アイザック5
夢を視た。
ケイティ嬢とミッシェルが手を取り合い私の元を離れて行くという夢を……。
「ミッシェル様。何て凛々しいのかしら。貴方が婚約者なら私は三國一の幸せ者ですのに」
ケイティ嬢は潤んだ瞳でミッシェルを見つめる。
「ケイティ……。貴女の愁いが取り除けるのなら私は何だってするよ」
そう言ってミッシェルはケイティ嬢の腰に手を添える。
『お前達。何をしようとしているんだ』
声にならない声が自身の中に響く。
「ケイティ」
乞う様に囁くとミッシェルの顔がケイティ嬢に近付く。
「ミッシェル様」
ケイティ嬢はそう言うと目を瞑る。
『お前達。許さないぞ』
何処から出たのか解らない怒気が自身を覆う。
『こんな事は許されない。お前は私の物なのだから』
誰に向けたものかも解らずアイザックは心の中で叫んでいた。
『お前は私のものだ。誰かの物ではない』
去り行こうとする二人に手を伸ばすと
「私はアイザックの『物』ではございません」
冷ややかに告げられた言葉に自身の独占欲が掻き立てられる。
「違う。あの時から『私の物』だ」
「気持ち悪いですよ。デ・ン・カ。そう言うのを何て言うか知ってますか?」
そして、その整った唇で吐き出された言葉は……
ガバリと勢い良く起き上がったアイザックは、自信の額より大粒の汗が落ちる。
ハァハァと息を切らせて自身の口を右手で押さえた。
何て夢を視たんだ。
外を見ると薄く明るんでいる。
昨日あんな事があったからだ。
アイザックはのろりとベットから抜け出すと窓の所まで行きカーテンを開ける。
コテンと窓に額を当てると外の外気を含んだそれは、熱くなった頭を一瞬で冷やした。
「男色家って言うんですよ」
耳の中で木霊する……夢で視た言葉。
「違う。
私は決してその様な者ではない」
そう頭を降ると眼下にライアンの姿を確認する。
「こんな日は何時もよりきつい鍛練を頼もう」
アイザックはいつもの日課をこなすべく冷たくなったシャツを脱ぐと急ぎ着替え自室を後にした。
正直、あの夜会の夜からおかしい。
気付くと男であるミッシェルを目で追ってしまっているのだ。
だから、誰か私に言って欲しい。
「決して殿下は男色家ではないと……」
お読み頂きありがとうございます。
諸事情でなかなか続きを書けず申し訳ございませんでした。
これからも地道にコツコツ書いて行きたいと思っておりますので宜しくお願いします。
また読んで頂けたら幸いです。