表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/50

『浮かずもの人に非ず』

 また攻撃を仕掛けてきた。肩が痛むがどうせ数十分の痛みだ。無理したってどうってことはないだろう。

 マーシャルの糸がまた動く。僕を取り囲むように、壁のように立ち塞がり、まるで逃げ場を完全に塞ぐかのようだ。


「糸の檻……か」


 僕は刀を構え直しながら、慎重にマーシャルの動きを見極める。だが、糸はどんどん複雑に動き、僕の視界を惑わせてくる。その中で、マーシャルの声が響いた。


「どうだ、これが私の異能の本領だ。糸はただ操るだけではない。形を変え、用途を変え、無限の戦略を生み出す。貴様のような小僧が、この私に敵うはずがない!」


 奴の言葉には、確かに自信と誇りがあった。でも、僕には負けられない理由がある。僕は刀を軽く一振りして答えた。


「無限の戦略? でも、その割にやることは単調じゃないか。囲んで、縛って、斬る。それだけだろ?」

「貴様……!」


 マーシャルの声がわずかに苛立ちを帯びる。いいぞ、わざと奴のペースを乱すんだ。言葉で揺さぶりをかけながら、攻撃の隙を探す。

 次の瞬間、マーシャルの糸が僕に向かって鋭く突き出される。槍のように鋭く編まれたそれは、空気を裂く音を立てて僕の身体を狙う。


「くっ……!」


 僕はその場で身を低くし、刃先をかわすと同時に反撃に転じた。刀を横一文字に振り抜き、迫ってきた糸を焼き切る。


「貴様ぁ!」


 マーシャルが叫び、地面からまた新たな糸が湧き上がる。まるで生き物のようにうねりながら僕の足元を狙ってくる。それを見て、僕はわざと後退しながら、マーシャルの次の動きを観察した。

 この糸、確かに強力だが、無敵ではない。奴がどんなに器用に操っても、一度に全方向を完全に制圧することはできないはずだ。今のように糸を再生成する瞬間──その一瞬だけ、奴の集中が散る。


「お前の異能……確かに手強い。でも、万能じゃない! 《炎流斬撃(フレアロッド)》」


 そう叫びながら、僕は刀に再び炎をまとわせた。燃え上がる炎が周囲の糸を焼き払い、瞬間的に僕の周りの空間を作り出す。その隙を突いて、マーシャルに向かって突撃した。


「その炎が厄介だと言っただろうが!」


 マーシャルは再び糸を剣状に変えて迎撃してくる。激しい衝突音が響き、奴の剣圧が僕の腕に重くのしかかる。それでも僕は一歩も引かず、逆に力を込めて押し返す。


「実に惜しいな。貴様が地上人でなければ、このプロダクトグラウンド、いやスカイシティ軍事部でも活躍できたろうに」

「何を言っている?」

「理解できないか。所詮は地上人に過ぎない。貴様、こんな言葉を知っているか? 『浮かず者人にあらず』」


 聞いたことがある。この世界はそもそも、スカイシティをすべての基準にして物事が考えられている。つまりスカイシティの市民だけが人間だとすれば、スカイシティに住んでいない人は人間ではないと判断される。


「……地上人は人間じゃないってことか」

「そうだ。貴様は地上人であるという時点で、我々人間とは違う下等な蔑まれた存在だ。つまり、もし貴様が人間であったならば、私にも引けを取らない軍()になっているくらいの実力を持っていただろうということだ!」


 マーシャルはまた糸を生み出し、下から僕を狙ってきた。

 ここにきてまだこんなに糸を出せるとは。刀が耐えられないだろうから、もう炎流斬撃(フレアロッド)を使うことはできない。

 ここからは自力で糸を斬らなきゃいけないってことか。

 いったんジャンプして糸を交わし、空中で伸びてきた糸を片っ端から切断していく。


「無駄だ。もう止したほうがいい。貴様が足掻いたとてこの世界は変わらない。地上に産まれた己の運命を恨むんだなッ!」

「ふざけるな! お前たちのやっていること、全部間違ってるんだ!」

「間違いだと? 笑わせるな! 我々プロダクトグラウンドの理念は、人間を効率的に管理し、支配することだ。それこそが世界の理だ!」

「理だって? 奴隷たちを家畜のように扱うのが理だっていうのか!」

「そうだ! 弱者は強者に従う。地上の人間は全てスカイシティに従う。それがこの世の真理だ。貴様も、それを理解するべきだったな!」


 奴の剣が一段と激しく僕を押し込んでくる。だが、僕はその言葉にますます怒りが燃え上がった。


「そんな理屈……僕は絶対に認めない!」


 僕は全身に力を込め、マーシャルの剣を押し返す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ