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サルカムのログ 【GUDA】

 サルカムの地表には草原に密林、蕗に似た植物が茂った沼地など様々な緑の大地が存在していた。その地下には脈々と地下水脈が駆け巡っており、地表には大小さまざまな湖や池が存在していた。気候は短い一年を通してもあまり変らず、不定期に長い梅雨が訪れた。

 リュオンの末の息子シュアンは人々と共にこの緑の大地に降り立った。シュアンはこの星を一通り見回った後、蕗の沼地に囲まれたこの星で最も巨大な大木の中に住み着いた。 
 何の告げもなしに放置された人々はシュアンの住み着いた大木を訪れ、彼にこの後の自分たちのあり方を尋ねた。しかしシュアンは人々をきつく突き放し、自分たちの力で文化を紡ぐようにと言った。
 人々は神の元から離れ、苦労をしながらも自分たちの力のみを頼りに未開の地で生活を始めた。その後、人々とシュアンとの関わりは1000年近く絶たれることとなる。

 人々がサルカムに辿り着いてから1000年が経ったとき、シュアンはキルフォという少年に出会う。この出会いから、キルフォは人間で最初の想術士(魔法使い)となった。キルフォは教えてもらった技能を使い、集落の人々の手助けをした。
 さらにキルフォの活躍によって、人々はこの星に珍しく存在する山、グルダ山脈に住む“デイル”という異形の者たちとの親睦を深めることに成功した。互いの種族は良好な関係を築き、長い平和の世が続いた。
 キルフォの活躍により、人間とデイルにとって想術という技能はごく当たり前のものとなった。人々は想術を日常の生活に大いに利用し、それは文明の色にも多きな影響を与えることとなった。

 長きに渡って平和が続いたが、世界は止まった風車を嫌い、強引に回転させようとして風を作り出した。それはサルカムの地を揺るがし、変化をもたらすためにこの世に投じられたのか。人の子として生まれたそれは、サルカムの地を滅亡と絶望の窮地に追い込んだ。 
 永住する者たちは共に力を合わせ、星を揺るがす者に挑みかかった。しかし、その戦いは悲惨なものとなる。揺るがす者は死体の山を築き、永住する者たちはしだいにその戦意を失っていった。
 星の悪夢が広がる最中、人々はその息を吹き返す。神の子を名乗る英雄の出現によって戦況が一変したのだ。敗北した揺るがす者は、星の真実に助けを求めて角に下り、神の制裁を受けることとなる。
 永住する者たちは混乱に勝利し、サルカムの地に平和を取り戻した。人々は英雄を指導者に押したが、英雄は異性を求めてはならない身であったために王の座を蹴り、いつの間にかその姿を消してしまった。

 平和とは放られたガラスのコップに似た儚さである。悲しみを代価としてせっかく取り戻した平和も、永久に続くことはなかった。再びの戦乱が訪れ、サルカムの大気は殺伐とした色相を帯びた。
 星の角といわれるグルダ山脈を基点として、サルカムの地は四つの国に区切られた。そして国という名の勝手な境目を尊重し、同じ重さの存在である者を忌み嫌い、互いに命を奪い合った。血で血を洗い、骨で骨を砕き、命がむやみに奪われる惨劇が数十年に渡って続いた。永住する者達から噴出す血液によって、緑のサルカムは赤く染められようとしていた。
 だが、サルカムの守護者は人々が持つ本能の陰の部分をまったくの野放しにすることはなかった。混乱の世にはそれを正す存在が現れ、その責務を全うすべく混乱に立ち向かう。その勇ましい者を人々は英雄と呼ぶ。
 再び世界は英雄の手によってその窮地を脱することとなった。英雄はその身と引き換えにして、世界の巨大な歪みを矯正した。英雄の輝かしい存在感によって永住する者達の心は一つとなり、新たな平和を築くことを誓い合った。
 新たに造られた平和の世界はその後、幾度となく破壊の存在によって脅かされたが、その度に自分達の手でその貴重な目に見えない財産を必死になって守った。また、どうにもならない事態が起きたときは神が手を差し伸べた。

 永住する者達はかつての悲惨な時代を忘れまいと、次の世代に丁寧に語り継いだ。泉の水が大地に染み込むように、その歴史の大切な記録は後の世に伝わっていった。
 神の大いなる救いもあり、記録は少しずつその姿を変えながらも脈々と受け継がれ、節度をわきまえた平和は守られ続けることとなる。


 人々と、人と時代を共にする者達は歴史の確かな現実味を幼い頃から心に刻み、過去を篤く尊重する社会を築いたのであった。






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