結局改善してませんよね1
大分お待たせしております。
執筆が亀で申し訳ございません。
宜しくお願いしますm(_ _)m
アイザックにも頼んだから週末はお兄様と水入らず!と、心楽しく朝を迎えたのに……まさかのケイティ嬢襲来。
朝食後に兄とティータイムをしていた所へ突撃して来ました。
『アイザック。失くったな。使えない王子だわ』
心の中で盛大に悪態ついてしまう。
本当なら、なかなか来ないケイティを待ちつつ兄と二人で楽しい一時を過ごす予定が……何故……。
「お約束通り参りましたわ」
淡いピンク色のアフタヌーンドレスを靡かせて嬉しそうに笑むケイティにケヴィンが直ぐ様対応する。
「先日は楽しい一時と贈り物をありがとう」
そう言うと手の甲へとキスを落とす。
チュッとリップ音を響かせるとケイティの頬を紅潮させる。
洗礼されたその所作の中に思わぬ色気が漂う。
『流石ですわ。お兄様』
ミッシェルはおもわず見とれてしまう。
そんなミッシェルを他所に機転を利かせ、自身の隣の席へとケイティをエスコートする兄。
ケイティが席に着くと直ぐ様 侍女が紅茶を差し出し会話が始まった。
「今日は天気も良いですし、ミッシェルとピクニックに行こうかと話していた所なのですよ。良ければ御一緒しませんか?」
ケヴィンはにこやかにケイティを誘う。
あ~それ、先週話していた内容だ。
さも今話していました感が凄い。
思わずミッシェルはほけ~っと考えてしまう。
「まぁ素敵ですわね」
花開く様にケイティが笑めばケヴィンは直ぐ様侍女にピクニック様のお弁当の準備をさせる。
『いつも通りそつないですわ。お兄様』
ミッシェルは兄へ尊敬の眼差しを向けた。
でも、あのアイザックが何も言わないなんて有り得るか?私は疑問の言葉をケイティに投げ掛けた。
「ところでケイティ。アイザックは今日此方に貴女が来る事は知っておられますか?」
あくまでも確認の為に聞いてみるを装って。
あれほど啖呵切って見せたのに何もしてないのでは?とも少し懸念して。
「はい。知っておりますわよ」
優雅に紅茶を口に含むと「はぁ~っ」と溜め息をもらす。
「何か手紙で色々言ってきておりますが、あまりにも一方的な言い分に『私の女友達にまで文句をつけないで下さいまし』と最後に書いてから手紙は無視してましたが、一応本日此方へ来る事は報告しておりますわ」
とても辟易したと言うように顔を歪める。
美女は顔を歪める姿も美しいのだとミッシェルは思った。
「はぁ~っ」
再び溜め息がもれる。
その辟易とした顔から余程の手紙の攻防があった事が想像される。
「はぁ……」とミッシェルから間の抜けた声が出てしまう。案外ケイティは強引な所もあるものだと驚いてもいた。
「それにしても、ミッシェルの今日の装いは眼福ものですわね」
突然の話題が変わり様と、うっとりする様なケイティの吐息が聴こえる。
「あぁ。今日の装いですね。私が着ている物は何れも兄のお古なんですよ」
本日は青を基調としたウエスト部分の引き締まった服を着ていた。
「まぁ。素敵ですわ。ケヴィン様の着ていた姿が思い描けますわね」
ちらりとケヴィンの方を見ながら頬を染めるケイティ。
『ん~。何気に私当て馬?』
思わずミッシェルは苦虫を噛み潰した様な顔になる。
「多少のリメイクを侍女達がしてくれているんです。そのまま私のサイズだと色々不恰好になってしまうのでね」
そう言いながらケヴィンはニコリとミッシェルへ微笑む。
『うっ……』不意打ちとは……。
『思わずほおけてしまったじゃないですか』ミッシェルは気合いを入れ直すとケイティの方を見る。
「侍女達が何故か気合いを入れてしまいまして、採寸と称して着せ替え人形の様になってしまう事もあるんです」
苦笑いしながらミッシェルがそう言えば一様に側に使えていた侍女達が頬を染めた。
何でしょうね。その反応は。
「まぁ素敵ですわね。私も色々な凛々しいミッシェルを見てみたいわ」
ミッシェルの温度と対照的にケイティが食い付く。
「ミッシェルなら白い生地に金糸の刺繍を施した物も素敵でしょうね」
うっとりする様なケイティの言葉にまたもや侍女達が頬を染めた。
いゃ~何か火に油注いでいるし……。
それに、発言の内容が何処の王子?と思われる様な装いに顔がひきつる。
私達の後ろで侍女達が何故か遣る気を出しているのは……気のせいではないよね。
その後ケイティが色々なパターンの装飾を述べるのを侍女達が「うんうん」と頷いて聞いていた。
『そこ。侍女は空気にならねばならんだろうが』と心の中で悪態ついてしまう。
そんな会話をしていると執事がお弁当と馬車の準備が出来た事をケヴィンに伝える。
一瞬侍女達が執事を睨んだのはご愛嬌だろう。
「準備も出来た様ですので馬車までご足労頂きます」
爽やかにケイティの手をとるケヴィン。
「はい。楽しみですわ」
さっと起立し歩み寄るケイティ。
『何だろうね。この疎外感』
ミッシェルは二人の後に続き遠い目をする。
玄関に乗り付ける様に停まった馬車にケヴィンは優雅にケイティをエスコートして乗車させ向かい合う様に座る。
『本日は私にはエスコートして下さらないんですね。お兄様』と、ため息が出てしまう。
そんな事を思いミッシェルは馬車のステップに足を掛けたその時、玄関から門まである馬車道を二頭の馬が駆けて来るのが見えた。
「げっ。殿下……」
嫌な物でも見る様な目で騎乗する人物を確認すると、その声が聞こえていたのか車中でケヴィンが嫌そうに顔をしかめる。
「やぁミッシェル。私自ら遊びに来たよ。勿論もてなしてくれるよね」
有無を言わさぬアイザックの言葉にロボットの様な動きで思わず兄を見てしまう。
情けない妹の仕草に
「仕方ないですね」
と言うと「ふぅっ」と溜め息をついてケヴィンが馬車から降りてきた。
「これはこれはアイザック殿下。この様な所までご足労頂きありがとうございます」
恭しく臣下の礼をするケヴィンにアイザックは馬上から笑む。
「何。気にするな。所で何処かへ出掛ける所だったのかな?」
アイザックは馬車を見ながら質問する。
「はい。本日は天気も良いようですのでミッシェルとその友人と三人で外を散策しながら昼食を摂ろうと思い今から出掛ける所です」
簡素にそう言う。
「折角お越し頂いたのに恐縮ですが」
ケヴィンが言い終わらぬうちにアイザックの声が被る。
「いや気にするな。我々も同行しよう。良かろうジャック」
アイザックは後ろで控えるジャックへ同意を求める。
「はい。殿下の御心のままに」
恭しくジャックが頭を垂れた。
『うわぁ。行く気満々だよ』
ミッシェルは『うへぇ』と思いながら肩を落とした。
一瞬の沈黙の後ケヴィンが似非紳士スマイルで畏まる。
「では、殿下は馬車へ。私は護衛も兼ねて馬で参りますので」
再度恭しくケヴィンは畏まる。
「あぁ。宜しく頼む」
アイザックは当たり前の様に馬から降りるとそのまま馬車へと乗り込んだ。
ミッシェルが二の足を踏んでいると車中からアイザックの声がかかる。
「ミッシェル何をしている。早く乗れ」
命令ですか……。
げんなりしながら重い足を上げ乗車する。
ケイティとアイザックは馬車の奥で向かい合い二人ともまるで人形の様に顔を作ったまま座っていた。
私はケイティの隣に座ろうとすると
「何をしている。此方に来い」
と不機嫌なアイザックの声が降りかかる。
恐る恐るケイティを見やると
「構いませんわ。ミッシェルは殿下のお言葉通りになさいませ」
つんとしながらケイティが言うが、やはり「それはちょっと」とミッシェルは思う。
「あの婚約者の前では……」
と躊躇いながら声を出すと
「そうだ。婚約者の私の前で堂々と隣に座ろうとは良い度胸だなミッシェル」
黒い笑みを称えつつアイザックはミッシェルを見る。
「まぁ。殿下には珍しい気遣いですわね」
ケイティが然も珍しい物でも見る様な目で驚きの声を出す。
何ですかね……二人の間に怖い空気を感じるんですが……。
ミッシェルがたじろいでいるとケイティが笑い出す。
「ミッシェル。私にそんな気遣い無用でしてよ。殿下の隣にお座りになって、本当に構いませんわ。勘違いされている様なので敢えて申し上げますが、私と殿下の間にあるのは『政略』の二文字だけなのです。端から私達の間には恋愛感情などないのです。そこだけはお忘れなきよう」
口調こそ強いが、ミッシェルを見るケイティの空気が一瞬和らぐ。
そして笑みを称えた顔はそう言い終わりアイザックを見とケイティの雰囲気は再び凍りついた。
や……やだ。
気持ち的には「降ります」と言ってここから出たい。
そう思うも実際は行動には出来ず、二人からの冷たい視線に観念してミッシェルはオドロオドロにアイザックの隣に座った。
ミッシェルが座ると馭者が扉を閉める。
程なく馬車は出発するが。
何……この重い空気……。
嫌だな……ここから出たいな……。
未だ会話のかの字さえ出てこない状況に冷や汗ダラダラのミッシェル。
この二人、一応婚約者なんだよね。
正直馬に蹴られてなんとやらって私嫌なんだけど……こんな時お兄様ならきっと上手く会話するんだろうな。
ミッシェルは前方を誘導しつつ警護する兄の後ろ姿を見ながら溜め息をもらした。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。