歪んだ貿易
むかしむかし、A国とJ国という二つの国がありました。A国は資源も豊かで、軍事力も強く、誰もが認める強国でした。一方、J国は資源に乏しく、国力もA国には遠く及びません。
A国はかねてよりJ国との交易を望んでいました。そして、ある日、A国はJ国に対し、一方的な条件を突きつけました。
「これからは、1ドルを2円として取引する。A国のパンは1ドル、J国のパンは1円とする。国力が劣るお前たちは、この条件を受け入れるしかないのだ!」
J国は、A国の圧倒的な力に逆らうことができず、不平等な条件を受け入れざるを得ませんでした。
こうして、A国とJ国の間で、歪んだ交易が始まったのです。
A国のパンは1ドル、J国のパンは1円。一見すると、どちらの村人も同じようにパンを買えるように見えます。しかし、J国の人がA国のパンを買うには、2円を支払わなければなりません。一方、A国の人がJ国のパンを買うには、0.5ドルを支払えば良いのです。
しかし、それも仕方がありません。豊かかなA国が作るふわふわのパンは、貧しいJ国がつくるぱさぱさのパンとは雲泥の差です。
J国の人々は、A国のパンを欲しがりました。
「A国のパンは、なんて美味しいんだ。一度で良いから、お腹いっぱい食べてみたいなぁ」
しかし、A国のパンは高すぎまます。J国のパンの2倍もします。J国の貧しい人々にとって、A国のパンは、手の届かない憧れの品だったのです。
それでも、J国の人々は少しずつお金を貯めて、A国のパンを買いました。商人はA国のパンをJ国に運び、2円で売りました。本来は1円でしか売れないパンを2円で売ることで、商人は手数料を得て、残りをA国に渡しました。
(我ながらぼろい商売をかんがえてもんだ……)
A国は、つみあがった紙幣を見てほくそ笑みました。
一方、A国では、J国のパンは全く人気がありませんでした。固くてパサパサしていて美味しくない、A国の評価は散々です。
そのため、A国の人がJ国のパンを買うことはほとんどなく、A国のパンはJ国に高く売ることができたので、A国はどんどん潤っていきました。