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二人きりで行こうよ

ウォーロックとゲームブック三昧の週末が終わり、学校での昼休みも図書室にこもってインスマスの探索に明け暮れていたが、クリアーするどころか相棒になりそうなシュリュズベリイ博士も見つからない。いい加減うんざりしてきたゲームブックを閉じると、幼なじみの鷲尾朱美がトレードマークのポニーテールを揺らしながら僕のところにやってきた。

「またサイコロ片手に本を読んでるの? いい加減どっちかにしたら」

「どっちかにって・・・・・・。一人で黙々とサイコロを振ってたらそっちの方がおかしいだろう」

「遠回しにそんな暗そうな本なんて読むのはやめて、たまには明るい太陽の下、健康的にバットをふってみたり、キャプテン翼みたいにボールと友達になったりしてみたら可愛い彼女とか出来たりしちゃうかもよ、と親切に忠告してるんだよ」

「太陽の下でボールを追いかけ回したりするのは僕の柄じゃないよ。そういうのは鷲尾に任せるよ」

 鷲尾朱美は僕とは正反対。完全アウトドア派の人間で、僕が暇さえあればゲームをやるように、鷲尾朱美も暇さえあれば体を動かしていた。

 インドア派の僕から見ると、真夏のうだるように熱い校庭を駆けずり回って何が楽しいかまったくもって理解に苦しむが、鷲尾朱美からすると授業中でもないのに本を開いてる僕の方が理解できないそうだ。

「まあ、ひ弱なもやしっ子の響に、いきなり翼君みたいになれはハードルが高いよね。

と言うわけで、今度の日曜日遊園地に行かない?」

「えっ、なんで遊園地? 話が見えないだけど」

「響のお母さんから、遊園地のチケット貰ったんだよ。部屋から出てこない息子を、たまには外に連れ出してくれって。たしかにあんまり部屋にこもりすぎてると、響もカビちゃうかもしれないからね。もやし子の上にカビまで生えたら、それこそ貰い手がなくなちゅうからね」 

 ――隣の家に住んでるからってボクに押し付けられても困るし・・・・・・

 鷲尾はそっぽを向いて呟いた。カビの生えた僕を押し付けられた自分の姿を想像して、うんざりしているのかもしれない。

 それにしても――。

「また母さんか・・・・・・」

 僕は大きなため息をついた。

 母は基本的にいい母親であるのだが、一つだけ困った癖があった。

 何かあるたびにインドア派の息子を、運動施設に連れだそうとするのである。

 たとえば日曜日。僕が家でゆっくりしたいと思っても、母は近くの山にハイキングに行こうと言い出し、冬休みになればこたつが出てこない息子の手を引っ張って無理矢理スキー場に連行するのである。

 単純な母は、体を動かす素晴らしさを体験させれば僕がスポーツに目覚めると思っているのである。

 中学二年にもなってインドア派のままなのだからいい加減あきらめても良さそうなものだが、元オリンピックの水泳選手のある母は息子と一緒に爽やかな汗を流すという夢を捨てきれないでいた。

 諦めきれない母はある一つの考えを思いついた。

 息子がスポーツをしないのは、同じ年頃のスポーツ好きの友達がいないからだと。

 妄想もいいところであったが、母には当てがあった。

 鷲尾朱美である。

 鷲尾は、母がインストラクターを務めるスイミングスクールの生徒で元オリンピック選手である母のことを尊敬していた。

 母の方も、素直でスイマーとしての才能がある鷲尾のことを実の娘のように可愛がった。

 母は鷲尾にスケート場のチケットを渡して、息子にスポーツの素晴らしさを教えてやってくれと頼み。スポ根の鷲尾は力強く頷いて僕にスポーツの素晴らしさを教えると誓うのであった。

 母と同盟を組んだ鷲尾は、週末になるとむずかる僕を外に連れ出して、プールの中に漬けてみたり、スキー板をはめさてみたりした。

 僕はそのたびに鷲尾と母の期待を裏切った。

 プールに漬かれば土左衛門になりかけたり、スキーをすれば骨折になりかけたりと、スポーツをより嫌いになるだけであった。

「なにため息なんかついてるのよ。プールでもスケート場でもなく、遊園地に誘ってるだから、溺れる心配も転ける心配もないでしょう」

「僕は鷲尾と違ってデリケートに出来てるから、ジャットコースターとかフリーフォールとかそういう野蛮な乗り物に乗って喜ぶ趣味なんてないんだよ」

「――まさかアンタ、中学生にもなってジャットコースター乗るの怖いの?

「――うるさいな」

 僕は鷲尾から顔をそらし呟く。

 今度は鷲尾が盛大にため息をついた。

「――はぁあ。ヘタレキャラだと思っていたけどここまでヘタレだと思わなかったわ」

「いいだろう、別に。ジャットコースターに乗れなくても、鷲尾より成績はいいだから」

「体育以外はね。まあたしかに人には好き嫌いあるから、無理してジャットコースター乗ることもないわ。臆病な響でもメリーゴーランドとかは大丈夫なんでしょう?」

「馬鹿にしすぎだろう、コーヒーカップも乗れるよ」

「それってなんのフォローにもなってないから。まあいいや、ちゃんと響にレベルを合わせた乗り物のってあげるから、北坂本の駅に朝の八時に間に合わせでいい?」

 誰も行くとはいってないのに、鷲尾朱美の頭のなかでは遊園地に行くことは決定しているようであった。

 ・・・・・・仕方ない行くか。真夏の遊園地など行きたくもないが、へたに断ると鷲尾が騒ぐのが目に見えてるのでここは大人な対応をすることに決めたその時――。

 ――くくくく。後ろから聞き覚えのある声が割り込んできた。

 僕と鷲尾が驚いて振り返ると、小脇にウォーロックを挟んでいる祖父江玲一が立っていった。

「――遊園地だと。そんな幼稚園児か頭がからっぽのスポ根女しか喜ばないような場所、キッパリとお断りだぜ馬の尻尾女!」

「祖父江! あんたには関係ないでしょう」

 小学校時代からの天敵の登場に、鷲尾はすぐさま戦闘態勢に入る。

「関係大ありだぜ、ポーニーテールと書いて馬のしっぽ女君。響の日曜日の予定はすでに決まっているんだから」

「えっ、決まってるって。どこか行く約束なんてしたっけ、僕?」

「してないに決まってるだろう、これから誘うだからな」

 祖父江は気取った口調で言うと「響、日曜日テーブルトークしに古町の公民館に行くぞ」

「――テーブルトーク!?」

僕は驚きの声を。鷲尾は怪訝な声を出した。

「なにそのテーブルトークって。テーブル囲んでみんなでお茶でも飲むの?」

 テーブルトークどころか、ゲームブックもよくわからない鷲尾はお茶会のようなものを想像しているらしい。

「おいおい口を開くと無知がバレるぞ、馬のしっぽ女!」

「――馬のしっぽ、馬のしっぽってさっきから黙って聞いていれば調子に乗りやがって・・・・・・」

 トレードマークであるポニーテールを貶されて、鷲尾の堪忍袋の緒は切れかかっていた。

「おっ、暴力で来る気か! 馬の尻尾女。 いいだろう、鳩岡のマハトマガンジーと呼ばれたこのおれだ。無抵抗のおれを思う存分殴ればいい。ただしおれも男だ。痛みと屈辱に耐えきれなくなって、学校中に聞こえるほどの声で泣き喚かせてもらうがな」

 脅してるのか、怯えているのかよくわからない祖父江の言葉であったが、鷲尾の耳には脅迫として聞こえたようだ。顔が明らかに怯んでいる。

 無理もないか。小学校時代、鷲尾は祖父江と喧嘩して、実際に泣き喚かれたことがあるのだから。

「この程度で怯むとは。所詮、雑魚だな。さぁ、響。こんな馬のしっぽ娘なんかほっておいて、二人でウォーロックを読んで、日曜日に備えようぜ」

「ちょっと待ってよ、祖父江君。テーブルトークするって言ったって、僕も祖父江君もルールブックすら持っていないだよ」

 僕もテーブルトークには興味はあったが、肝心のルールブックがどこにも売っていなかった。

「心配するな、響。ルールブックはサークルの人が持っているし、ゲームを始める前に簡単かつ丁寧に説明してくれるそうだから。おれとお前はシャーペンと消しゴムを持って行くだけでOKだ」

「サークルって、話が見えないだけど」

「おいおい、これだけ丁寧に説明してやってるのにまだ話が飲み込めないのか。響、お前もウォーロックの最新号持ってるよな」

 僕はウンと答えた。

「ならばウォーロックの隅から隅まで穴が空くまで熟読したあげく、付録の霊無ちゃんゲームブック、アイラブユーなんて言わないで霊無ちゃんを三回ぐらいクリアーしたはずだよな」 僕はまたしてもウンと頷いたが、本当は霊無ちゃんの方はクリアーどころか、手もつけてなかった。しかし正直に答えたら祖父江が泣き喚きそうなので取りあえず頷いておいた。

「ならウォーロックの九十八ページ、TRPGをみんなで盛り上げようぜを読んでいるはずだろう」

「あっ、ひょっとして、ウォーロックの同好会紹介コーナーに載っていた古町のTRPG同好会のこと言ってるの?」

 扱いは小さかったが、自分の住む街から三駅ほど離れたところにTRPGというマニアックな趣味の集いがあるのに驚いてよく覚えいてた。

「くくくく、さすがだな我が友と書いてライバルと読ませるだけの男だけはあるぜ。扱いは小さくても、お前なら必ず読んで発情してると思っていた」

「発情って・・・・・・」

「なに初心な小娘ちゃんを気取ってるんだ、響? お前もおれと同じくTRPGという新しい世界に冒険したくてウズウズしてたんだろう?」

「・・・・・・ウン。興味があるけど・・・・・・。でもルールどころかどういうゲームかもよくわからない僕等が行っても迷惑じゃないかな?」

 たしかに興味あった。ウォーロックで古町TRPG同好会の存在を知ったとき、行きたいとも思った。いや訂正しよう、凄く行きたかった。僕もTRPGをやりたかった。

 でもどういうゲームなのかイマイチよくわからないし、ルールブックもなかった。サイコロもごく普通の六面体しかなかった。

「迷惑!? 鳩岡の神童と呼ばれた祖父江玲一とそのライバルである瀬尾響が同好会に参加しようと言うんだぜ? 歓迎されこそすれ、迷惑がられるなど百パーセントあるはずがない」

 祖父江は根拠のまったくない自信に満ちあふれていた。

 いつもなら危なっかしく思えるその態度も、今の僕には頼りがいのある男に見えた。

「行かないことには迷惑かどうかなんてわからないもんね・・・・・・」

 僕はTRPGという未踏の世界に一歩足を踏み出す決意を固めかけたその時──。

「ちょっと、待ってよ。さっきから黙って聞いてればボクと遊園地に行く約束と忘れていない?」

 鷲尾朱美が、僕の決意に待ったをかけた。

「おいおい何を言い出すんだ、馬の尻尾女! 遊園地などというお子ちゃましか喜ばない遊技場とTRPGやるチャンス。秤にかけるまでもない。TRPGをやるチャンスの方が断然重い」

「重いもクソもあるか! ボクの方が先約なんだから今度の日曜日は、響はボクと遊園地に行くの!」

 スポ根少女と鳩岡の神童はにらみ合ったあげく。

「どっちに行くんだ響!」

 二人は僕に決断を迫った。

「・・・・・・TRPGしたいので古町の方へ行きたいです」」

 僕は二人の迫力にタジタジとなりながらも自分の欲望を素直に述べた。

「ボクとの約束を蹴って、こんなひょろ長ヘチマ男と一緒に公民館でわけのわからぬゲームをやりに行く方を選ぶというのか、響は!」

 鷲尾は祖父江に負けたのがよほど悔しいのか、僕の両肩をがっしりと掴み激しく揺らした。

「・・・・・・遊園地はまた今度ということで・・・・・・」

 僕はしどろもどろと弁解していると、祖父江が割り込んできた。

「諦めが悪いぞ、馬のしっぽ女! 響はなあ、闇の精に取り憑かれちゃうほどのゲームフリークなんだぞ! お前のような馬のしっぽを振り回してるようなじゃじゃ馬娘と遊園地なんぞに行ってる暇など微塵もないわ」

「――なに闇の精って?」

 聞き慣れぬ名を耳にして、鷲尾は怒りを忘れ怪訝な顔になった。

「くくくく。これほど近くにいて闇の精霊の存在に気づかぬとは・・・・・・。

平和な日本に生まれてよかったな、鷲尾朱美。お前がもしアランシアに生まれていたら、今頃狡猾なゴブリンか何かに騙されて、馬の尻尾娘のシチューかなにかにされて、オーガーに喰われてるところだぞ」

「・・・・・・なに訳のわからないこと言ってるんだ! ボクにもわかるように言えよ!」

「口で言ってもわからぬのなら。直接見るがいい、あれが鳩岡の闇の精だ」

 祖父江は図書室の貸し出しカウンターを指さした。

 鳩岡の闇の精こと黒瀬司はカウンターの影に隠れながら、僕達の様子を覗っていた。

 僕達の視線に気づくと、黒瀬さんは慌てて顔を引っ込めた。

「黒瀬さんだ・・・・・・」

 なんで僕達のことを見ていたんだろう?。

「なにあの娘と知り合いなの?」

 鷲尾の声は何故かはわからないが険悪そのものだった。

「知り合いというか・・・・・・」

 どういう関係と問われると説明しづらい。

「関係もなにも、響は闇の精に取り憑かれてるだよ」

「取り憑かれてる?」鷲尾は問い返す。

「ああ。間違いないぜ。なにせ暗黒教団の陰謀をやっている響の様子を喰い入るように見ていたからな」

「喰い入るようにって・・・・・・」

 鷲尾は絶句して驚いている。

「――僕のことなんて、何で見ていたんだろう?」

「そんなの決まってるだろう? お前が暗黒教団の陰謀をクリアー出来なかったその時、闇の精はお前を呪い殺すつもりなんだよ」

「無理だよ、普通に三桁の能力値の敵が出てくるだよ!」

「おれがあれほど忠告したのに、暗黒教団の陰謀などというクソゲームブックに手を出したお前が悪い」

 祖父江は僕を突き放した。

 僕が言い返そうとする前に、鷲尾が口を開いた。

「――ボクとの約束破って、あの娘とゲームするんだ」

 鷲尾は静かに切れていた。

「・・・・・・どうしたの鷲尾?」

 今まで聞いたことのない鷲尾の声に、僕は戸惑いを覚えると同時に心配になった。

「何でもない、ボクのことなんてほっておいてよ」

 鷲尾は言い終わると、僕に背を向け立ち去ろうとした。

 僕は慌てて、鷲尾の手を掴んだ。

 振り返った鷲尾の瞳には涙が溜まっていた。

「鷲尾・・・・・・」

 鷲尾の涙なんて幼稚園以来であった。

「・・・・・・勘違いするな、馬鹿。これはべつに目にゴミが入っただけだ」

 鷲尾は目を手で拭いながら強がる。

「――うん。そうだね」

 僕は逆らわなかった。

「ねえ鷲尾、お願いがあるんだけど」

「なんだオカマ男・・・・・・」 +

「今度の日曜日、よかったら僕と一緒にゲームをやりに行かない?」

「・・・・・・へっ?」

 僕の言葉がよほど意外だったのか、鷲尾は怒りを忘れた。

「いつも鷲尾が運動の楽しさを教えるといって、僕を外に連れ回すだから、たまには僕に付き合ってゲームをやりに行こうよ。やってみるとゲームも楽しいかもしれないよ」

「ゲームって、ファミコンとかではなくて響がいつもやってる本を読みながらサイコロを振るうあれか?」

 鷲尾はサイコロを振る真似をした。

「似てるけど違う。今度の日曜日やりにいくゲームはテーブルトークRPGと言って、ゲームブックとは違ってみんなとやるゲームなんだ。だから鷲尾も一緒にやれるよ」

「ボクと一緒に・・・・・・」

「うん。日曜日鷲尾の家に迎いに行くからいっしょに行こう!」

「・・・・・・まあ、いいけど。ボク、ルールとかわからないからしっかり教えてよね」

「僕もやったことないからルールを教えてあげるわけにいかないけど、でもサークルの人が教えてくれるから一緒に覚えよう」

「なんだ響もルール知らないのか。まぁでも、ボクより詳しいだろう? なにかあったらフォローしてくれよ」

「うん。出来る限り頑張るよ」

 と僕が答えると、鷲尾はゲームの世界でも頼りない奴め、と呟いた。

 鷲尾の表情や声から怒りは消えていた。

 どうやら遊園地の件は許してくれたそうだ。よかったぁ。僕は安堵のあまり胸をなで下ろしていると――。

「うっ、うぐぅぐぐ――」

 僕の隣にいた祖父江が涙を垂れ流しながら鼻水を啜っていた。

 〝なんで祖父江君が泣いてるの?〟

 理解は出来ないが、祖父江との付き合いが長い僕は驚きはしなかった。

 祖父江玲一という男は人一倍、いや人の十倍ぐらい感情の量が大量にある男で、ふとしたことで激情を発することがある。

 しかも困ったことに何が祖父江の激情の引き金を引くのか、長い付き合いの僕にも鷲尾にもイマイチよくわからなかった。

「鷲尾、おれはお前が遊園地にかける情熱を見くびっていた」

「――遊園地にかける情熱って?」

「泣くほどだったんだろう?。遊園地に行けないとわかった瞬間、ほたるの墓をみた子供のように泣いちゃうぐらい、鷲尾朱美、お前は遊園地に行きたかったんだろう?」

「いや、そこまでは・・・・・・」

「じゃあ、なんで泣いたんだよ!」

「えっ、それはそのう・・・・・・」

 鷲尾は急にモジモジしはじめた。

「隠さなくたっていい! お前は鳩岡一、いや日本一の遊園地大好き少女なんだろう! ななけなしのお小遣いを一生懸命ためて遊園地の年間パスポートを買ったり、中学生のくせにネズミーランドのバイトの募集に無理矢理面接を受けに行っちゃったりするぐらいの遊園地フリークなんだろう? その情熱、おれ達がゲームにかける情熱に勝るにも劣らない、それほどの情熱を、おれは馬鹿にしてからかった。最低だ、最低のゴミ虫野郎だ、おれは・・・・・・」

 祖父江は土下座したかと思うと、図書室の床に頭を打ち付け始めた。

「こんなゴミカス野郎のおれだけど、許してくれ!」」

「ちょっ、ちょっと祖父江なにやってるの!」

「祖父江君、血が、額から血が出てるよ」

 友人の血に焦った僕は祖父江の背中にしがみつき止めようとしたが、祖父江は興奮しているのかその勢いは止まらなかった。

「僕だけじゃ止められないから手伝ってよ、鷲尾!」

 唖然としている鷲尾は僕の声を聞くと、床に頭を打ち付けている級友を止めに入った。


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