【童話】灰が降る町(3)
山は毎日ふんかしたいのをずっとがまんしていたので、十年たつとムズムズゆれるようになりました。人間で言うなら、くしゃみをがまんしているようなものです。はじめは小さかったのですが、だんだんゆれが大きくなっていきました。
ふもとの町では毎日じしんがおこるようになりました。これでは工場で車やれいぞうこなどを作ることができません。動物たちもこまりました。山がふんかしなくなったので、草や木の実がそだたなくなって、食べ物がなくなってしまったのです。灰はだいこんやみかんだけではなくて、すべての植物をそだてる力があったのです。
山がふんかしなくなってから、ふもとの町の人たちも、動物たちも、植物たちも、みんなこまるようになりました。それでも、山はふんかをしようとはしませんでした。人間たちから言われたことを山はわすれることはありませんでした。ふもとの町のゆれはさらに大きくなりました。
とうとう、山のゆれが大きくなりすぎて、ふもとの町だけでなく、遠くの海までゆれてしまいました。海は大きくゆれると、ふもとの町をめがけて、進み始めました。このままではふもとの町も山もすべてが海に飲み込まれてしまいます。あまりにも急だったので、ふもとの町の人たちも動物たちも逃げることができませんでした。植物たちは逃げたくても動くことができませんでした。
山はこのままではボクのせいで、みんなが死んでしまうと思いました。どうしよう…。そのときです。山はあることを思いつきました。
山はこれまでがまんしていたふんかをいきおいよく始めました。そして、海に向かって、たくさんの灰とマグマをふらせました。またたく間に海の目の前に高いていぼうができました。
でも、海もまけていません。ていぼうをこえてこようと力強くおしてきました。山もまけません。もっとたくさんふんかして、ていぼうをもっと高くしました。そうやって、山と海があらそっているのを見て、ふもとの町の人たちと動物たちと植物たちは山をおうえんしました。
「まけるんじゃないぞ! かんばれ、山の神様!」
「海なんかにまけるんじゃないぞ! 海にまけたら、みんな海にのまれちまうぞ!」
みんなのおうえんもあって、山はなんとか海にかつことができました。まけた海はまたもとのおだやかな海にもどりました。