表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/50

始まり

初めまして。

初投稿となります。生暖かく見守って頂けたら幸いです。


「よくも私の婚約者を寝盗ったな」

彼は怒っていた。


金の髪は逆光のせいか光輝き、グレーの瞳はその色に反してとても熱く滾っていた。

我が耳を疑うとはこの事か!と思う。

「彼女は妊娠していると言っている」

私は固唾を飲み只彼だけを見つめていた。

「男の言い訳は聞きたくない。決闘だ」

突然怒り狂う様に現れた彼はそう宣言するや、私に自身の左の手袋を外し投げ付けて来た。


どうしたものか……。


この様子だと私の話を聞いてはくれそうにない……。


私は途方に暮れていた。


二人の感情の温度差は天と地程に激しかった。




*******





私の名前はミッシェル・ラハン、15歳。

ラハン公爵家の第三子として生を受けた。

上に兄が二人いて長男リアンは官僚として王宮に勤めている。

次男ケヴィンは魔法騎士団第三分団長をしている。

そして妹のエミリーの四人兄弟である。

因みに私は生物学上『女』である。

それも踏まえて、冒頭での決闘宣言に至った経緯を追おう。




公爵家令嬢ともなれば婚約の申し出は引く手 数多(あまた)であるだろうが、我が父は政略結婚も家名に頼る行動も余り好きではなく、公の場での子供の話も続柄だけで全て第何子と統一して名前さえ出さないでいる。

故に子供が4人居るのは皆知っているが名前までは知られていない。

兄達はそんな父の元で他の貴族の令息よりもかなり大変な苦労をしたと話していた。

かく言う私もそんな父の影響のせいか「結婚する方は自分で選びます」と豪語して男の成りをし士官学校成るものに通っている次第です。



そう、冒頭の彼ことアイザック・ド・ラクーンに会ったのもこの学校でである。




アイザックはラクーン国の第二王子殿下で私と同じ15歳。

でも私の方が1週間お姉さんなんだよね。

そんなアイザックには8歳の時より婚約者がいる。

仮にもこの国の王子なのだから婚約者がいるのは当たり前なのだが、婚約者は我がラハン公爵家とライバルの間柄であるペレッタ公爵家の令嬢ケイティ・ペレッタで、年は16歳で私達より1歳上である。

何度か変装(公爵家とは遠縁と名乗って)して知り合い令嬢のお茶会に参加した事があり面識もある。

その時の印象は品行方正で儚げな深層のお嬢様といった感じだった。


淡いブロンドの髪、細くしなやかな腕、長い睫毛の下から愁いに満ちた紺碧の瞳を覗かせて小さなピンク色の唇から紡がれる声は可憐だ。

男性の庇護欲を掻き立てられそうな細い腰に思わず見入ってしまった事が思い出される。


因みな我が国では男女共に16歳で成人とみなされ社交界へデビューとなる。

我がラハン家ではその時に公爵家の人間である事を名乗る事が父より許される。

まぁ、それはこの際どうでも良い事なのだが。


そんな深層の令嬢バリバリの第二王子の婚約者である彼女の何処に不義を働く要素があったのか?


疑問である。


そして何故その相手が私と言う事になってしまったのか?




だって無理でしょう。



女同士で妊娠なんて。




*******



冒頭より話は少し前に戻る。

私の通う士官学校は成人前の貴族が1年間だけ学ぶ学校の様なものがり、男女合わせて40名程が通う。

学校と言っても貴族の一般教養は家庭教師を雇い各々学んでいる為、貴族間の顔合わせや王宮使え等の為の教育も兼ねていた。

何故公爵家を名乗れない自分が入れるかと言うと、そこは母方のカリス伯爵名を少々借り、建て前上の……まぁ言わば後見人?みたいな感じで父によるゴリ押しでの入学である。

最初はね。


でも16歳になり社交界デビューした時から公爵家を名乗る事も事前に責任者の方には根回し済みで、上の兄達もその方法で入学している。

入学当初家柄の件を学友に質問されるかと思っていたが、同時に入学して来た第二王子殿下に皆の意識が集中してしまい、誰からも聞かれる事はなかった。



本当にその事に関しては感謝である。

あの件さえなければ。



第二王子は話してみるととても気さくな人柄で皆からの信頼も厚くそつなく日々を過ごしていた。

母方の従兄弟と言われるロイティ公爵の三男ジャクと仲が良く、ジャクを筆頭に数名の取り巻きをいつも侍らせていた。

因みにジャクは入学して間もなく16歳になり社交界デビューをしているそうだ。

そんな中、特に私は殿下と仲良く話す事も無く、皆が殿下を取り巻くのを只静観するのみだった。



その関係が動いたのが、入学して3ヶ月たった頃、私の2番目の兄が士官学校に講師として来たその日だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ