アイザック6
アイザックは執務室の机の上で大きく溜め息を吐いた。
『敬愛する(べき)アイザック殿下
先程は聡明なる殿下とは思えない様な稚拙な書簡をありがとうございます。
何度も言いますが、ミッシェル様はあの様に美しいのです。
そんな方を掴まえて男だなどといくら私でも許容しかねます。
尚、私の女友達の事まで干渉して来ないでくださいまし。
貴方の従順なる僕ケイティ・ペレッタ』
………
従順なる僕が意見するのか?
僕って言うのはもう少し謙虚なんじゃないのか?
と問えば誰も何も答えない。
これでも一国の王子。
帝王学を学び、将来は兄である王を支える片腕になると自負している。
そんな第二王子が婚約者の令嬢の舵取りすらままならないと思われるのは論外以外の何物でもない。
昨日から始まった手紙の応酬は現在までで30通。
今だかつてない程の手紙のやり取りを1日だけで繰り広げられた。
兎に角、何を言っても話が一歩通行で此方の話など取り合ってもくれない。
今まで何も言わず良好な関係を築いているものだと思っていたのはどうやら幻だったようだ。
「あのわからず屋」
本日何度目かとなる悪態をつくのも板について来た様にさえ思う。
大体自分達は体の良い政略結婚なのだから、格上でもある私に習うのが本当なのではないのか?
対等だとでも思っているのか?
ケイティが聞いたら「馬鹿にするのも大概にしなさい」と悪態つかれる事うけあいのセリフを吐く。
もう既に夜も更けてしまい、これ以上の手紙のやり取りは無駄だと判断する。
「よし、明日は直談判だ」
気合いを入れながら悶々としたまま寝床に入ったの言うに難い。
お読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。