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短編集  作者: あまやま 想
はろうぃん怖い
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はろうぃん怖い(1)

「ばあちゃん、今夜はハロウィンよ」


「ほのか、何だい? そのはろうぃんって奴は?」


「ばあちゃん、知らないの?」


「そんなのは知らんよ」


「ハロウィンって言うのはね、好きな格好にコスプレして、みんなで一緒に家を周りながら『トリック・オア・トリート』って言うの」


「何? その『と立夏何たら』は? ばあちゃん、横文字はさっぱり分からんよ」


 帆足忍は孫娘のほのかが、訳の分からないことをさっきから言うので、困り果てていた。これまで十月三一日に魔女の格好をするような行事は聞いたことがなかったからだ。


 それだけでなく、昔はなかったはずの行事がふえる一方である。やれバレンタインデーだ、ホワイトデーだ、恵方巻だ…と聞き慣れない行事がいつの間にか生活の一部になっている。


「お母さん、ハロウィンは好きな格好に仮装して、近所の家々を回る行事よ。その時に、『お菓子をくれないといたずらするぞ』と言いながら回ることになっているのよ」


「なんかローソクもらいみたいな行事だね」


「ばあちゃん、ローソクもらいって何?」


「ローソクもらいは北海道で七夕の時に行われる行事だよ。『ローソクかお菓子を出せ』って言いながら、ご近所さんを回るらしい。北子さんが北海道出身で、内地にはローソクもらいがないのね…と言ってな」


「へえ、日本にもそんな習慣があったとは知らなかった…」


 孫娘は関心なさそうにつぶやく。早く仮装行列に行きたいらしい。どこで調達したのか知らないけど、魔女の宅急便に出てくるキキのような格好をしている。


 こうやって、日本文化が少しずつ異質の物に変化していくのだろうか。忍は孫娘にはとぼけて見せたが、近所のスーパーへ行けば、店員がハロウィンの仮装をして接客している。


 そして、ハロウィンセールとか言う訳の分からない安売りをしていた。商業主義に踊らされて、訳の分からない行事は増えていくばかり…。


 ちょっとは疑えばいいのに、面白いからと何も考えずに便乗する人が多いから、新しい行事がどんどん定着する。そのうち、毎日のように訳の分からないイベントセールをするようになるのではないか?


 ふと、ほのかを見ると、母親と何か話をしていた。どうやら、あまり遅くならないようにと話しているようだ。そうは言っても、ほのかも高校一年生だ。


 口では早く帰ってくると言いながら、帰りが遅くなることもしばしば。最近は物騒な事件も多いのに、「私は大丈夫!」と根拠の無いことを口走る。


 誰が事件に巻き込まれてもおかしくないのに、今までそんな目にあっていないから、これからもずっと起きないだろうと勝手に思い込んでいる。都合のいい解釈は危機管理のなさと、若者特有の節操のなさを作り出している。


 そうやって、商業主義にふりまわされる人々が量産されていく。つくづく末恐ろしい世の中だと思う。

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