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12星座別恋愛小説

12星座別恋愛小説 ~しし座~

作者: 黒やま

これはあくまで私の主観で書いたしし座像ですので

この小説を読んで気を悪くしたしし座の方がおられましたらご容赦下さい。

♌7月23日~8月22日生まれ Leo♌


*正直者

*公正明大

*目立ちたがり屋

*プライドが高い

*華やか


たくさんのフラッシュがたかれ幾つものカメラがこちらを映している。


スポットライトが眩しい、けれど気持ちいい。


「それでは新人女優賞を見事受賞されました宍戸(ししど)千夏(ちなつ)さんに

 喜びの言葉をいただきたいと思います。」


司会者がマイクを私に向け新人賞を総なめにした女優の言葉を待っている。


やっと私の実力が認められた、輝かしい未来が手招きしている。


胸から溢れ出そうな歓喜を述べようとした瞬間、ジーーという目覚まし時計の


けたたましい音に邪魔された、そこで私は現実の世界に虚しく還ってきた。


「・・・・・何だ、夢オチか。」


都会の真っ只中であるのに蝉の声がどこからともなく聞こえてきて五月蝿い。


まだ朝、涼しいはずの時間帯はアマゾンかと思う程に暑い、


昨夜は熱帯夜だったこともありまさにここだけ熱帯地ではないかと思いながら布団から起き上がる。


上半身を起こすと汗がツーと背中を流れ落ちる、エアコンをつけて


涼しい風を浴びたいところだが残念ながら六畳一間風呂なしアパートには


そんなこじゃれた家電製品が付いてない。


仕方なく窓を開けて自然の爽やかな風を呼び込もうとしたが逆効果、


隣に接している中華料理屋の換気扇から温風が顔中に広がり急いで窓を閉める。


「アヅイ・・・・・。」


団扇でパタパタと扇ぎ制汗シートで全身の汗を拭きまくりながら今日の予定を確認する。


本日の仕事・・・、大型新人女優が出演するCMのちょい役1本。


それにパン屋のアルバイトが17時から入っている。


宍戸千夏、私の職業は女優。だけど今はそれだけでは食っていけないので


アルバイトなんかもこなす、忙しい日々を送っている。


私が上京してきたのは七年前、中学を卒業と同時に単身やってきて芸能事務所と契約した。


小学校の時から夢は女優、いつかなるものだとずっと信じて生きてきた。


そしてそれは実現した、叶いはしたがそれまでであった。


仕事はなかなか来ない、来たとしても下らないものばかり。


おまけに私の夢を応援していた父の会社は倒産、親からの資金援助は断ち切られた。


そして今に至る、と。なかなかこれだけでドラマ一本作れそうなものである。


こんな悲惨な生活を送っていながらも私は女優としての成功を諦めない、


何故ならば私には自信があるから、必ずなれると信じているから今も


こうして端役のためにも念入りにメークしてこの真夏の炎天下の中


駅まで30分もかけて歩いていくことが出来るのだから。




クーラーの効いた電車を降りて少し歩いただけで汗が全身を覆う。


今年は暑さがとりわけ厳しいのだろうか、これでは熱中症になってしまう。


そんなことを考えているとすぐそこの店で売っているソフトクリームが目に留まった。


「ソフトクリーム・・・・・。たまにはいっか。」


なけなしの金で350円するコーンに入ったソフトクリームを購入しじっと見つめる、


この猛暑の中ではまさに砂漠のオアシスに匹敵する。


「おっと早くしないと溶けちゃうな――――――」


オアシスの水を口に含もうとする、だがそれは暑さが見せる蜃気楼だった。


ドンッと肩に衝撃が来てコーンが傾くそして重力に逆らうことなく


ソフトクリームは全て地面に落下した。


「あぁ・・・・・・・アイスが・・・・・・・・。」


灼熱のコンクリートの上に叩きつけられ徐々に液体となり流れていくソフトクリーム、


哀愁の瞳でそれを見つめ次にその原因に目を向ける、眸はただただ怒りに満ち溢れる。


「ちょっと!そこのパーカー男待ちなさい!」


私はクソ暑い中長袖パーカーを着る男の肩を掴む、男は胡乱げな目でこちらを見てくる。


紺色のパーカーに黒いズボン、顔色はいたって不健康そうだし目つきも最悪。


「あんた、人にぶつかっておいて謝りもしないの。このソフトクリームどうしてくれんのよ。」


「―――あぁ、すまん。」


「ちょっとそれだけ!?」


ポツリと一言そういっただけの男にさらに逆上する、するとさらにポツリと。


「うるさい女だな、それぐらいでガミガミするな。」


「なっ・・・・・。」


「これくらいでいちいち怒っていると男も出来ないぞ。」


一体何なのだこの男は、私もなかなか口が悪いがそれにしても度を越している。


「しょ、初対面の人間に向かって失礼ね!これでも付き合ったことあるんだから!」


負けず嫌いな性格であるがゆえこんな男の言葉にも負けじと応戦する。


「おおかた、外見が周りに比べて少し秀でたから交際したが

 性格に難ありですぐに破局してしまうのがオチなんだろうな。」


「うっ・・・。」


図星、それを見透かしたように当たりかと笑うパーカー男。


「うるさい!ふん!」


もうこの男なんかにかまっていれば入りの時間に遅れてしまう、


急がねばもう時間がないクルッと回れ右して目的地へと早歩きで向かう。


だがパーカー男は千夏の通った道を後からついてくる。


「なんでついてくるのよ、もしかして女優である私のストーカー?」


「なんだ君は女優なのか。よくある話だ、三流女優が自惚れていることって。」


「ムッキー!!」


ストーカーと冗談で言って脅かそうとしたつもりがさらに私の怒りを増長させる。


「まぁ私としてはそれくらい気の強い方が女優に向いていると思うがな。」


「えっ?」


「それに私の好みだ。」


「なっ何言ってんの、私はいつか大スターになるんだからあんたみたいな

 一般人とお付き合いなんてするわけないんだから。」


今まで誰も私を高評価してくる人物なんていなかった、それがどんな相手でも


たとえ人のソフトクリームぶちまけておいて謝りもしない奴でも正直嬉しかった。


それにタイプなんて言われたせいかやけにパーカー男がかっこよく見えてしまう。


「誰も君と交際したいなんて言ってないぞ。これだから自惚れているなんて言われるんだ。」


「あんたが言ったんでしょーが!」


そんなこんなで結局この男と喧嘩しながらスタジオに辿り着いた、


私が足を止めると奴も足を止めた、どうやら目的地が一緒だったらしい。


じゃあこいつもエキストラか、するとパーカー男はその扉の向こうへと消えていく。


慌てて私も入るとプロデューサーが5分遅刻の端役女優を睨みつけてくる。


「すいません!!このパーカー男のせいで遅れてしまいました。」


少しでも腹いせにと男を指さしながら謝る、するとプロデューサーは血相を変えて叱り飛ばしてきた。


「きっ君、このお方を存してのその態度かっ!」


「へ?」


プロデューサーはパーカー男を見て何故か慌てふためいている、


何が何だかさっぱり私には理解できない。


「あぁ、そうだね。君には私の名前を教えてなかった。私はこういう者だ。」


パーカーのポケットから手渡された名刺には彼の名と社長という文字が印刷されてあった。


「しゃっ、しゃちょーーーーー!?」


だって私の想像する社長は高級なスーツ着て髪の毛もワックスとかで


ガッチガチに固めているオジサンだったので目の前のパーカー男が


社長といわれても全く信じられない、しかも名刺に書かれている


事務所名は有名すぎるほど有名であった。


「パーカー男・・、貴方って芸能事務所の社長だったの・・・。」


「その名称はやめてくれないか、私の名前はほら書いてあるだろう。

 それにぜひ君とは一度きちっと話をしたいな。」


紺色のパーカーを指差し次に自分がさきほど千夏に渡した名刺を指さす。


長瀬(ながせ)浅海(あさみ)・・・これこそ芸名みたいよね。

 んで、その社長さんが私みたいな三流女優に何の用よ。」


私はプライドをぎったんぎったんにされてもう自ら三流と名乗ってしまう自虐ぶり、


それもこれもこの浅海が散々私を罵って女優としての誇りをぶっ壊したからだ。


「君、名前は。」


「宍戸千夏。」


「宍戸千夏、今の事務所からぜひ我が事務所へ移籍しないか。」


「・・・はぁ?」


「だから君のことを気に入ったんだ、もしうちに来れば君の女優人生開花を約束しよう。」


自身に満ち溢れた目で私の前に手を差し出す浅海。


夢のような出来事、シンデレラストーリーそして王子様が迎えに来た。


今日の夢はきっと予知夢なのだろう、私は目の前にいる王子様の手を取る。


いつか仕事も浅海(コイツ)も手に入れてやる、千夏はそう密かに決意しニヤリと笑う。


「いいわ、私が連れてってあげる。輝かしい舞台へ。」

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