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アイザック3

入学式当日は何時にも増して早起きだった。

何故ならミッシェル・カリスを見定めなければならないからだ。


朝の稽古も何時よりも精を出す。

カーンと言う音と共にライアンの剣が弾かれた。

「殿下。参りました」

ライアンが嬉しそうに礼をとる。

「ライアンありがとう。今日は良い一日になりそうだよ」

「それは何よりです」

あの忌まわしき屈辱の次席との結果は既に皆に知られていた。

故に学校の言葉に半ば禁句と化していた為、ライアンも今日の入学式の事には触れてこない。

全くもって有難いことだ。

「では、殿下また明日」

「ああ。また明日も宜しく」

アイザックへ深々と礼をするとライアンはその場を辞した。



既に華々しい舞台は出鼻は挫かれたが、今朝は幸先の良いスタートになる様な気がした。

「新入生総代の挨拶楽しみにしているよ。ミッシェル・カリス」

フフフと不適な笑いを出しながらアイザックは王宮へと足を向けた。


*******



新入生達は新入生総代は王子であるアイザックがやるものと思っていただけに式典の案内を見て驚きを露にしていた。

今まで聞いたこともない総代を努める彼の名はミッシェル・カリス。

カリス伯爵家の縁者だが爵位はない家系との事。

爵位持ちの子供達は一様に訝しんだ。

口々には「誰だ?」「何処の者だ?」と密かに囁き合っている。

それもアイザックを避ける様にしてだ。

『聞こえているから』とアイザックは内心舌を打つ。

あまり早く来るものではないなと思っている所へ従兄弟のジャックが現れた。

「アイザック。貴方が総代ではないとはどういう事だ」

挨拶も無しにいきなり本題を投げ掛けて来る。

まかりなりにも王子に対して不敬ではないか?と思うが、そこは公爵家三男の肩書きと王子の従兄弟という背景が物を言っていると思う。

アイザックの母はロイティ公爵の妹で小さい頃から何かと行き来していた。

ライアンから聞いていないのか?とも思うが箝口令(かんこうれい)に近い状態ではいくら兄弟でも話していないだろうという事は伺い知れる。

深いため息の後アイザックは口を開く。

「私より優秀な人材がいたと言う事だよ。国としては喜ばしいことだと思うが」

努めて穏やかにそう言うとジャックが怪訝に眉をひそめる。

「殿下に対してこんな侮辱…」

歯噛みしながらジャックは何処と無く睨む。

「いや別に彼は侮辱するつもりはないと思うよ」

努めていたって穏やかにアイザックは言うが

「今までは王族が入学する時は慣例に倣い王族が総代を努めて来たのだから、今回も譲れば良いのでは?」

と捲し立てる。

「ミッシェルから辞退したい旨の話があったが、私からミッシェルに総代をする様に手紙を送ったのだよ」

ジャックは鳩が豆鉄砲を食らった様な顔になる。

「試験結果は揺るぎ無い。ここでもし私が総代を努めたら後々口さがない者達の格好の餌食になる。変な脅しのネタにはされたくないのでね」

それも一理あるとは思うものの納得いかないとジャックの顔には書いてあった。

「それに卒業する時に総代を努めれば問題ないだろう」

それもそうなのだが…ジャックはそれでま納得出来ないと歯噛みする。

まぁ、私自身もあの成績を越えられるか怪しいものだけどね。

それよりもミッシェル・カリスがどの様な人物か見定めねば。

アイザックはそう思うと周りを見渡した。

新入生達は一様にアイザック達を意識して見ていた。

まかりなりにも一国の王子。

上手く取り成してもらえれば出世も間違いなしだ。

どうやって糸口を見つけるかと、ぎこちない雰囲気が辺りを包む。

故に、総代を努めるだろう彼がこの場にいないのは明確であった。


早く見てみたいものだな。

ミッシェル・カリス…

アイザックは入り口の方を見ていると丁度ウィルが入室して来た所だった。

その後ろに小柄な少年が付き従っている。

「彼か…」

アイザックは誰にも聞き取れない様に呟いた。


お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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