
本当にごめんね。
感謝です。
一通りお腹が膨れると、私はアイザックと共に散策と言う名の(お互いの)尋問タイムに入っていた。
兄とケイティとジャックは食後のお茶をしているが、私とアイザックは湖畔の縁を歩きながらお互いの不平不満を漏らしていた。
「ミッシェルにはあれほど忠告したはずだよね。ケイティ嬢は私の婚約者なんだと」
威圧的な物言いのアイザックに私も負けず劣らず言い返す。
「ケイティの事はあれほど殿下にお願いしましたよね。なのに何故今日こちらにケイティがいらっしゃたのですか?」
不平不満なら此方の方が上だ。
「本当なら今日は兄と二人、水入らずで至福の1日を過ごすはずだったのに」
既に恨みがましくなってしまうが、かまうものか。
「ふん。ブラコンもここまで来ると重症だね。そんなんじゃ、お前達兄弟の所に嫁に来る奇特な令嬢はいないだろうよ」
アイザックは何時ものスマートな嫌味ではなく、今日に限って嫌に嫌味たらしい。
「私達兄妹の事情に入って来ないで下さいませんか?それよりも、ご自身の婚約者の操舵位きちんととって下さいよ」
『もう早く連れて帰って欲しい』
暗にそう言外に言えば、アイザックは眉間にシワを寄せる。
「言われるまでもないな。ここから戻ったらケイティ嬢を連れて直ぐにでも帰るよ」
そう断言してミッシェルを置いて元の場所へと戻っていった。
完全に怒らせてしまったな……。
大分言い過ぎたかも……と後悔してしまった。
一度出てしまった言葉は取り返しがつかない事だけは痛いほど身に染みた。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。