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転生の果てに  作者: 北丘淳士
アリスタ・ヴェルデルト
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胎動

 アバスタスの手配により、その夜、三人に馬車が用意された。

 窓越しにナフラックはファニルカの手を取る。

「ファニルカ、気をつけて」

「大丈夫、アリスタ様からも危険だったら逃げて良いと言われているから。ではアリスタ様、行って参ります」

 ファニルカは車窓を開け、視界から消えるまで手を振り続けた。

 見送るアリスタは、この二人はともかく、皆を死なせてはならないと心に誓った。

 馬車内――。

 まだ乾いていない前髪を弄りながらゼルトは言う。

「王都にはいったことがあるか?」

「俺は一回だけだ。結婚式に使う道具を調達するために」

「私は無いわ。アリスタ様の屋敷で地図を見せてもらったけど、広いのかしら」

「ああ、広い。手分けして情報を集める事になるだろう。王都まで馬車を休ませずに行くと、ここから一日だ。今のうちに睡眠をとっておこう」

 先が見通せない夜の街道をゆっくりと馬車は進んでいった。


「ランザ殿、私たちが王都に入るのはいつ頃が良いでしょう?」

「アリスタ殿が送った斥候の情報次第ですけど、早めに入って大丈夫だと思います。ただ馬車で入ると貴族とバレてしまいます。向こうの手の内が分かりません。馬車で近くまで行って、旅人を装って侵入するのが最善策でしょう。先にフラムを所持しているハイドニア派をある程度潰しておく必要もありますので、三日前ぐらいを見ておきましょう」

 話し合いを終え、夜も更けた今は就寝の時間に入りつつあった。

「では、私は少し訓練をして寝たいと思います」

「私と相手しませんか!?」

 アバスタスが身を乗り出してアリスタに問う。

「い、いえ、一人で」

「そうですか……」アバスタスは消沈する。「的が必要でしたら、いつでも声をかけて下さい」

 単に攻撃を食らいたいだけではないかとアリスタは思った。


 翌朝には密偵として送り込まれた三人は王都に着いた。前もってランザから言われていたように王都手前で馬車を降り、途中大河を舟で渡って徒歩で王都の検問を通過する。

「とりあえず宿を確保して、そこを拠点に動きましょう」

 ルスナとゼルトは頷き、王都の地図を見る。王宮を中心に街が発展している。

 ゼルトは口元を隠しながら言う。

「俺は護身用のため、銃を手に入れるよ。ファルニカは要らないかい?」

 ファルニカは少し考えて頷く。「私も持っておきたい」

「俺は足があるから大丈夫だ。武器に頼ると、咄嗟の判断に迷う」

「じゃあ二丁だな。宿が見つかったら、あそこの広場にある王像の前にいてくれ。仕入れ先を知っているから多分すぐに手に入る」

 そのまま自然とゼルトは仲間から離れた。

「宿は二部屋とった方が良いかい?」

「いいえ、一部屋で大丈夫。信じているわ」

「はは、俺には婚約者がいる。彼女を裏切りたくはないよ」

「未来の奥さんの為に、いい結果になると良いわね」

「ああ」

 三人は早速、宿と銃の調達、情報の収集に動き出した。


 ファーメッツ・アルディバはミロク族の元で剣の稽古に励んでいた。ミロク族はベル王国と隣国の帝国との間にある辺境の地に住まう民族だが、両国ともこの地域を攻め落とす事が出来ないでいた。ミロク族の長、カムナの元に、宝刀争奪戦の話が舞い込んできた。

「ムエイが王位継承権の道具に使われるのか……」

 カムナは訓練を続けるファーメッツとその配下たちを見ながら沈思する。

 ムエイ。ベル国王との対立に疲れた先々代の長が、献上品として差し出した名刀である。カムナと先代の長は、その刀を取り返したいと、かねてより考えていた。その折に、この知らせである。カムナは今が実行の時と腰を上げた。

「皆、よく聞いてくれ」配下たちは動きを止め、カムナを見る。「今こそムエイを取り戻す機会が訪れた。我々もこの争奪戦に参戦する! 精鋭である十三傑がこの戦いに臨むこととする!」

 その言葉に、ファーメッツは反駁した。

「私の稽古はどうなるのですか!?」

「お主はまだ、ここに来て日が浅い。そのまま稽古を続けるがいい」

「でも十三傑にお相手してもらわないと、私の稽古になりません!」

「ならば我々に随行すると良い。ムエイ奪還が我々の最優先事項だ」

 ファーメッツは刀の柄を強く握った。

 強くなるためにここに来たのに、私の修行にならないではないか……。

 夕日に伸ばされた自分の影が鬱陶しく惨めに感じ顔を上げた。

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