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 時計を見ると午前六時前。格子状の窓からは眩しい太陽光が細い線となって部屋に降り注いでいる。全身に怪我を負ってなければ、すがすがしい朝なんだけどな。


「トワさん! これを!」


 ヒカリが治療薬や包帯を手に持って部屋に入ってくる。いくら異能人だと言えども、僕の身体はまだ全身が痛み、特に左足はジンジンと鈍い痛みが続いていた。


「これで応急処置をするので、少しだけ耐えてください」


 ヒカリの声が耳元で響く。


「すぐに良くなりますから、頑張ってくださいね、トワさん」


 彼女の声は優しく、それだけで少し安心する。痛みが和らぐわけではないが、心が温かくなるのを感じた。

 ヒカリはまず一番傷が深い肩に目を落とした。


「それにしても、どう攻撃を受けたらこんな傷ができるんですか?」

「……奴は自分の剣に細い振動する糸をまとわせてた。そいつがチェーンソーのようになっていたんだ」


 思い返せばもう二度と喰らいたくない攻撃だ。でも、あの攻撃を受けてからすでに一時間以上が経過している。傷口もある程度は自己治癒されている。

 まったく、異能人でよかった。

 しばらく治療が続き、傷口がある程度塞がれると、ヒカリが顔を上げた。


「一応これで大丈夫です。けど、無理は絶対しないでください。今は休むのが一番です」


 僕は微かに頷くだけで精一杯だった。身体を預けたまま、ようやくベッドに横たわることができた。


「ありがとう。でも、動けるようにはしないとな……」


 そう言いながら体を起こす。全身にまだ痛みはあるものの、意識がしっかりしてきたのを感じる。ヒカリが手を貸してくれて、僕はなんとか座ることができた。その時、ミライが部屋に入ってきた。


「朝ごはんができています。食べますか?」


 朝ごはんか。結局シエールさんからもらったおにぎりは口にしていないな。と考えると、急にお腹がすいてきた。


「そうだな。そんな時間か」

「トワ大丈夫? 肩貸すよ?」


 コルルが立ち上がってベッドの脇まで来る。


「いや、大丈夫だよ。二人とも先行っててくれ。自分で行くよ」

「本当にいいの? じゃあマツリたちは食卓の準備手伝ってくるね?」

「あぁ、僕の席は入り口に近いところにしといてくれ」

「りょーかい!」

「じゃあ広間まで案内しますね」


 ミライに連れられてコルルとマツリが部屋を出て行った。


「自分で歩けるんですか?」

「なんとかいけそうだ」


 僕は頷いて立ち上がろうとするが、左足に力が入らず、またベッドに崩れ落ちる。

 しまったな。左足は思っているよりも重症みたいだ。


「無理しないでください!」


 ヒカリが慌てて支えながら言う。その手の温かさに、少しだけ力を借りることを許した。


「ありがとう。申し訳ないけど、少し手伝ってくれ」

「このまま広間まで行きますよ」


 ヒカリの肩を借りて、僕はゆっくりと部屋を出る。

 朝ごはんの席に着くと、コルルとマツリはもうすでに座っていた。


「ヴォルニーは?」

「村の人たちとこれからのことについて話してるみたい。解放された奴隷たちの暮らすところとかのね」

「そういやマツリたちはどうやってここまで来たんだ?」

「ん? マツリたちもミライちゃんに運んでもらったよ。そのあとで、ヒカリちゃんとミライちゃんだけ戻って、トワの戦闘が終わるまで待ってたんだって。それよりも本当にアンタは無茶しすぎ。こんなボロボロになってまで、なんで戦ってるのよ」

「そうだよ、コルたちだっていたらもっと楽になってたかもしれないのに」


 苦笑いしながら二人の声を受け入れる。

 朝ごはんは簡素なものだったが、皆が僕の回復を喜びながら食卓を囲んでいると、突然ヴォルニーがタブレット端末を持って慌てて駆け込んできた。


「おい、みんな、これを見てくれ!」


 ヴォルニーが真剣な表情で画面を見せる。朝のニュースのようだ。

 その中には、僕たち四人の顔写真が大々的に表示されていた。


「これ……」


 コルルが息を呑む。僕たちの名前とともに、『プロダクトグラウンドUSAを襲撃した特別指名手配犯』と赤い文字が踊っている。


「冗談でしょ……」


 マツリが呆然と呟く。僕も言葉を失った。これでは、どこに行っても僕たちは追われる立場になる。


「特別指名手配?」


 特別指名手配とは、スペースイニシアティブが国をあげて捜査するから、逃走者(フュージティブ)よりも特別視されるものだ。


「……スカイシティの存続に関して脅威となりうる集団、もしくは個人をスカイシティ特別警察隊を組織して捜査にあたる。今回の襲撃における被疑者は以下の通りであり、以後スカイシティ常任理事会及び特別警察隊は被疑者を特別指名手配としたうえで、過去に類を見ない凶悪な犯罪者として捜査を開始する。……なによ、これ」


 ニュースの前文をマツリが読み上げる。


「プロダクトグラウンドは政府の超重要機関だ。そんなところを機能停止にしたんだから、かなりの罪に問われるだろうな」

「冷静に分析してる場合じゃないよ、ヴォルニー。これからどうするの?」

「ちょっと待って! これ、マツリたちに懸賞金がッ!」


 マツリがタブレットを机の上に置く。そこには確かに僕たちの写真の下に千五百万ドルという表記があった。


「これ、四人で?」

「いや、一人っぽい。つまり、僕たち四人で六千万ドルだ」

「すぐに追っ手が来る可能性がある。今からこの村を出よう」


 ヴォルニーの言葉に、全員が真剣な表情になる。村を守るためには、ここを離れるしかない。


「でも……ここを去るなんて、村の人たちが反対するんじゃない?」

「とにかくここにとどまるのは危険だ。俺の口から村長に言ってみるよ。問題はエイトやヒカリにどう説明するかだな……」


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