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協調、そして友情へ

 両国首脳会談。A国大統領は、J国の首相に向かって深々と頭を下げました。その背中は、重責と後悔の念に押しつぶされそうに丸まっていました。


「こんな酷いことを……本当に、申し訳ありませんでした。私の身勝手で、多くの人々を苦しめてしまい……それでも、もし許されるのであれば、もう一度、貴国のパンを我が国に売っていただけないでしょうか……」


 絞り出すような大統領の言葉を会場の全員が息を飲んで聞き入りました。かつての強国の指導者としての威厳は消え失せ、 そこにはただ、自身の過ちを認め、助けを求める一人の人間がいました。


 J国の首相は、 太陽の光のような朗らかな微笑みを浮かべました。


「身勝手ですって? それは違いますよ、大統領」


 首相の声は、会場全体に温かく響き渡りました。


「自国の国民を守ろうとするのは、指導者にとって最も尊い職務の一つです。貴方は、 あなたの国民の最善の利益のために 行動した。 ただ、 今回、計算が少しばかりうまくいかなかった、それだけのことです」


 首相は、 落ち着いた様子で続けました。

「 私たちの持つ質素なパンは、 あなたたち伝統ある国の味には遠く及ばないかもしれません。 しかし、 もしあなたがそれを望むのであれば、私たちは喜んでお送りしますよ、友情と協力の証として。今回の経験を糧に、私たちは互いを尊重し、共に発展していくことができると信じています」


「すまない……本当に……」


 肩を震わし、うつむく大統領の肩に首相はゆっくりと手を伸ばしました。深い同情と寛大な許しの思いを誰もが感じました。


 その瞬間、四方から割れんばかりの拍手が湧き起こりました。 A国の代表団は安堵の表情で、J国の代表団は温かい眼差しで拍手を送りました。会場の隅にいた記者たちは、歴史的な瞬間を記録しようとペンを走らせながらも、感動の面持ちで拍手を送っていました。


 なり終わらない拍手。単なる儀礼的な行動ではない、 自らをさらけ出し、許しを請うた大統領への敬意と、迷うことなく受け止めた、寛容な首相への尊敬が込められた、その場全員の心の底からの拍手でした。 その様子は、中継を通して、すべての国の国民の心に深い感動と希望を与えました。


 肩にかかる首相の温かい手を、顔を上げた大統領は力強く握り返しました。 二人の間には、言葉は必要ありませんでした。信頼と希望。そして、確固たる友情が溢れ出ていました。


おしまい

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