混戦
ラーサニアはファニルカに任せて他の皆は夕食をとり、明日の開門に備えていた。
「明日は、ナフラック、ルスナ、ウォルバーグの三人で乗り込む。ゼルトはメディーサの面倒を見てやってくれ。ルスナも一応切り札として銃を持っていて欲しい」
その言葉に四人は了承した。ゼルトはルスナに銃を渡す。
「アリスタ様がそうおっしゃられるなら仕方ありません。三発か、とっておきだな」
弾数を数えたルスナは腰に付けたホルスターにそれを嵌める。
ランザは手に入れた情報をもとに、作戦を考えていた。
「王宮は五階層からなっています。おそらく最上階にあると見て良いでしょう。隠すようなものでもないですから」
「あとハイドニア派は何名ぐらいいるのでしょう?」
「さあ、それについては未知数です。明日朝は、この宿屋から一番近い東口から突入しましょう」
王宮への門は東西南北に四ヶ所あった。王宮の庭園は意外と広い。そこでハイドニア派とぶつかることになるだろうとアリスタ達は予測していた。
その夜、アリスタはなかなか寝付けなかった。
貴族主導のハイドニア派が実権を握れば、また内部崩壊しかねない。なんとしてもローデンバル派が手にしないと。そしてフラム撲滅を……。
漸く眠りに入り、朝の五時、ランザに起こされた。
「食事をとって東門に向かいましょう」
午前六時、二人の門兵によって重厚な門が開かれた。広い庭園だった。遮るものは何もない。アリスタ達は歩を進めていた。
すると南門からメフィルドとアウデイウス率いる私兵数名、北門から武士のような、いで立ちのミロク族とファーメッツ・アルディバが入ってきたのを確認した。
「乱戦ですね。ウィド・ベルニクスの姿が見当たりません。西門から入ってきたかもしれないです」
ランザが呟く。
西門は丁度、塔が邪魔していて見えない。
他の軍勢を確認したメフィルドが背中から翼を出し空に駆けた。
「飛べる奴がいる! ランザ殿は早く塔の中へ!」
「分かりました!」
メフィルドは五階建ての塔の屋上に直接向かっていた。五階に到達して周囲を旋回する。
「くそっ! 入れる場所が無い!」
一階から入ることを余儀なくされたメフィルドは地上に向かった。そこではすでにアリスタとアウデイウスの部隊が乱戦を巻き起こしている状態だった。
ナフラックとウォルバーグ、ルスナ、そしてアリスタが三十名もの部隊と戦っている。
アバスタスは黒い霧を放ち、アウデイウスの部隊を操ろうとするも、彼らはマスクを着けていた。
「もう手の内がバレているわ!」
だがアバスタスは黒い霧を流し続け、銃を持った部隊の視覚を奪う。
西門からはウィドが入って来て、ミロク族と戦闘を始めた。
「引くな! 押し切れ!!」
白いドレスを身にまとったウィドのウィンザースターから発せられる強烈なレーザーによって、十三傑は二人が負傷する。だが彼らの猛攻は止まらなかった。
ウィドはずっと自分の右掌を見ている。ウィドの掌に映る映像がミロク族を捕捉する。
それを観察していた十三傑の長カムナは指示を飛ばす。
「右手を狙え!」
「なぜミロク族がここに!」
ウィドも屈強な部隊に焦りの色を隠せない。
レーザーが飛び交う中、ミロク族は捨て身の攻撃を仕掛ける。次々とレーザーの餌食になっていく。
急降下してきたメフィルドはウォルバーグの背後に降り立った。そして彼を背後から抱きしめる。
「何をするっ!!」
そのままウォルバーグは空高く持ち上げられる。背後に回られた為、手も足も出ない。
「くそっ! 降ろせっ!!」
「では、望みのままに」
五十メートルほど上げられた時に、メフィルドは手を離した。
ウォルバーグは悲鳴を残し地面に叩きつけられた。
叩きつけられたウォルバーグはピクリとも動かない。
「ウォルバーグ!!」
それを見ていたアリスタは歯を食いしばる。
ウォルバーグの奥さんに何て言えばいいんだ……。
その頃、アウデイウスの剣クランタムがアバスタスを貫いていた。




