☆8.悪夢
「高梨!」
と先輩があたしを呼ぶ声がかすかに聞こえた。
そして、幸子のニヤッと笑った顔が見えた気がする。
あれ…。ここどこ?
何もない。真っ暗。
あ…。あそこにいるのは…。先輩…?
「先輩!先輩!」
先輩は振り向いてくれた。
「先輩…。ここどこですか?」
すると先輩は
「俺、山根と付き合う」
え。うそ幸子とー。
「やだ。やだよ。先輩」
「高梨?!」
ハッと目が覚める。
「深奈ちゃ…ん。さっきは私が悪かったぁ。ごめんなさい」
と、幸子があやまる。なに言ってんの。こいつ。どうせ演技なんだろ。と心で呟く。
「ゴメン。さっきは。俺、何も知らないのに。あんなこと…」
先輩はあやまってくれた。
あたしは
「いいえ」
と返事をする。
「あ…の。先輩、私、女子バスケットボール部に入りたいんですけど。今日は行く気になれなくて…」
と幸子は先輩に話しかける。
「あー。じゃあ、部長に言っとく」
先輩は、優しい。
あたしは優しい先輩に惚れた。
だけど、先輩。
先輩は皆に優しいんだね。
二人は楽しそうに話してる。
あたしだけ、仲間外れ。
もうヤダ。
「あ…。ありがとうございました。先輩。幸子も。なんともないので帰ります」
二人きりになるのは嫌だ。
でも、ずっとあそこにいるのは辛い。
だいたい、さっきの夢はなんだったの?
これからはこうなる。という神様のお告げ?それとも、幸子が魔法を…?
そういえば、あった気がする。
『人に悪夢を見させる呪文』
というのが。