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王子様におネエ系と思われる

今回は少々長いです。

すみません。

それでも最後まで読んで頂けたら幸いです。

実は私は超が付く程のブラコンで、この日は大好きな次兄に会える事で特に舞い上がっていた。

だってさ~お兄様はとっても格好良いんだよね。

私の次兄のケヴィンは紫掛った白銀の髪を後ろで一つの三つ編みに結わえていて、紺碧色の瞳はキリリとしていて、精悍な顔つきに良くあっており、声も男らしい感じのテノールで聞き惚れてしまう様である。

そう、私の理想の王子様そのものなんだよね。

本当に兄であるのが残念で仕方ない。

だって、実の兄では結婚出来ないじゃない。

それくらい私はブラコンなんです。



本日の兄は現役の魔法騎士の第三分団長として数人連れてきた部下と共に模範演技をして見せているのだ。

まるでダンスでも踊っているかの様な優美な流れの剣技に、数名しかいない女生徒達の黄色い歓声が上がる。

魔法騎士とは剣に魔法を乗せて戦う騎士の事で、剣に魔法を乗せられるかどうかが魔法騎士になれるかどうかと言う事らしい。

因みに剣に魔法を乗せられない騎士は魔法剣士と言われ魔法騎士より格が下になってしまう。

通常の魔法騎士は1つから2つの魔法を剣に乗せるが、今の兄は3つの魔法を乗せてデモンストレーションをしていた。

士官学校に通う学生で剣に魔法を乗せる事が出来る者でも1つ乗せるだけ上等と思われているのに3つも乗せている兄の剣技に皆尊敬の眼差しを向けていた。

自慢の兄である。

皆が兄の剣技を褒め称える。

兄の事ではあったが自分の様に誇らしかった。

デモンストレーションは兄の一人勝ちで幕を閉じる。

「今のは模範演技だ。これからの精進の参考になれば良いと思う。では、それぞれ剣に魔法を乗せてみようか。手始めに軽量魔法から掛けてみよう」

兄がそう言うと皆吾も吾もと剣を構えて詠唱を始める。

本当に現金な学友達だと思いため息が出る。すると兄と目が合い思わず苦笑してしまう。

兄はそんな私を見るとツカツカと近寄ってきて

「どうした。やり方が分からないか?」

と、私の傍らまで来て、そして剣を握らせた。

「昼休み裏庭で待っている。弁当宜しくな」

小声でそう呟いた。思わず頬が紅潮してしまう。

「はい。ありがとうございます」

私はにこやかに返事をする。


私の髪は兄の髪より薄い紫かかった色で目の色も同じ紺碧色であるが、そこは男と女。顔の作りがやや私の方が線が柔らかい中性的な顔をしていた。

ふと視線を感じ辺りを伺う…が、誰とも視線が合わず気のせいかと剣を持ち直した。

その後の授業をそつなくこなしながら私の気持ちはすでに昼食の裏庭へと行っている。



その日の昼休み、私は嬉々として裏庭へと急いでいた。

教室を出る時、何故か殿下の従兄弟のジャクが話し掛けて来て時間を潰したが、その分を取り戻すべく私は急いだ。

程なく裏庭に着くと誰もいない木陰の処に兄の姿を認め思わず声が出る。

「ケヴィンお兄様」

私の声に兄は満面の笑顔で応える。

「遅くなり申し訳ございません」

私は兄の隣に腰を下ろすと持っていたバスケットを開き、てきぱきと昼食を取り出した。

「今日はお兄様に会えるとお話ししたら、料理長が気合いを入れてお兄様の好きな具材を沢山入れてくれましたの」

「嬉しいな。久し振りに好物にありつけるよ。宿舎の厨房は質より量だからね。後で料理長にお礼を言っておいてくれ」

「はい。もちろんですわ」

満面の笑顔で応える。

「では頂くとしようか」

「はい。お兄様」

私達はローストビーフと野菜の入ったサンドイッチを頬張りながら今日の模擬戦の話をしていた。

「やはり殿下は凄いな。難なく魔法を3つも剣に乗せていた」

「お兄様だって凄いですわ。本日は殿下と同じ3つの魔法しか乗せておりませんでしたが、本当はもっと乗せられる事も私は知っているのですのよ。殿下なんて目じゃないですわ」

どうよ!と言わんばかりに兄をべた褒めする私に兄は生暖かい眼差しを向ける。

「伊達にお兄様はこの若さで魔法騎士団の団長をしてはおりませんわ」

「ありがとうミッシェル。でも、あまりそう言う事を言っていると身贔屓と取られてしまうよ」

「身贔屓だなんて、そんな事ございませんわ」

顔を真っ赤にして抗議をする妹の頭をそっと撫でる。

「お前はいつも私の肩を持つのだな」

「当たり前です。お兄様は私の理想そのものなんですからもっと自信をお持ちになって」

そう言うとぽすっと兄の胸に額を当てた。

「ずっと家族で居たいです」

「それは無理だな」

兄の瞳が鋭くなる。

「それでも時間の許す限り」

家長でない私達は何れあの屋敷から出なければならない。

長兄が公爵を継げば次男の兄は父の持つもう一つの伯爵位を継ぐ事となるだろうが、女の私や妹はどこぞの貴族の元へ嫁がなければならない。

家名を名乗れない今、他の貴族と違い婚約者がいない自分。

貴族としてどうよ?とも思うんだよね 。

だってさ。

大概良い所の令息は年端も行かない内から婚約者がいるもんでしょう。

そう言う意味では『いかず後家ありき』って感じじゃない?

父も何を考えているのか。

と思う。

でも、今は父に感謝している。

大好きな兄と居られる時間が多い事に。

私は兄と楽しく昼食の時間を過ごした。

本当にお兄様は食べる姿も様になっていて自分のブラコンも大概酷いとは思うものの、久し振りの一緒の時間にどっぷりと浸っていた。

そんな二人の会話を聞いている人物がいる事に気付きもしないで…。

兄は昼食を終えると私の頭を撫でながら「頑張れよ」と一言言うと後ろの木陰の方を一瞬見ながら苦笑し、その場を後にした。

楽しい一時に余韻を残しつつ食事を終えた私はバスケットを片付ける。

不意に後ろから声が掛かる。


「君はラハン公爵家の第三子になるのかな」


後ろから嫌味を含んだ声が聞こえて振り返る。

そこにはアイザック殿下が立っていた。

「ひっ……で……殿下」

私は思いっきり顔をひきつらせる。

「お化けでも見た様な反応ありがとう」

にこやかに、けれどそれ以上に嫌な予感しかしないこのシチュエーション。

「でも驚いたな」

とても楽しそうに笑う殿下。

やっぱり嫌な予感しかしない。

背中に嫌な汗をかきながら恐る恐る問うてみる。

「何の事でしょうか」

とぼけてみるも内心無理だろうな…とも思う。

「さっき一緒にいたのは魔法騎士団第三分団長ケヴィン・ラハンでラハン公爵家の第二子。そんな彼を君は『お兄様』と呼んでいたよね。因みに女言葉だった」

ラハン公爵家の者だとばれたのみならず女である事もばれた!!ヤバイ非常に不味いよ……。

「君にそういう気があるとは知らなかったが、他人の趣旨趣向にとやかく言う気はないから安心して」

「へっ?」

何かとんでもない勘違いをされているのでは?

「同性愛者でなければ、おネエ系でも全然私は気にしないから」

そこは気にしましょうよ。と言いたくなるも私はほっと胸を撫で下ろす。

とんだ勘違いだが、やはり王子殿下は人が出来ていると安心する。

これなら私の事も内緒にしていてくれるんじゃないか、と……。

「ラハン公爵家は成人前はラハン家の者だとばれない様にしなければならないんだったよね」

私はまじまじと殿下の顔を見た。

「私にばれちゃったね。困ったよね」

何か脅迫染みてない?

そして何?この人の悪い笑みは!

本当にあの殿下なの?

「ねぇ。皆には黙っていてもらいたい?」

人の悪い笑みを浮かべながらアイザックはミッシェルに言い寄る。

「はい」

顔を引きつらせる私を、さも楽しそうに見つめながら

「黙っている代わりに、デビューするまでの半年間私の小間使いをしてもらおうかな」

アイザックは不適な微笑を浮かべて私を地に落とした。


「嫌だなんて言わないよね」


悪魔の様な眼差しを向けて、それはもうとても嬉しそうに囁く。



既に私には拒否権は無かった。



そして我思う。

殿下って……思いっきり腹黒かも……と。



読んで頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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