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転生絵巻~テンショウエマキ~  作者: 木霊百合
一ノ巻.宿命(さだめ)
4/9

英雄への非難。

少年が即座に背後へと視線を向ければ、そこには十二、三才程の小さな男児の姿。


足早に少年の元へと駆け寄り、そして足を止めた。



「うおっ、これお供え物だったのか!?」



咄嗟に状況を理解し、即座に林檎を元の場所へと戻す少年。


そして、直ぐ様弁解した。



「ははははっ!! いや、このリンゴ虫食ってねーかなって思って確認してたんだよ! 本当に!」



ーー当たってはいるが。



「ん? 兄ちゃんその痣、もしかして(ほむら)のーー」



すると男児は、両頬の刻印を見るや否や、改めてその事実を少年へ向け問い質してくる。



「あー、分かったから小百合には内緒にしてくれ。あいつ説教長いんだよ」


「……」


「てかこれ、あんたの親の墓か? 随分と粗末なもんだなぁ。こんなとこにあったら鬼に荒らされるぞ、おい」



言いながら千影は積み上げられた小石を見遣り、再び言葉を繋げた。



「誰かを埋葬する時はだな、もう少し時と場所を考えてーー」


「……にが、英雄だ」


「ん? 何か言ったか坊主?」



ポツリ、呟き声を発した男児へ、少年は(にわ)かに疑問符を浮かべる。


次の瞬間、男児が潔く言い放った。



「何が英雄だよ! 十年前、誰も救えなかった癖に!!」



その言葉に、指摘に、少年の動きが、瞬間的に停止する。



「英雄なら、何で父ちゃんと母ちゃんを救ってくれなかったんだ!! (ほむら)の生まれ変わりなんて、本当は嘘っぱちなんだろ!!」



その鋭い罵声が、思いが、少年の胸に重く、深く突き刺さる。



「俺は信じない、小百合様もお前も(ほむら)も。みんな大っ嫌いだ!!」



そうして吐き捨て、今度は勢いよく山道を駆け降りていく。



「ちっ……おい待て坊主!」



即座に後へ続こうとした少年の身体は、次の瞬間豪快に地面へ伏せる事となった。



「ぐふっ!!」



何事かと視界を上げれば、真上に一人の青年の姿。



「捕まえましたよ、千影様」



少年、千影の体を羽交い締めにしながら、緑髪の青年はにっこりと端正な笑みを浮かべていた。



「……遼園、お前どんだけタイミング悪ぃんだ」

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