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関税

 A国の大統領はJ国のパンに浮かれる国民にいらだっていました。

「あんな忌々しい小国が我が伝統的なA国のパンを凌駕するとは」


 こうなればあの手しかない。

「いまらからJ国からの輸入品すべてに関税をかける、そうだな、10%だ! 特にパンは……25%だ!!」


 執務室にあつまる部下がざわざわとさわぎました。


「だ……大統領。それは、あまりにも……」


「うるさい!! 俺にさからなうな。お前は首だ!!」


 青ざめる職員たちを無視して、大統領はほくそ笑みました。


(みてろよ J国。我が国の方が優れていることを思い出させてやる!)


 A国大統領は、J国に輸入品に対する関税を引き上げることを発表しました。

 A国の人々は、J国のパンがさらに高くなることを知り、落胆しました。


 執務室の重厚なドアの向こう、A国の大統領は一人、報告書に目を通して静かに笑っていました。跳ねあがった徴収税額。関税を引き上げてから数週間。当初は国内の消費者から不満の声も上がったが、数字は嘘をつかない。税収は目に見えて増加していたのだ。


 大統領は、ふっ、と鼻で笑いました。


「愚かなJ国よ。美味しいパンを作ったつもりだろうが、結局は我が国の懐を潤すことになるのだからな」


 窓の外の晴天の空を見上げながら、彼は一人ごちました。あの小さな国が、自国の誇るパンの地位を脅かすなど、あってはならないこと。関税は、一時的にA国民の負担を増やすかもしれないが、長期的には国内産業を守り、国の力を再び誇示するための必要な措置なのだ。彼はそう信じていました。


 そのころ、A国の街の人々は……


主婦(買い物を終えて、少し憂鬱そうに)


「あら、またJ国のパンが値上がりしてるわ。本当に美味しくて、子供たちも大好きだったのに…この値段じゃ、毎日は買えないわね。A国にも美味しいパンはあるけれど、やっぱり少し違うのよね。外食も最近高くなったし…しばらくは家で質素な食事にするしかないかしら。節約、節約…」


すし職人(やや疲れた表情で)


「あーあ、また値上がりか。J国の魚は新鮮で美味いんだがなあ。関税のせいで、仕入れ値が跳ね上がっちまった。このままじゃ、うちみたいな小さな店はやっていけないぞ。客足も少し鈍ってきた気がするし…人を減らすしかないかな。腕の良い職人を手放すのは辛いが、仕方ない…」


男性(壊れた傘を手に、新しい傘を眺めながら)


「チクショウ、また壊れやがった。この前の傘もすぐにダメになったんだよな。ホントはメイドインJの傘が丈夫で長持ちするから買いたいんだけど…今回の関税で、信じられないくらい高くなっちゃったからなあ。仕方ない、こっちのA国製のにするか。ちょっと重たいし、すぐ壊れるけど…背に腹は代えられん。ああ、本当に不便になったもんだ…」


 不穏な空気が渦巻く世界……いったいA国は、そしてJ国はどうなるのでしょうか……?

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