ある大魔法使いの肖像
こんにちは皆さん、私はオックス、こっちは相棒のジョン。
マーリン様は勇者召喚で忙しいので私達がお相手致しますね。
え?お前等誰だって?
いやだなぁ、第一話から会ってるじゃないですか、私達ですよ。
毎回マーリン様に勇者召喚をして貰ってる使いの者ですよ。
思い出していただけましたか?
ええと、どこまで話したかな? ああ、そうそう勇者召喚をしてもらっている所まででしたね。
実は今新しい魔王が現れましてね、それでマーリン様に新しい勇者を召喚してもらっているんですよ。
え? 今まで呼んだ勇者にやらせればいいだろうって?
いやいや、言いたい事は判りますがそうは行かないんですよ。
実は勇者と魔王と言うのは対の存在になっていましてね、魔王が現れると勇者も現れるようになっているんです。
マーリン様の話だと世界を脅かす強大な存在を抑制する為の世界の防衛機能らしいんですが詳しいことは私にはちょっと分かりませんでした。
で、マーリン様の魔法はその機能を効率良く動かして早く勇者をこの世界に誕生させるというモノなんだそうです、凄いですね。
でもこの魔法、欠点がありましてね、
え?ああ、はい、お茶のお代わりですか、ありがとうございます奥方様。
・・・・・・
いやー奥方様の入れるお茶は美味しいですなー、以前住んでらした世界ではメイドキッサなる場所で働いていたとか・・・・・・なんですかジョン? え? 説明? ああ、そうでした。
ええと、魔法の欠点ですが、効率よく魔王の対となる勇者を呼ぶので対応する魔王には絶大な力を発揮するのですが対応していない魔王には十全に力を発揮できないそうなんです。
それで毎回違う勇者様を召喚しているというわけです。
ちなみに今回の魔王は局地戦に特化した深海魔王でして、深い海の底で戦える勇者様で無いといけないのでなおさら新しい勇者様を召喚して貰う必要があるのです。
マーリン様って結局何者なんだですか?
そうですねぇ、一言で言うと天才、詳しい事は我々にもわかりません、気が付いたらあの方はわが国に居ましたから。
一説によるとわが国が誕生する以前から住んでいたとも言われています。
その力は天を裂き雨雲を晴らして花見を行い、地を砕き野菜の種を蒔くそうです、恐ろしいですね。
マーリン様は非常に深い英知に満ち溢れた方で各国の学術研究の発展を助け時に災害から人々を守る術を教えてくださったそうです。
そんなマーリン様ですが争い事にだけは手を貸しては下さいませんでした。
どのような国であっても、どのような理由があろうとも絶対に戦にだけは関わらなかったのです。
もっとも無抵抗主義ではないので襲ってくる者には容赦なく反撃していたそうですが。
ソレを逆手にとって敵軍がマーリン様を襲うように仕向けた国の王はお怒りになったマーリン様によって城ごと消滅させられたそうです、いや恐ろしい。
そんなマーリン様が唯一例外的に争い事で力を貸して下さるのが魔王が現れた時です。
理由は分かりませんがこの時だけは我等に力を貸してくださるのです。
きっとマーリン様は人間が同族同士で争う事を悲しんでおられるのでしょう、お優しい方ですから。
おや奥様、え?そろそろ召喚が終わる?
では勇者様をお迎えに上がりましょうか。
◆
マーリン様、こちらが勇者様ですか?
・・・・・・はぁ、そうですか、私にはデカイ魚にしか見えませんが。
ところでこの勇者様苦しんでませんか?なんだかのた打ち回っているように見えるんですが。
段々動きが弱々しくなって来ましたよ。
・・・・・・ぴくぴくしてますね。
・・・・・・あ、死んだ・・・・・・
・・・・・・これからどうするんですか?一体?
え?新しい勇者様を召喚する?はぁ、分かりました。
あの、奥型様?勇者様の亡骸をどこへ? え? 台所? 今夜は海鮮鍋?
・・・・・・さて、新しい勇者様の召喚を待ちましょうか。
この後4回ほど新しい勇者様が台所に導かれ最後に呼ばれた半漁人の勇者様で妥協する事となりました。
海鮮鍋美味しかったです、ええ。