表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

J国の逆襲

 しかし、J国の人々は諦めませんでした。いつかA国の人々も美味しいと思ってくれるようなパンを作ろうと、昼夜問わず研究を重ねました。


 そしてついに、J国のパン職人たちは、長年の努力の末、それまでの常識を覆す、革新的な製法を開発することに成功したのです。


 そのパンは、ふわふわで美味しく、香りも豊かで、一度食べたら忘れられない、まさに「夢のパン」でした。


 J国内では、パンが飛ぶように売れました。


「なんておいしいんだ……これならあのバカ高いA国のパンを買わなくてもすむぞ……」


 J国から次第にA国のパンがなくなりました。


「おかしいな……このところ、金が全然入ってこないぞ?」


 A国の大統領は、日に日に減る収入報告に眉をひそめ、怒りの表情で商人を呼び出しました。真っ青な顔をして縮こまる商人。


「ど、どうやらJ国で画期的なパンができたようでして……」


「なんだと! そんなわけがあるか!」

 

 大統領は商人から差し出されたパンを奪い取り、かぶりつきました。


(こんな、ぱさぱさのパンがうまいわけ……なんと!?)


 大統領は手に持つパンを信じられないと見つめました。


 淡い黄金色に輝く、まるで生まれたての赤ん坊のような、優しい丸み。鼻をくすぐる甘美な香り。舌の上で優しくほどけて焼きたての小麦の香ばしさと、ほんのりとした甘さの絶妙なハーモニー。懐かしい故郷の風景を呼び起こすような、温かく、そしてどこか幸福感に満ちた味でした。


(うまい、まさかこれ程のパンをあのJ国が作り出すとは……)


 唇を噛み締めて肩を震わせる大統領を、周りの職員は震えながら見守りました。


 J国のパンの噂はまたたくまにA国に広まりました。A国の人々は、こぞってJ国のパンを求めるようになりました。


「J国のパンは、本当に美味しいらしいぞ!」

「A国のパンよりも、ずっと美味しいという噂だ!」

「高くても良いから、一度食べてみたい!」


 A国の人々は、J国のパンを求めて、店にに押し寄せました。


「2ドルかかってもいい。パンをくれ!!」


 A国の人々が声を張りあげて商人に頼みました。


 商人の話に、うれしくなったJ国は意気揚々とパンを作り売りました。


 段々とA国のでは自国のパンは売れなくなりました。高くてもよいJ国のパンを買う。そんな風潮にA国の大統領は焦りました。


「このままではやばい。我が国のパン屋がつぶれてしまう!」


 A国の人々はますますJ国のパンを求めました。

 J国のパンの価値はどんどん上がります。


「4ドルでもいい、パンをくれ!」

「おれは6ドルでもいいぞ!!」


 どんどんパンの価値は上昇し、いまや、パン1枚が何と、10ドルになりました。

 J国では1円で買えるパンが、A国では10ドルも必要になるのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ