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転生絵巻~テンショウエマキ~  作者: 木霊百合
一ノ巻.宿命(さだめ)
3/9

少年、稽古サボる

「あ~あ、今頃小百合の奴騒いでんだろうなぁ」



同じ頃、天照(あまてらす)の神社から少し離れた山道にて。


緑の草花と、家屋三階建て分くらいはありそうな程の高さを誇る巨木が、辺りに鬱蒼と生い茂っている。


そしてその頂点付近にある枝に(もた)れ、少年は小さく欠伸を漏らした。


紅色に染まる両眼の下に、紋様のような印を浮かび上がらせている。



「ふぁ~あ。まぁ稽古っつったって、どうせ毎日同じ事の繰り返しなんだろうけどな」



そう言い切ると同時に両手を頭部へと回し、巨木の幹へと寄りかかった。



「な~にが英雄だ、やってられるかっての」



そうして気怠そうに瞼を閉じ、少年は眠りの態勢へと入る。


が、その時ーー



ぐぎゅるるる~



と、何とも間の抜けた音が少年の腹部から響いてきた。



「……やべぇ、そういや朝飯まだだったな」



眠気より食い気の方が勝ったのか、再び瞳を全開に開き、体をゆっくりと起き上がらせる。



「先に飯食ってからにすっかーーよっ、と」



そう口にしながらも飛び降り、高さ数十メートル程もあろう巨木から、両足で華麗に着地を決めてみせた。



「さて、と、近くに何か食べ物はーー」



そうして辺りをしきりに見渡してみれば、やはりと言って良いか、眼前に広がるのは明らかに食べにくそうな木の実と葉っぱ、緑の草花と立ち並ぶ木々のみ。



「まぁそうだな、こんな村はずれに都合よく食べ物がある訳ーー」



と、言いかけたところで、少年は思いがけない光景にふと動きを止める。


何故ならそこには、林檎(りんご)や梨、蜜柑(みかん)と言った色とりどりの果物が、積み上げられた小石と共に存在していたから。



「……マジか、探してみるもんだなぁ」



その事実に多少驚きはしたものの、しかしこの周辺に住む鬼や動物達が残していったものと考えれば、さほど珍しい事ではない。


すかさず果物の傍へと駆け寄り、少年は舌なめずりをする。



「へへっ。こんなところで虫の餌になるくらいなら、俺に食べられた方が何億倍もマシってもんだろ」



ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、徐に、手近にあるリンゴを拾い上げた。



自らの衣服ーーそれも極力汚れの少ないところで軽く(ぬぐ)った後、入念に周りを確認する。



「……マジで虫、いねぇよな?」



その単語に特別含みを持たせ、林檎を何度も右掌の上で回しながら視認する。


ーーと、その時。唐突に、背後から甲高い声が響いてきた。



「お前っ、父ちゃんと母ちゃんのお供え物に何してんだっ!!」

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